多分異世界転移して現代科学知識で無双するまでたどり着きたい話

精神崩壊太郎

第1話 謎空間

 「一体ここはどこなんだ…」

 気が付くと俺は見知らぬ空間にいた。


 「一体ここはどこなんだ…」

 ここがどこか俺は全くわからなかった。


 あたりを見渡すと何もない空間であった暗く色すらわからない。それでいてなぜ先が見通せるのかもは全く謎であった。


 「一体ここはどこなんだ…」

 ここがどこかは全くわからなかった。


 心理学者のエドガワンゲリン・バーロー・江南氏の論文によると未知の減少については名前をとりあえず付けておくと未知ではなくなるらしい。

 故に俺はこの謎の空間に対して佐々木希と名付けた。


 再びこの佐々木希はあたりを見渡すと何もない佐々木希であった暗く色すらわからない。それでいてなぜ先が見通せるのかもは全く謎であった。


 佐々木希は完全なる無であった。周囲には空気すら漂っていないと思えるほど透明であった。実際に漂っていないのかもしれない。


 対して俺はこの空間における唯一の有であった。いや佐々木希における唯一の有であった。

 無と有があるならば有について考えるのが生産的なことであろう。故に俺は無である佐々木希のことを考えることをいったん放棄した。


 俺、すなわち自分とは何か。きっとこれは哲学的な難題だと思う。自分自分と唱えていても何も始まらないので。思いつく限り具体的なことを列挙する。


 俺は3男一女の家の長男であり。名前は・・・いやこれはよそう誰が俺の脳をハックして個人情報を抜き出そうとしているのかわからない。この空間には頭に巻くためのアルミホイルはないのである。アルミホイルさえあれば思考の制約がなくなり自由に考えることが可能になるのだが。


 そう思って佐々木希の周辺を見まわしていると足に何かがあたった、それは銀色の紙状の物質。多分アルミホイルであった。おそらく脳内をハッキングされたに違いない。今後はハッキングされないためにアルミホイルは頭に巻いた。


 アルミホイルを頭に巻いたことでハッキングの心配がなくなったのでようやく自分のことについて自由に考えることができるようになった。俺の名前は野依リョージどこにでも普通にいる大学生だ。一応大学生について説明しておくと、大学生とはサークルで遊んで夜はネットをしてそれ以外の時間は寝ている人間のことだ。


 そして思った。

 「佐々木希は一体なんなんだ…」

 佐々木希が何かはまったくわからなかった。


 そして暇だったので数を数えて過ごした結果幾千年の時が過ぎ…。

 俺の精神は完全に無となり、ついには数えることを放棄した。


 そして数億年がたったころ変化が訪れた。

そう、俺は気が付いたら異世界転生して赤ん坊として異世界に生を受け、気が付いたら22歳まで成長していたのであった。


 両親はいたし、周囲の人とも普通に交流していたのだが数億年も佐々木希の中で過ごすうちに完全に精神が無になっており、周囲の大きな変化に全く気が付かなかった。


 異世界転生したことにやっと気が付いたのでこの異世界がどういう世界かについて、やっと考えてみるまずなぜ今更異世界転生したことに気づいたかについて考えてみる。


 22歳といえば、そう俺が大学生で研究を苦に自決した歳であった。そう俺は前の世界で死んだのでだった。佐々木希は死後の世界だったのかもしれない。


 とりあえず記憶を取り戻して最大の問題が一つ。記憶を取り戻すのが遅すぎということだ。異世界転生の基本では幼少期に転生を認識して、幼いころから魔法だとかを学ぶのだが俺はもう異世界でも22歳である。


 この世界には魔法があると認識してはいたが。今まで全くやろうと思っていなかった。この世界では魔法を学ぶのに割と金がかかるのである。


 剣技とかもあるのだが特に何もせずに体がもう完成してしまった。


 なのでこのまま老衰まで平和に生きました。めでたしめでたし。


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