クズジョブの遊び人に転生したメスガキは、ゲーム知識で成り上がる! ~あは、こんなことも知らなかっただなんて、この世界のヒトたち頭悪いんじゃない? ざこざーこ。
13:裁縫師ソレイユ・クシャンは子供を見送る
13:裁縫師ソレイユ・クシャンは子供を見送る
「はい! はい! やりましたね!」
チャットから返ってくる朗報。それを聞いてワタシ、ソレイユ・クシャンは歓喜しました。
「トーカさん、コトネさん! 皆さん無事です! 無事、皇帝<フルムーン>の作った神と悪魔のニセモノを倒しました!」
ワタシの言葉を聞いて、トーカさんは一瞬喜びそうな顔をして、すぐに腕を組んで鼻を鳴らしました。あ、ツンデレモード発動ですよ! 一挙一動を見流さないようにしないといけません!
「ふん。こういう場合普通は『勝ったかどうかわからないような、行方不明になる』『後で実は生きていて助けに来る』がパターンじゃないの? なんで全員普通に勝ってるのよ。ありえなくない?」
呆れた、とばかりに言い放つトーカさんですが『勝つが普通』と思っている皆さんへの信頼の言葉が隠しきれていません。もう、素直じゃないんですから。ツンツンしているくせに、そういう所がとってもトーカさんらしいです!
そして微妙に口元が緩んでいます。皆さんが無事に勝利して喜んでいますね。なのにそれを素直に言えないで、ああいうことを言うのです。もう素直じゃないんですから。内心はすごくうれしいのに、それをちょっとでも見せると涙がダム崩壊して泣いちゃいそうなんですね。げへへ。もう涙もろいんですから。
「おねーさんの目、ちょっと怖いんだけど。その、モンスター的な怖さじゃなくてキモいっていうか」
「ワタシの事はお気になさらずに。大丈夫、大丈夫ですから!」
一秒にも満たない妄想状態を見切るとは、さすがトーカさんです。トーカさんも納得したのか、コトネさんに振り返ります。『あ、これ相手したら疲れるからやめよう』と小さく呟いた気もしますが、きにしませんとも、ええ!
「現実はドラマやマンガじゃないんですよ」
「それにしたって誰か一人ぐらいは引き分けとかになってくれてもいいんじゃない? ま、アタシなら楽勝なんだけどね」
ふーん、と胸を張るトーカさん。ああ、成長しない胸がかわいらしいです。言え、別に幼いながらも大きな胸をしているコトネさんがダメというわけではありません。ギャップも王道も、共に愛する。これが子供を愛するという事なのです。
小ささに悩み成長を望むトーカさんと、母性を示すかのような大きさを持ち成長を見守るコトネさん。それはまさに二人の関係を示すよう。ああ、時が止まってほしい。しかしお二人の歩みを止めたくない。悲しいかな、これがロリショタに魂捧げし者のジレンマ! 永遠に逃れられない業なのです! せめて今は、この二人を見守りその業火の痛みから身を癒しましょう。きゅんきゅん!
「……今、おぞましい何かを感じた気がするわ」
「奇遇ですね、トーカ。実は私もです」
「皇帝<フルムーン>の居城は近いですからね。その影響だと思います」
何故か震えるお二人に、ワタシは遠くの山を指さします。オルスト国の首都、オルストシュタイン。それがあった場所はすでに皇帝<フルムーン>が生み出す赤い水に沈んでいます。そこに浮かぶようにある赤き城。そこに皇帝はいます。
「あの山を越えれば、一面赤い水です。目立つ者は皇帝がいる城以外はありません。一目でわかるでしょう」
「はん、他人のレベル奪って偉そうにしているアホ皇帝だもんね。どーせセンスのない城に違いないわ」
「問題はそこに行く手段ですね。赤い水がどの程度の深さなのかはわかりません。泳ぐのは流石に無理でしょうし」
「ダメージフィールド扱いなら【天衣無縫】と【おかえりなさい】のコンボで行けるけど、侵入不可フィールド扱いなら船とか空飛ぶ手段とかがいる感じ?」
相談するお二人に、私は微笑み近づきます。そして<収容魔法>から包みを取り出し、お二人に渡しました。
「その心配はありません。こちらをお二人にお渡しします」
「ソレイユさん、これは?」
「お二人の事を思い、編み上げた服です。これを使えば、お二人は宙を舞うことができるでしょう。まさに天使の如く! あ、お二人の故郷的に言えば天女というべきでしょうか?」
「あ、【オーダーメイド】! おねーさん【裁縫術】レベル10になったんだ」
この世界に詳しいトーカさんは何が起きたかを理解したようですね。
「おーだーめいど?」
「創作系のアビリティよ。作ったアイテムに三つまでの追加効果を付与できるの。で、それはそのキャラ専門装備で他人には渡せないわ」
