第4話
支店長の前に立つ夜斗
場所は支店長室のような場所だ
夜斗の目には支部長と書かれているのが見える
『なんか厄介なことになりましたね、マスター』
(全くだ)
【スキル『思念通信』を取得】
『またスキル入手しましたね』
(みたいだな。これで会話できてるのか?)
『できてます。というか私は最初っからこのスキル使ってたみたいですけど』
(あー、だから何か脳に直接響く感じだったのか)
支部長が椅子に腰掛け、夜斗の方を向く
手を鳴らすと夜斗以外が部屋から出ていった
「…さて、本題に入ろう。君のワンドはどういうことだ」
「質問の意図がわからん」
「3つ以上個もの魔法を登録できるワンドなど聞いたことがない。どこで手に入れた」
「あー…。目が覚めたときに持ってたんだ。なんで持ってたかって聞かれても覚えてない」
「…レスタの迷子は謎が多い。そういうこともあるか…」
一応は納得してくれたようで、夜斗は解放された
ギルドメンバーの証であるギルドカードを受け取り、外に出る
支度金としての二十セルを手に、街を歩く
(アイズ、二十セルって日本円でいくら?)
『だいたい2万円です。1セルが千円でそれ以下の単位はないみたいです。物価としては日本の千倍なので、1セルで1円という考えでいいと思います』
(ちなみにリンゴは1セルで何個買える?)
『リンゴ7個くらいですね。買っても仕方ないです』
(ふーん…。近くの安い宿は?)
『1セルで一泊させてくれますね。ちなみに奴隷は12セルです』
(買わねぇよ当面は。手伝いが要るなら買うかもしれんが)
そんな他愛もない会話をしていた2人(?)は、路地裏に入った
奥では喧嘩のような大声が聞こえる
(まずったか?)
『喧嘩というより取り立てみたいです。父親の借金を返せ、という話ですね。まぁこの国の法律だと親の借金は返済義務がありませんが』
(ふーん。じゃあ助けてやるべきなのか?)
『ちょっと威圧したら逃げると思いますよ』
(了解)
夜斗はスキルで調べた威圧用の魔法をスタンバイさせて角から様子を窺った
言い寄られているのは少女二人。ボロボロの服で、泣きじゃくりながら耐えている
(アイズ)
『魔法【魔力放出】、実行します』
入力をアイズに代行させることで、夜斗自身は何もせずに魔法を使う
不意打ちには効果的だ
「どーもー。ここで何してんだ?」
魔法により重圧が押し寄せる中、あくまで明るく言い放つ夜斗
顔は笑っているが目は笑っていない
「な、何だお前…!」
「どーも、冬風夜斗って言うもんだよろしくな」
アイズに指示を出して発動した有視界内瞬間移動で、少女二人の元へ移動した夜斗は、少女たちの体のアザを視認した
「このアザはお前らがやったのか?」
「だ、だとしたらなんだ!そいつの親は俺たちに金を借りてんだ、体で払ってもらうのが契約なんだからな!」
「…アイズ」
『どうやら、借金の返済方法として娘を売ったみたいですね。体で払うというのは言葉通り、性的行為を要するということです』
「なるほどな…。じゃあこういうのはどうだおにーさん。あんたらが俺に決闘で勝ったら俺が倍で払う。もしあんたらが負けたらこの国から出て一生この子らに関わらない」
「…は…?お、お前ルーキーだろ。名前を聞いたことがない。そんなんで、A級の俺たちに勝てるとでも思ってんのか!?」
「勝てるさ。勝つだけならやり方はある」
夜斗は魔法を切って圧力を解除した
そしてアイズを介さずに魔法を放つ
(レベル1、ファイアボルト…)
火とはプラズマ現象の一種だ
同時に起こすことは理論上可能である
魔法であれば尚の事。火炎放射の中に紛れた高圧電気が、男たちを焼きながら感電させる
そんな夜斗を、屋根上から見下ろす人影が3つ
「…なんで俺まで転移してるんだ。死んだはずなのに」
「さてなぁ…。楽しそうじゃんよ、
「バカ言うな…。夜斗に付き合うのもアレで最後のつもりだったんだぞ」
一樹と呼ばれた青年は、手にした大鎌の柄を屋根に突き、魔力の波を起こす
夜斗がそれに気づいたかは定かではない
しかし、夜斗や一樹、周りにいる二人と同じ転移者はそれに気づいた
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