プロローグ 地殻変動前夜
これは運命に呪われた女と、自分の運命を呪う女の物語―――
――そして、運命にあらがい、運命をねじ伏せ、運命の女神に愛された女たちの物語
その日、新興の植民惑星は大宇宙を押し渡る無敵の箱舟と百戦錬磨の
地域社会の安寧を脅かす諸勢力から恐れられ、大地に広がる緑と臣民には安息を与え、未来永劫の安定を約束する女神として大きな期待が寄せられた。
――彼女たち……三隻のライブシップは惑星国家の希望そのものであった。
あまたの反対を押し切って彼女らを招きよせた指導者は、得意満面で独立記念式典の席に座った。
血の犠牲を払ってでも教えを浸透させよ♪
そなたらの子は聖戦に赴く為に神から授かった♪
祖国の思想で宇宙を染める事こそ万物に勝る喜びなり。
おお、我らがカシス♪ 文化の源♪
おお、母なるカシス♪ 叡智の礎♪
豪胆かつ不敵な国家に参列者が陶酔する。
繁栄の陰には必ず敗者がいる。
努力の甲斐もむなしく、敗北の淵に沈み、淘汰の闇に飲まれていく者たち。
競争原理に破れた。ただ、それだけの理由で、なぜに神は過酷な仕打ちを強いるのか。
彼らがどんな罪を犯したというのか。
彼らがどこの誰を苛んだというのか。
弱かった。ただ、それだけの理由で苦しく惨めな死に追いやられる。
脆弱が原罪だというのなら、産まなければいい。
衰亡する存在を産みだした造物主が裁かれればいい。
ナターシャは、トリガーを引いた。
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