17:メスガキは奪われた力を取り戻す

「余はこの世界の神二柱と悪魔三柱の力を得た! リーンの契約! テンマの武器! アンジェラの創りし肉体! そしてギルガスとリーズハルグの祝福!

 この世界を支える六柱のうち五柱の権能が宿っているのだ! 見るがいい、その姿を!」


 アホ皇帝が吠える。背中から翼と腕が生え、合計4本の腕にはそれぞれ別の武器を持っている。頭部から角が生え、体も大きくなり筋肉が肥大化している。尻尾も生え、足は鋭い爪が生えていた。


 ファンタジーのモンスターで例えるなら、デーモンだろう。直立歩行するケモノのような存在。それでいて武器を持ち、瞳には知性を感じる。パワー系でもあり魔法も使いそうな、そんな万能系モンスター。


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名前:皇帝<フルムーン>

種族:神魔

Lv:382

HP:9590


解説:神と悪魔の力を宿す世界の支配者。世界を満たす者。


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「ギルガスより授かりし神格者の力【等しき裁き】は聖女の【クルセイド】を超える天災を生み、リーズハルグより授かりし【剣の誓い】は天騎士の【セイクリッドナイト】をも上回る。

 リーンとの契約により得た【堕落の声】は精神を極限まで苛み、テンマの力が宿った武器は人間が扱う聖武器など問題にならぬ強さ。そしてアンジェラが創りし最高傑作はあらゆる魔物をも凌駕する!

 余が負ける道理など、どこにもない!」


 わざわざアビリティを説明してくれるアホ皇帝。自分の手の内ばらすとかどうなのよ。まあそんだけ自信あるんだろうけど。


 実際、プレイヤーが使えるアビリティで【クルセイド】や【セイクリッドナイト】のレベルを超える攻撃手段はない。属性違いの同レベル火力はいくつか存在するけど、その程度だ。上位互換というレベルではない。


『精神を極限まで苛み』っていうのは精神系バステを複数付与するってことだろう。そんで悪魔の武器はどこかで見たことあると思ったら五流悪魔が憑依した奴だ。アタシからパクったやつね。そしてボディは……あの引きこもり悪魔が作ったんだから、どーせ何処かに欠陥があるに違いないわ。


「さっきまでの威勢は消え去ったか? 然もありなん。貴様らは開けてはならぬ扉を開けたのだ。分相応に生きていれば真の恐怖を知らずにいれたというのにな。どれだけレベルを上げようとも、所詮は子供の蛮勇よ。偉大なる皇帝にひれ伏し、後悔しながら地獄を味わうがいい!」


 アホ皇帝が何か言ってるけど、それを無視してコトネを見る。コトネもどこか呆然としながらアタシの方を見ていた。


「コトネ、もしかして……」

「はい、これは……」


 アホ皇帝が変身している間に攻撃しなかったり言いたい放題にさせているのは、決してRPGのお約束とかを律儀に守っていたわけではない。


 体内に渦巻く妙な感覚。アホ皇帝が持っていた盃が割れた瞬間にあふれんばかりの力が体内に満ちていた。レベルアップに似ているけど、何かが違う。


「二人が皇帝<フルムーン>に奪われた力が戻っていまちゅ!」

「おうよ。元々はお前達の力だったからな。しっかり奪い返してやったぜ!」


 かみちゃまとコピペ神がそんなことを言う。つまり、アホ皇帝に奪われた経験点とかスキルポイントとか装備が戻ってきているのだ。


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★アサギリ・トーカ


ジョブ:遊び人/遊び人

Lv:95

HP:135/135

MP:108/108


筋力:28(+X)

耐久:30(-X+70)

魔力:30(+X)

抵抗:31(-X+70)

敏捷:46

幸運:99


★装備

辰砂

アサギリ・トーカのドレス


★ジョブスキル(スキルポイント:595)

