クズジョブの遊び人に転生したメスガキは、ゲーム知識で成り上がる! ~あは、こんなことも知らなかっただなんて、この世界のヒトたち頭悪いんじゃない? ざこざーこ。
21:メスガキはエンディングをまだ迎えない
21:メスガキはエンディングをまだ迎えない
光が消えれば、そこにアホ皇帝の姿はなかった。
敗者は全てを奪われる。それがこの空間のルールだ。アホ皇帝が持っていた力も財産も何もかもが消える。世界を満たす赤い水も、趣味の悪い城も、そしてアホ皇帝の持つ魔物の強さも。全部消えているのだろう。
……なんで『だろう』なのかというと……。
「何でここから出れないのよ」
アタシはまだこの空間に囚われたままなのだ。こういうのって決着がついたらパリーンて砕けて元に戻るとかそんなんじゃないの?
「ラスボス倒したんだからこれで終わりでしょ。まさかスタッフロール忘れてたとか、エンディング今から考えるとかそういうオチ?
どうでもいいから出ーせー! 責任者出てこーい!」
やることもないので大声で叫んでたら、
「責任者って妾になるのか!? いや待てにょあああああああ!」
いきなり厨二悪魔が空から落ちてきた。受け身も取れず、ずベしゃあああ、と地面に叩き付けられる。
「……何やってんのよイタイアイドル悪魔」
「イタイ言うな! っていうかおヌシがそれを言うのか!?」
「アタシ別にイタくないわよ。アンタみたいに武器に変な名前つけたり原色ギラギラの絆創膏とか体中に貼ったりしないから」
「ぐぬぅ! 妾の美は人間如きには理解できなかったということか。
いやそちらではなく、おヌシが妾を呼んだんじゃろうが!」
アタシを指さし叫ぶ厨二悪魔。……えーと?
「もしかしてこの空間の責任者、アンタなの?」
「連名で作っておるから正確には妾だけではないのじゃがな。とはいえ主たる部分を作ったのは妾じゃからそれに相応するのが妾と言われれば納得じゃな」
「おーし、じゃあちょうどよかったわ。アホ皇帝倒したからとっとと出して。
あと経験点を沢山頂戴。レアアイテムもがっぽがぽ。オリジナルの称号ももらってスキルポイントもカンストするまでいれなさい」
「なんか関係ないこと言ってないか!?」
関係ないことなんか言ってないわよ。ラスボスに勝ったんだから当然の報酬でしょ。
「いや待てその前に貴様いま何と言った? 皇帝を倒した? 皇帝って皇帝<フルムーン>か!? もしかしてこの『
「じゃじめんとおぶこずみっくらいぶら」
「ふ、人間の子供如きには理解できぬハイセンスな名前じゃろう。天秤神のギルガスの性質を面に出し、平等な立場からスタートして努力して力を集めるリーズハルグの性質を兼ね備えたギミック! デミナルト空間の作成はリーンとテンマの力を借り、妾がシステムとネーミングを担当したのじゃ!
……まさかとは思うが、おぬしがそれに勝利したのか?」
相変わらずネーミングセンスがアレね。そこには深く突っ込まないで、事実を告げるアタシ。
「そうよ。アホ皇帝こと皇帝<フルムーン>? とにかく倒したわ。最後は世界中のみんながアタシの言葉に涙を流して賛同して、圧勝したわよ」
「うそじゃああああああああああ! 特に最後の賛同して感涙とかは絶対にないわあああああああああ!」
事実を認めない厨二悪魔。嘘はそんなについてないわよ。
「うるさいわね。勝ったのは事実なんだから。レベルアップどころか経験点も入った様子はないんだから、なんかもらってもいいでしょ?
魔王<ケイオス>の時みたいな激レアアイテムとか、エキストラダンジョン挑戦権とかレベルキャップ解放とかよこしない」
「ぐぬぬぅ……! 確かにこの空間におヌシ一人という時点でそれ以外の可能性はない。こんなくそ生意気な子供に人望があるなどとは思えぬが。口が悪いだけの奴にカリスマがあるとか人間本当に終わってないか?」
「は・や・く! よ・こ・せ!」
なんか酷いいわれようなので、アタシは手を叩いて報酬を要求する。お得意の雑なパワーアップとか、強力な武器(名前変更可能な奴)とか、何でもいいから寄越しなさい。
「ウザったいわ! クレクレくんイクない! ええい、じゃあ二代目皇帝<フルムーン>として契約させてやるから! 5柱の神悪魔の力が使える最強モンスターじゃぞ! 勝てぬものなどおらぬ最強の魔物じゃ!」
「要らないわよ。何でモンスターになんかならないといけないのよ。
それにアタシ、そのナントカにさっき勝ったばっかりなのよ。弱すぎて苦戦の『く』の字もしてないんだけど。誰が作ったか知らないけど難易度調整ガバガバよねー。魔王<ケイオス>と同じぐらいに楽勝だったわー」
「うごごごごごご……口の減らないガキじゃなあ!」
減るも減らないも事実なんだから仕方ない。悔しがる厨二悪魔を見てちょっとスカッとしたわ。実際『最強魔物にしてやる!』とか言われても御免だし。ま、今日の所はこれで勘弁してあげるわ。とっととコトネの所に戻って、しばらくはこの世界の観光でもしよっと。
<魔王<ケイオス>、皇帝<フルムーン>。私の名を冠する
そんなことを考えていたら、いきなりアナウンスが聞こえてきた。レベルアップの時に聞こえるのと同じ声。強化ボス戦とかの新イベント? もしくは報酬がもらえる?
「お、お母様!?」
「はあ?」
疑問に思うアタシの隣で、厨二悪魔が腰抜かすぐらいにビビってた。っていうか実際座り込んで、あわあわしていた。何よコイツ。なにビビってんのよ。
「なにビビってんのよ。いつものレベルアップアナウンスの声でしょ?」
「アホか! それがお母様なのじゃ!」
「おかーさま」
アタシは悪魔が『お母様』と呼ぶ存在をなんとなく知っていた。いつだかどこだか。幽霊状態になった時にレベルアップしたとき、触手に絡まれてわけわかんない空間に連れていかれ、そこで出会った何か。
そう、こんなふうに足元からにょにょにょって生えた何かに絡まれてそこから分解されて……。
「何よこれ!? メチャクチャキモイ! 何がキモイかって……分解されるのに何も感じないのが!」
「おおおお、お母様の『手』が……ステータスを媒介した
「え? これってただのいつものアナウンスじゃないの? っていうか数万年ぶりとかどれだけ天変地異なの? あとアタシどんどん体が分解されていくんですけど!?」
次々疑問をぶつけるアタシだが、厨二悪魔は何も答えない。っていうかぶつぶつ何かを言うだけで、アタシの方を見ようともしない。アタシを分解する触手をおののくように尊敬するように見ていた。
足もないのに立てる自分を不思議に思いながら、アタシは足元から分解されていく。分解されていくと言っても痛いとかそんな感覚はなく、目で見て自分が消えていくのが分かる。それが余計に怖い。
<あなたに特別な報酬を与えましょう>
分解触手は少しずつ上に上がってくる。下半身はもう完全に消えて、胸元を分解しながら頭の方に迫ってくる。明らかに異常なのに、逃げることもできない。
<私の名前は『
アナウンスが聞こえる中、分解はアタシの頭まで迫ってきた。耳も分解されているのに、その声だけは良く聞こえる。
<あなたが『ゲーム:フルムーンケイオス』と思っている世界そのものです>
そしてアタシは完全に分解された。
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