第32話 《存在進化》Ⅱ




 うん。さっきから眠くて仕方ないのよ。


 限☆界☆。


 相棒も同じはずで、睡魔に抗うためにハイテンションになっている。


 ケタケタと笑いながら空を跳び回り蜘蛛の巣を張って行く姿は、正直怖い。


 レベルアップの速度が速すぎだが、正直そんな気はしていた。


 ぶっちゃけ、俺の目算は甘すぎたのだ。


 向かい合ってから強がって、行くぜ! とか言ってみたけど、完全に強がりでしかなかった。


 生命を失って倒れているムカデを見やる。


 ……強すぎだよ。お前。


 一昨日から、差を縮めたつもりが逆に広げられていた。


 最初にしまったと思ったのは、姿を見た時。


 いくらなんでもデカくなり過ぎだし、蛇みたいな動き方してるし。ひょっとして強過ぎる? と一目見て思った。


 ……お前の身体、あんな風に動くようにできてないだろうよ。


 そして忘れていたが《存在進化》は俺たちのものだけじゃなかったことを、わかっているつもりでわかっていなかった。


 その質量ともに最悪な情報を目の当たりにしても、復讐期限は迫っていた。


 あと数時間猶予あったら逃げてたわ。


《邪眼》を持っていたことにも驚いたが、失敗を確信したのは《噛み千切る》を使った時。あやっぱアカンかもと思った。


 相手に接触して、初めてわかることがある。圧倒的なレベルと種族の差。


 甲殻の硬度と無数の足の一本一本の力強さには、攻撃しているのは自分であるにも関わらず背筋が凍った。


 相棒も《毒牙》を突き立てた時に理解しただろう。


 だからこそ、賭けに出ることに賛成した。


 たまたま二人がかりで攻め立てられていたとはいえ、もし一撃でも攻撃が俺か相棒に当たっていれば、二人とも即死だっただろう。幸運に恵まれて、ようやく勝てたのだ。


 二人とも必死だったが、最後の《毒爪》以外はまともに俺たちは攻撃を受けていない。その爪も無数にあるから困ったのだが。


 一瞬たりとも生きた心地がしなかった。《邪眼》で動きを止められた時は二度とも「あ、死んだわ俺」と思った。




    《蜘蛛巣》《蜘蛛巣》《蜘蛛巣》《蜘蛛糸》《蜘蛛糸》

    《蜘蛛巣》《蜘蛛巣》《蜘蛛巣》《蜘蛛糸》《蜘蛛糸》

    《蜘蛛巣》《蜘蛛巣》《蜘蛛巣》《蜘蛛糸》《蜘蛛糸》

    《蜘蛛巣》《蜘蛛巣》《蜘蛛巣》《蜘蛛糸》《蜘蛛糸》



 周囲を蜘蛛の巣で囲い終えた相棒が《蜘蛛糸》で落下の勢いを殺し、ふわりと地上に降り立つ。スーパーヒーロー着地。ア〇アンマンみたい。


 超かっけぇ。やっぱ羨ましいスキルだわ。


「ほん、じゃ」


「お、やす、み」


 蜘蛛巣で安全を確保したことを確認すると、俺たちは意識を手放し、どさりと前のめりで倒れた。









  ぱんぱかぱーん!


   《邪眼の大蛇おろち》は《魔眼の邪大蛇じゃおろち》に《存在進化》可能です!

   《邪眼の大蛇》は《双頭の魔蜥蜴まとかげ》に《存在進化》可能です!

   《第三の目》と《三角蹴り》のスキルを確認。

    条件を達成。新たな存在進化先が解除されます。

    《邪眼の大蛇》は《三つ首の邪蛇》に《存在進化》可能です!

     《察知》のスキルをLV4以上での所持 を確認。

      条件を達成。新たな存在進化先が解除されます。

     《邪眼の蛇》は《多頭の邪蛇じゃだ》に《存在進化》可能です!

   《邪眼の大蛇》は《イヴルアイ》に《存在進化》可能です!




   選択してください。

    ① 《魔眼の邪大蛇》

    ② 《双頭の魔蜥蜴》

    ③ 《多頭の邪蛇》

    ④ 《イヴルアイ》




 どれがどんなのかわかんねぇなー。色々知った上で選べればいいんだけど。


 とは、いっても、眠いので、考えるヨユウ、ない。


 ④も気になるけど……、③でいこう。




   選択を確認しました。


   《邪眼の大蛇》は《多頭の邪蛇》に存在進化します。



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