【野性編】■■■は魔性の蛇になった。

第5話 もしかして:蛇




 囲まれている。


 というか、包まれているのだと理解した。


 曖昧な意識が続いていたが、少し前から思考が出来る程度にはっきりしてきた。


 俺は、今生まれたわけじゃないようだ。


 一度死んで、生まれ変わったらしい。


 とはいえ、記憶は無い。俺が体験したことがあるのは、この乳白色の手狭になってきた世界だけだ。俺に『手』はないようだけれど。


 少し前の記憶をさかのぼるに、徐々にこの包みは狭くなっている。というか、俺の身体が大きくなっている。いずれ入りきらなくなるだろう。


 頭で包みを突くのは、やめた方がいい気がした。スキル《先見の明》が発動したのだろうか。きっと俺の頭はまだ柔らかいのだ。物理的な骨の意味で。


 生まれたばかりだというのに、スキルはあるし知識もある。そうするものなのだと、なんとなくわかったので自分自身を《分析》してみた。すると、透明度のあるウインドウが出てきた。


 包みを破くには時期尚早だし、自分について確認しておこう。



  《??? ♂》

   ステータス

    LV 0

     激弱


   状態

    孵化を待つ


   スキル

   《隠密》

   《分析》

   《計算》



    パッシブSKILL

    《先見の明》

   《勇者適正》

     《戦闘の天才》

   《武器技能適正》

    《魔術技能適正》

     《輝く英雄性》

     《精力絶倫》

     《観察力》

    《器用な指先》

    《滑かな舌》

     《淫蕩の血》

     《身体操作》

     《感情操作》

     《逆境耐性》

     《絶対の復讐》

     《陽の当らぬ闇》

     《武道の素養》

     《驚異の集中力》

     《恵体》



    成長スキル

     《神の約束した克服》

     《焦土の吸収力》

     《果て無き成長》

     《無限の度量》


   称号

    《抗う者》

    《切ない旅人》

    《覆う者》

    《憎む者》

    《復讐者》

    《深き闇の者》

    《神を欺く者》

    《善悪に愛されし者》

    《武を愛する者》

    《与えられた者ギフテッド

    《奪われし者》

    《翻弄されぬ者》




 ステータスというのは、なんとなくわかる。前の世界のRPGという概念が理解できるため、レベルを上げていくと体力や力が強くなっていくのだろう。


 けど『激弱』って何だよ。


 スキルは使える技、パッシブスキルは自動で発動している能力といったところか。


 成長スキルも技のコツとかを吸収したりするのだろうと、何となく予想は付くのだが、枕詞が大仰だ。神だの無限だの何なのだと言いたくなる。


 ……感想。


 穏やかじゃないねぇ。(ナァシノー。)


 生前の自分についてのイメージが全く湧いてこない。勇者に向いてて復讐したがる、神を騙して深い闇にいる与えられて奪われた、スポンジのような吸収力を持った戦闘民族のエッチなヤツ?


 俺はどういう奴だったのだ。ステータスには表示されていないが、何か巨大な存在3つほどから護られている気もする。


 生前の自分に関してはわからないが、自分が哺乳類サル目ヒト科二足歩行の人間という種族であったこと、どんな文明に生きていたのかは朧げに分かる気がした。


 気がしただけなのでまるで違うのかもしれないが、中〇彬というねじりマフラーのおっさんの知識はある。そして、この中尾〇がこの世界の重要人物でないことは《分析》を使ってみて、明らかにした。


 嘘である。分析するまでもしていない。だから本当は、〇尾彬はこの世界の重要人物かもしれない。


《分析》を乳白色の世界に使ってみる。『卵の殻』とだけ出た。俺の状態から予想はついていたが、そういうことらしい。


 視力が弱い上に視野も狭い気がするのは、自分がまだ孵化もしていないからではないだろう。


 舌をチョロっと出してみる。そうした方が、周囲の状況や自分がどんな『カタチ』をしているか、よっぽど分かる気がする。


 そして、目と目の間からやけに情報が入って来る。『第三の目』とか言うと、厨二wwwと揶揄されるだろうことは理解できる。その程度には、前世の知識は残っている。ぶっちゃけピット器官で赤外線を情報として知ることができるのだろう。


 でも『第三の目』と呼びます! ドン!


 うん。


 舌と『第三の目』から読み取った情報、俺の長い『カタチ』、第三の目がある事実から踏まえて――。


 どうやら俺は、蛇に転生したらしい。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る