第5話

夜斗はギルドにくる依頼の一つ、ダンジョン攻略を実施していた

ダンジョンは場合によっては特産物を生むことがあるものの、同時に魔獣というものも生み出すという厄介な面も持ち合わせる

その特産物となりうるものを持ち帰り、魔獣を減らすのがこの依頼だ



「といっても魔獣少ないんだよなぁここ」


『ある程度サルベージ済みたいですしね』


「じゃあ今更俺が行く意味ないだろ」


『攻略がほとんど終わってるとこなら存分に力を試せますよ』


「そうだな。レベリングにもなるし」


『他の人はレベルを認識できないみたいです。協会にある宝珠…それを使ってようやく知ることができると』


「そうなのか。じゃあ俺らみたいにウィンドウで見れるのはレアか」


『みたいです。あ、魔獣来ましたよ』


「たまにはナイフやら刀も使いたいところだ」


【武具『氷月』を取得。装備可能】


「わーお都合がいい…。で、なんだこれ」


『任意に形状を変更できる武器みたいですね。弾丸さえあれば銃でも可能です』


「ほーん。弾丸ないから今はとりあえずナイフでいいや」



装備欄から選択すると、アイズを持っている手と逆の右手にナイフが現れた

どうやら本当に任意な形状変更が可能なようだ

色は青白く、名前にあるように氷のような色

しかし形状はかなり機械的で、峰側の側面に何かを差すスロットがある



「このスロットは?」


『データデバイスっていうのを差すみたいです。というか魔獣処理してくださいよ』


「忘れるところだった」


『もはや目と鼻の先で取り囲んできてますけど…』



夜斗はアイズに魔法の追加登録を頼んだ

そして手に握るナイフにその魔法をかける



「雷切」



ナイフの刃が雷に包まれる

そしてその雷が夜斗をも包み込み、気がついたときには魔獣は全て討滅されていた



『神速斬撃、とでも言うんですかねこれ』


「そうだな…。お、レベルあがった」



この後も順調にレベルを上げていき、一般人の数倍にまで成長したのだった








数日後

夜斗の背後に突き刺さった矢文



『危ないですね』


「お前な…予測できるくせに何いってんだ。当たらないのわかってただろ」


『当然です』



その矢文に書かれていた場所にきた夜斗

目の前にいるのは、一樹だ



「…ここは…?」


「転移者の巣窟だ。面白いだろ、こんなに転移者がいるんだ」



男女合わせて20人ほどが、夜斗を囲んでいた

笑ってるものもいれば、訝しげに眉をひそめてるものもいる



「これで揃ったな。とりあえず夜斗、久しぶりだ」


「元気そうで何よりだよ、夜桜一樹」



笑う一樹がもつ鎌は、刃と柄の間にエンジンのようなものがついている

それは一樹自身が考案した、小説用の武器だ



「夜斗…夜斗って、あの…?」


「ああ。一応紹介しておくか。夜斗、こいつは七々扇だ」


「…は?え、お前の元カノ?」


「おう。でそっちが夜鴉、本名竜ヶ崎総司りゅうがさきそうじでこっちが剣帝こと風山疾風かざやまはやて。でそれが十六夜こと紅月咲羅あかつきさくらだ」


「お前のフォロワーばっかじゃねぇか」



一樹がSNSにて知り合った人々、それが彼らだ

七々扇璃桜は一樹の元カノ、夜鴉は夜斗も絡んだことがあり、剣帝こと疾風は夜鴉のリアルでの友人

夜斗が絡んだことがあるのは夜鴉と璃桜だけだが



「…どういうことだ」


「…もう一人転移者がいる。それはお前も知る奴だ」


「なんでここにいないんだよ。どうやったら帰れるのか知らんけど、そいついたほうがやりやすいだろ」


「…いや」



総司から異を唱える声が上がった

璃桜・咲羅は目を逸らし、微妙に震えている



「まさか…」


「本名は白鷺しらさき大輝だいき。アカウント名臨時快速という、俺らが一度ネットで戦争した奴だ」



一樹の声の直後、夜斗は記憶を遡った

アイズがそれを補佐し、白鷺についての情報を取り出す



「…どうなってんだ」


「僕らにわかるのは、あいつを殺さないと帰れないということ。あいつはこの中の誰かに殺され、転生してここにきた。しかし女をモノとして扱っていて、各国家から女を集めた奴隷としている。だから、戦争経験がある僕らが呼び出されたというわけ」



疾風の解説に頷く一樹と総司

ちなみに屋根の上から見下ろしていたのは一樹の他に疾風と総司だ



「…ならさっさと殺して、元の世界に帰ろう」


「そうはいかないよ」


「七々扇…?」


「私たちは異能を受け取ってる。けど、神機がない状態だと仮初の名前・能力なの。だから、私たちは神機を手に入れないと、多分勝てない」


「こんなにいるのにか?」


「多分ステータス見たよね?アレの中にレベルあったでしょ」


「あ、ああ…1だったな」


「臨時快速…白鷺のレベルは999なの。だから、ここにいる全員が170まであげるか、4人仲間を増やして全員100までレベルアップしないといけない」


「そういうことだ。俺のこれは神機だが…転移するときにみんな何かしら貰ってるはずだ」



全員がアイテムを出すような動作をして、手の中に武器が現れた

総司は旧日本軍の小銃、疾風は真紅のナックル、璃桜は鎖に剣を接合した鉄鎖剣だ



「それは神機じゃないのか?」


「これらは仮設神機だ。俺は元々神機をもらったけど、他の4人は非覚醒神機。覚醒に何が必要化もわからん」



一樹はそういって建物内をぐるっと見回した

つられて夜斗も見回す

廃教会、とでもいうのだろうか。割れ落ちたステンドグラスが散乱し、神の像も朽ち果てている



「ここは神機に言われてきた拠点。さて、今一度能力を教え合おうか」



一樹は神妙な顔つきになり、前に立った

夜斗含む5人はその目の前にある長椅子に、一人一つで腰掛ける

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る