【着る】:Lv10

【笑う】:Lv10

【買う】:Lv8

【遊ぶ】:Lv8

【食う】:Lv8


★アビリティ

【笑顔の交渉】:常時発動

【微笑み返し】:MP1消費

【笑裏蔵刀】:MP10消費

【笑う門には福】:常時発動

【アルカイックスマイル】:MP100消費

【早着替え】:常時発動

【カワイイは正義】:MP3消費

【ドレス装備】:常時発動

【天衣無縫】:MP40消費

【ペアルック】:MP100消費

【ツケといて】:常時発動。

【デリバリー】:MP5消費

【キラキラしてる!】:常時発動

【貴方を買う】:MP60消費

【パリピ!】:MP3消費

【ハロウィンナイト】:MP20消費

【カード装備】:常時発動

【まねっこ】:MP60消費

【スパイス!】:常時発動

【ピクニック】:MP10消費

【精吸収】:MP20消費

【究極至高の味】:常時発動


 サブジョブ

【笑顔の交渉】:常時発動

【スパイス!】:常時発動


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 レベルドレインされる前のアタシの強さと、今のアタシの強さ。それが合計された感じだ。【笑う】と【着る】で重なっている部分はそのままスキルポイントに足されたのか、ごっそり増えている。


 コトネもドレイン前は【聖歌】【聖人】【聖武器】と前衛盾タイプに割り振っており、今は【聖魔法】と【聖言】と回復支援に極振りしている。スキルの被りこそないが、パワーアップは顕著だ。ほぼすべてのスキルを得た聖女など、普通はあり得ない。


 ……まあ、奪われる前のレベルが89でそれを取り返してもレベルが4つしか上がらないんだから、このゲームの経験点テーブルはホント鬼だわ。知ってたけど。


「このスキルポイント一気に使えば、全スキルレベル10にできるわ」

「まさかとは思いますけど、この状況で『そういう事』をするつもりじゃないでしょうね?」


 アタシの言葉に反応するコトネ。『そういうこと』……ジョブレベルを上げる際に体内を駆け巡る『アレ』だ。アタシはコトネの冷えた声に心臓を摑まれたような感覚に陥る。いや、まって。決してやましい事じゃ……やましいかもだけど。


「せ、戦術上必要な事だから!」

「それを踏まえた上で、トーカのそういう声と姿を私以外に晒したくありません」

「コトネは見ていいの!?」

「当たり前じゃないですか。むしろ見たいです」


 ものすごくストレートにずばずば言ってくるコトネに、アタシはタジタジになった。誰かヘルプ!


「……………あー。簡易のデミナルト空間を作るので、その中で手早くやってくだちゃい」

「なんちゅー理由で使われるんだよ。デミナルト空間」


 呆れたようにかみちゃまが助け舟を出してくれる。コピペ神が何か言ってるけど、アタシにとっては重要なの! 見逃して!


 そんなわけでかみちゃま空間の中で一気にジョブレベルを上げるアタシ。これはあれよ。ラスボス前に回復できるインターバルとかそういうの。


「あんん、やだあ、ふぁ、だ、めぇ……きゃふ、ふやぁ、はっ、あ、あん、あっ、ああ……ふあぁぁんんんっ!!」

「トーカ、可愛いですよ……見てるだけで、あっ、こっちも、ひん! んんんんんっ!」

「見ないで、コトネ、に見れると、ああああ……も、ゆるひっ……ひあっ、あああ! あっ、あああああんんん!」

「一緒に、一緒に……あん……にゃぁ……ふにゃ、ああっ! とーかぁ……!」

「ひゃああ、ぎゅっとされると、らめ! もっと、ぎゅっとして、ん、んぅ、くぅ……ら、め……ら、めっっっ……ええぇぇぇぇ!」


 実時間にして1秒に満たない時間で【買う】と【遊ぶ】と【食う】のレベルを10にするアタシ。コトネも余剰のスキルポイントを使ってジョブレベルを上げたわ。


 アホ皇帝から見たらアタシ達が黙って話を聞いていたように見えただろうけど、その間に色々していたのだ。……そう、色々…………。


「何で二人一緒の空間なのよ……。かみちゃまのばかぁ……」

「トーカ、可愛かったですよ」

「にゃあああああああああ!?」


 にっこり微笑むコトネ。それだけで『色々』を思い出してアタシは赤面して蹲るのであった。もう、やだぁ。コトネの意地悪ぅ……。

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