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★アビリティ
【オーダーメイド:ドレス】:あなただけを思い、あなたに捧げる服。世界に一つだけの服を作りましょう。材料に応じた追加効果を持つ<ドレス>を作製できる。付与成功率は当人のレベルと付与内容に依存。常時発動。
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トーカさんのおっしゃる通り、その人だけの強い効果を持つ服を作れるようになりました。それを使い、お二人にお二人だけの服を作ったのです。
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★アイテム
アイテム名:アサギリ・トーカのドレス
属性:ドレス
装備条件:アサギリ・トーカ
耐久:+70 抵抗:+70 <低空飛行><HP自動回復><クリティカルダメージ増加>
解説:アサギリ・トーカだけが着れるドレス。(制作者:ソレイユ・クシャン)
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★アイテム
アイテム名:イザヨイ・コトネのドレス
属性:ドレス
装備条件:イザヨイ・コトネ
耐久:+70 抵抗:+70 <低空飛行><MP自動回復><回復効果増加>
解説:イザヨイ・コトネだけが着れるドレス。(制作者:ソレイユ・クシャン)
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トーカさんは青いエプロンドレスに青と白の縞々ソックス。いわゆるアリスドレス! 頭にウサミミ風の青いリボンをつけて、可愛さ満点! でもそんなかわいいトーカさんが鋭く見下すようなナマイキ顔するのがギャップで最高! ゴシックカワイイ×ツリ目の見下し顔! 狙い通りです!
そしてコトネさんは白を基調とした異世界シスター風! 白いヴェールに白いドレス。清楚さを前面に出すと同時にシュトレイン様の聖印を金糸で刺繍。小さなおしゃれ故に気づく人には気づくポイントです!
「メイユゥゥゥゥゥゥゥル、ポォォォォォォォォォ! ああ、お二人がこの服に袖を通す姿を想像して作っていましたが、ワタシの想像を超えたお姿! ワタシの心を表す言葉がないのが悔やまれる!」
「今回採寸とかしてないのに、何でここまでぴったりなの……?」
「お二人をしっかりとこの眼で見させていただいたからです! 幼女や少年をずっと見続けてきたワタシの眼を侮らないでください!」
トーカさんの疑問の声に、胸を張って答えるワタシ。
「ただの変態じゃないの」
「ぎゃああああああああ! その服でその顔をされると、ああ、もう満足です……。我が裁縫道、ここに極まれし……。
いいえ、まだまだこれからです! 多くの子供たちの服を作る。その入り口にようやくたどり着いたのです!」
アリスドレスのトーカさんに見下し視線で罵られて、昇天しそうになるワタシ。これが付与された効果なのですね……。ええ、さすがです。
「気持ち悪いけど、効果は秀逸なのよねぇ……。ぶっちゃけ、嬉しいプレゼントには違いないわ。本気で気持ち悪いんだけど」
「トーカ言い過ぎです。……まあその、気持ちはわかります。私もトーカの身体情報を知られているのはあまりいい気分じゃないというか」
「ご安心を。個人情報はしっかり保護します。個人使用以外には使いませんとも!」
「その個人使用っていうのが怪しく感じるわ……」
「普段の行動と言動って大事ですよね」
胸を張って答えるワタシに、トーカさんたちは怪訝な目をしました。ああん、ダブルだと効果倍増。イケナイ何かに目覚めそうです。
「ともあれ、私の役割はこれで終わりです。ここから先は足手まといになりそうですしね」
言ってワタシは帰還アイテムを手にします。お二人をここまでお導きできたし、最高の服もお渡しできました。悔いはありません。町に戻ってお二人の凱旋を待つだけです。
「そうね。おねーさんは帰ってアタシとコトネの活躍を待ってて」
「道中ありがとうございました。皆さんにもよろしく言ってください」
言って握手し、二人は皇帝<フルムーン>を倒すために歩いて行きました。
その背中が視界から消えるまで見送って、ワタシは帰還アイテムを使います。大人として助けられない不甲斐なさを感じますが、あの二人なら為し遂げられるという信頼もあります。
この世界をお任せしましたよ。トーカさん、コトネさん。
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