第13話 名を知る




 お昼寝から覚めると同時に、消化が終わったようだ。ピロン、と天の声が言う。



    スキル《威嚇》を獲得した!

    スキル《突進LV1》を獲得した!

     スキル《突進LV1》は《突進LV1》に統合される!

     《突進LV2》を獲得した!

    スキル《噛みつきLV1》を獲得した!

     スキル《噛みつきLV1》は《噛みつきLV2》に統合される!

     《噛みつきLV3》を獲得した!

    スキル《巻きつきLV1》を獲得した!

     スキル《巻きつき》は《巻きつきLV1》に統合される!

     《巻きつきLV2》を獲得した!

    《共食い》の称号を獲得した!



「おぉ……!」


 欲しかったもの全部盛りな感じ。やっぱ肝臓痛めたら肝臓食えばいいように、自分のスキル上げたきゃ自分と同じモノ食うべきなんだろう。


 ……最後いらんヤツ一つ混じってるけど。


 いや予想はしてたんだよねぇ。向き合った時から、こいつ俺と同じ種族じゃね? って感じはビンビンしてた。


 ぶっちゃけ確信犯(誤用)だ。俺の予想が正しければ、これで出るステータスがあるはずだ。


 ついでに『激弱』に傷つかない心の準備をして《解析LV2》を自分に使って一通り見てみよう。




  《魔性ませいの蛇 ♂》

   ステータス

    LV 4

     激弱


   状態

    脱皮したて


   スキル

   《瞬発LV1》

   《突進LV2》

   《噛みつきLV3》

   《巻きつきLV2》

   《三角蹴り》

   《隠密LV4》

   《解析LV2》

   《丸呑み》

   《計算》

   《眼力LV2》

   《暗視LV1》

   《引っ掻きLV2》



    パッシブSKILL

     《先見の明》

     《勇者適正》

     《戦闘の天才》

     《武器技能適正》

     《魔術技能適正》

     《輝く英雄性》

     《精力絶倫》

     《観察力》

     《器用な指先》

     《滑かな舌》

     《淫蕩の血》

     《身体操作》

     《感情操作》

     《逆境耐性》

     《絶対の復讐》

     《陽の当らぬ闇》

     《武道の素養》

     《驚異の集中力》

     《恵体》



    成長スキル

     《神の約束した克服》

     《焦土の吸収力》

     《果て無き成長》

     《無限の度量》

     《消化吸収能力LV2》



   称号

   《分析者》

   《抗う者》

   《切ない旅人》

   《覆う者》

   《憎む者》

   《復讐者》

   《深き闇の者》

   《神を欺く者》

   《善悪に愛されし者》

   《武を愛する者》

   《与えられた者ギフテッド》

   《奪われし者》

   《翻弄されぬ者》

   《転生者》

   《共食い》




「おぉー」


 心の準備はしていたので傷つかない。傷つかないんだから!


「ませいの、へび、なのか」


 気になっていたステータスというのは、名前だ。


 どうやら俺は『魔性の蛇』という魔物になるらしい。これが地味に知りたかった。やっぱ自分のこと知っておきたいじゃん。おかげで称号に『共食い』ついたけど。


 思えば、魔物でなければ納得できないこともある。


 測るものがないのであくまで体感だけど、生まれたての俺って多分40センチもなかったんだよね。太さはヒトの親指くらい。


 今俺三回のレベルアップと脱皮を経て、二倍以上の1メートル以上になってるのよ。太さは五倍くらい? あくまで体感だけど。


 今回は食ったものが大きかったせいか、脱皮した後もむくむく成長してたしね。


 そんな俺は、生後一日である。


 大きくなりたかったからいっぱい食ってる自覚はあるけど、いくら何でもデカすぎる。


「これレベル100とかになったら、どこまでデカくなんだろ」


 単純計算、レベル3で二倍になったとして、96=3×32で2の三十二乗?



    《計算》



「……430万メートルくらいかぁ」


 森の中なので仕方ないが、生まれて初めて使ったスキル《計算》はアホな数字を叩きだした。


 夜の世界にもいずれ太刀打ちできるようになるために、大きくなる必要はあるのだが。


「じゃあ430万メートル目指して、また食べますか」


 木の根から這い出し、また狩りに出る。




 それから、魔性の蛇と戦い続けた。


 命の危険を感じたのは、最初の1匹目だけだった。


 俺にとって未知の攻撃だった《巻きつき》が、戦慄するものだったように《三角蹴り》は物凄く効果的だった。


 ほとんどを、これを使って狩った。


 一匹、しっぽを叩きつけてきた相手がいたが、威力は小さかった。それに構わず噛みついて、勝負が着いた。


 うっすらと暗い森の中、《隠密》を使ったステータスも高めな恵体の俺が素早く《三角蹴り》で飛びかかれば、同サイズ以下の蛇でも容易に捕食できた。


 簡単な狩りだったが、食ったことで経験値とスキルは獲得し続けた。


《突進LV2》、《噛みつきLV3》と《巻きつきLV2》は、それぞれレベルが上がって《突進LV3》《噛みつきLV4》と《巻きつきLV4》。


 毎回噛みついて即巻きつくようにしていたのと、食った蛇のどれもが3つのスキルを持っていたことにもよるだろう。


 レベルアップして獲得した《毒牙》が、捕食して得たスキルで《毒牙LV1》にもなった。


《瞬発LV1》と《威嚇》も《瞬発LV2》《威嚇LV1》になった。それから第三の目と仮称していたピット器官だが、スキル《第三の目》として、本当に開眼(笑)。


 さすがに小魔鼠とは経験値も体積も違って、数匹狩るだけでレベルは2も上がったし、食って身体もかなり大きくなった。


「……ここがギリギリだろうな」


 気づけば体長は体感で1.8メートルくらいになっている。もう成人男性くらいの体長だ。前世の人間の姿からすれれば、完全に恐怖の対象だ。


 今夜も眠るのは木の根になる。余程の大木でなければ、これ以上大きくなるのはマズい。


 今日は一日中蛇と戦って終わった。真新しい戦闘方法は身につけられなかったが、陽も傾きかけている。


 蛇を探しながら、今夜の寝床は見つけていた。大木の根の下で、誰かが穴を掘っている場所があった。そこに入って、丸まってやり過ごすつもりだった。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る