第3話
ギルドカウンターに足を運び、登録したい旨を伝えた
「登録料2000ベルになりまーす」
「金とるんかい…持ってない」
「では紹介状は?」
「あー…これか?」
先程教祖に貰った紹介状を差し出す
何故紹介状を書いてくれたのかはわからないが、押し付けられたのだ
「拝見しまーす。これは…!」
「なにかあったか?」
「ちょ、ちょっとまってください!」
バタバタとせわしなく扉を開け奥に進むギルド職員
やらかしたかと唸っていると、アイズが声をかけてきた
『多分支店長クラス出てきますよ』
「っぽいなぁ」
『ギルド内もざわついてますね』
「ああ、やらかした」
戻ってきたのは先程の女性ともう一人、小太りな男性
(完全にギルド長だろ)
「君が、王直々に紹介状を書いたという…」
「あー…まぁ、そうだな…」
「なら、登録料どころか試験もいらない」
「納得できるかぁ!」
急に上がった声
それは夜斗の後ろにいた大柄な男の声だ
「俺はこんだけ鍛えてようやく試験を突破したのにそいつは特別扱いだと!?笑わせるな!」
「…ならどうしたいのだ」
「俺と戦え!俺にも勝てないなら冒険者になる資格はない!」
確かに下から数えたほうが早いもんな、などと野次が飛ぶ中、夜斗はいい機会だと考えていた
ここであえてギリギリを演出すれば、目立ちにくくなるだろう
しかしそれでは王の名誉を傷つけることにもなりかねない
「いいぜ。俺はやってやる」
「そ、そんなことしなくても入れるぞ…?」
「わだかまりは少ないほうがいい。それに、俺は試したいこともあるしな」
「そうか…。わかった、許可しよう。地下闘技場を開け!」
ギルド長の声に驚きの声を上げる
あとからアイズが確認したことによると、地下闘技場は遠い過去に使われていた施設のようだ
奴隷同士を戦わせる見世物小屋だった…が、今は廃止されたために閉鎖されているのだそうだ
「はっ…!過信したな…!」
「まぁ、ちょっと実力測りたいし(俺の)」
「新人に実力審査されるほど弱くはない!」
(そういう意味じゃないんだが…)
少しの準備時間を経て、夜斗は地下闘技場に移動した
そして登録した魔法をスタンバイする
「はじめ!」
(まず転移)
夜斗は男の背後に移動した
そしてキョロキョロしている男の背後から、もう1つ調べた魔法を起動する
(波紋)
「ガッ…!?」
それは、簡潔に言うのなら魔力の波
この世界の人間は全員魔力を感知する技能がある
それを逆手に取り、波を作りそれを感知させた
単一の振動では効果は薄いため、3つの速度や振幅の異なる振動を発生させ、男の位置でちょうど合成されるように調整した
「この、やろう…!」
「まぁこれじゃ倒れないか」
前のめりに倒れそうになっていたところを踏ん張った男が、大剣を大振りに振り回す
(バカの一つ覚えか…?それとも俺に配慮してるのか…。まぁいいや、3つ目)
夜斗は003を入力し、次の魔法を起動する
(アイスピラー)
夜斗の周りに現れた氷の槍
夜斗が頭上に手を上げ、振り下ろしたとき
それが撃ち出され、男を襲った
「うぉおおおお!」
振り回された剣が尽く破壊していく
しかし夜斗はその剣が通り過ぎた直後、針に糸を通すような僅かな隙間を通した
「ギャッ!」
「手加減はしないでくれよ、俺の力が測れない」
夜斗は次の魔法を起動した
今度は夜斗の頭上に雷雲が立ち込める
(トールハンマー)
光の速度で男に当たる
それは雷だ。数万から数億ボルトの電圧が男に流れる
「ギャアアアああ!」
「そこまで!」
ギルド長の言葉で、夜斗は次の魔法を発動するのをやめた
そして目線を男に向ける
ピクピクと動いてはいるものの、生きてるのかもわからない状態だ
(ヒーリング)
5番目の魔法を使い、体を治してやる夜斗
といってもこれは対象の時間を戻すだけで、生き返らせることはできない
「はっ…。俺は何を…」
「…大丈夫か?」
「ひっ…!」
どうやら潜在的に恐怖が埋め込まれたらしい
逃げるように地下闘技場から出ていった
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