35:メスガキはコピペ神に挑む
「知るがいい。神の力を! 努力を怠る子供に鉄槌を下そう!」
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名前:リーズハルグ
種族:神(ボス)
Lv:256
HP:65536
解説:世界を守る一柱。努力と武具を司る。
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「無理無理無理」
何よそのステータス!?
アタシはステータスを見た瞬間に戦闘放棄した。こんなの勝てるわけないじゃないの。わかってるレベルとHPだけでもインチキだ。特殊能力や持っているアビリティもおそらくとんでもないだろう。
「あ。実は即死が効きやすいとかバステでハメられるとか、そういうパターン?」
「その辺りの耐性は完璧だ。神を殺す毒はなく、神に死を与える技はない!」
「ズルじゃないの!」
「ズルではない。人間が努力を重ねれば、いずれ到達できる領域だ。そう、努力すれば届くのだ」
言って胸を張るコピペ神。HPがある以上は殴り続ければいつかは倒せる。レベルアップし続ければいつかは届く。ステータスがある以上、ゲーム的に倒せる。そういう事なんだろうけど……。
「レベル99から100になるのに半年かかるって言われてるのよ。しかもHP60000とかレイド級じゃない。世界中の人達かき集めないと勝てないわよこんなの!」
魔王<ケイオス>は……なゆた? なんかとんでもないHP量だったけど、毒ハメ戦法で余裕で勝てた。でも今回はそういうのはできなさそうだ。レベルを上げてぶん殴る。それ以外の攻略を徹底的に封じているわ。
「諦めの早い子供だ。修行を重ねればいつかは神に届くぞ。そう……300年ほど修行すればな」
「死んでるわよ。300年ってどんだけの時間よ」
「私達の生きていた時代から300年前だと江戸時代ですね。徳川吉宗が将軍です」
アタシの言葉にあっさり答えるコトネ。なんでそんなのがすぐに出るのよ?
「そもそも99から100が半年ぐらいだとして、そこから156レベルを上げるのに300年は多すぎません? 一年で2つ上がる計算なら78年で終わると思いますけど」
「レベルが上がるたびに必要な経験点は馬鹿みたいに跳ね上がるのよ」
コトネの質問にRPGあるある悩みに頭を抱えるアタシ。<フルムーンケイオス>も95を超えるまでが半分で、そこからが茨なのだ。いやマジでもう少しどうにかならないかなぁ、あの経験値テーブル。
「安心するがいい。此処では死ぬことはない。永遠に挑み続けるがいい。その苦悩、その痛みが汝の経験となろう。時間も圧縮しているので、現実では1日ぐらいしか経過しない。
さあ、神に勝つまで挑み続けるがいい」
胃ってコピペ神はアタシ達に向けて両手を広げた。一撃ぐらいは受けてやる。しかしそこからは反撃する。そんな顔だ。
「無理、イヤ。そんな暑苦しいのは性に合わないわ。帰っていい?」
勝つまで帰れませんとか聞いてないわよ。キャンセルキャンセル!
「残念だが汝らは選択した。もはや撤回はできない」
「うわ最悪。内容言わずにそういうイベントするのやめてくれない」
「なにを言う。勝てばいいだけだ。そして努力を重ねればいつかは勝つ。その時こそ、真なる英雄が生まれるのだ」
その後でコピペ神は笑みを浮かべる。
「もちろん、これまで散々ズルした分は痛みを受けてもらうがな」
うわ、逆恨み。自分の思い通りに攻略されなかったからって、それを暴力で返すなんて最低な神ね。
「困った時のかみちゃまだより! なんかない? 神案件だし」
アタシは作戦タイムとばかりにかみちゃまに向きなおる。何とか空間をどうにかするとかしてくれると嬉しいんだけど。
「無理でち。此処であたちが強引にデミナルト空間を解除すると、地上に自由落下でち。あたちはともかく、トーカちゃん達は死んじゃいまちゅ」
「そう言えば、メチャクチャ高い塔だってことを忘れてたわ」
逃げることもできない以上、戦うしかない。
死なないし、経験点ももらえる。無限レベルアップというのはアタシとしては美味しい。ぶっちゃけ、それだけ見れば魅力的。<フルムーンケイオス>ではレベルカンストが100なんだけど、神パワーとかでそういうのも突破できるんだろう。
でも300年はない。アタシの信条は『楽してサクッとレベルアップ』だ。300年もかけるとか無駄でしかないわ。
「必勝イベントには変わりないけど、こういうのはまっぴらごめんだわ」
「ですが逃げることもできませんよ」
「そうなのよねぇ……。クソ熱血コピペ神の分際で……ん?」
アタシは眉を顰める。
「ねえかみちゃま。アイツは神の力を持ってるだけのコピペでいいのよね?」
「分体でち」
「要するに、神本人じゃないのよね? 二つに分かれたかみちゃまが二人ともかみちゃまだったのとは違って、あっちはただのコピペって事でいいの?」
「そうでちゅね。だからこそ人間に攻撃ができるんでちが」
「つまり、あいつはモンスターって事よね」
そうだ。アタシ自身も言ってたことよ。ステータスがある以上は、たおせる。そしてステータスがあるってことは……。
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アンカー
矜持:神
主義:努力
禁忌:■■■■と言われる
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「見えた!」
アンカーが見えた。吸血鬼ボスと同じように人間みたいな精神を持ってるんだから、あると思った。
神であることを誇りに思い、努力を大事にする。予想通りね。でも最後は何だろう? 何かを言われるのがダメってこと? これまでこんなのなかったけど。
「やーい。のうきーん。頭使わないざーこざこ。チェックの甘いガバガバ管理者♡」
「ふん。確かに不備があったのは認めよう。次はあそこに壁を作り、テレポートも使用不可にしてやる」
思いつく限りの悪口を言ってみるけど、コピペ神は動揺しない。アンカーも揺れないわ。
そもそも隠されてるってどういう事よ? 今まで『こいつはここが弱いかも』っていう確信を得たら見えた。見えてしまえば弱点はまるわかりだったわ。あとはそこを弄り倒せばいい。
でも見えているのに隠されてる? これってどういう事よ? 言われたくないことがあるんだけど、その内容が分からない……? 言われたくないってだけが分かっている?
しかもアンカーだ。コトネ曰く心の根底だ。マッチョ神信仰だったり、処女厨だったりと言った変態めいた性癖みたいなものだ。その人間……こいつら人間じゃないけど、とにかく絶対に避けられないモノだ。
つまりコイツには言われたくないことがある。心の奥底から。しかもそれから逃れられない。なんなんだろ……?
わかんないわ。諦めて別方向から弄ってみましょ。
「神とか言ってるけど悪魔に負けっぱなしの引きこもりじゃない。しかも人間に頼るしかない他人任せ。
悔しかったら自力で悪魔に勝ってみなさいよ 努力しても勝てないなんて認めたくないんでしょ? なのに他人に強要するとか神って無様」
「何だと!?」
アタシの言葉に、アンカーの二つがガンガン揺れたわ。効いてるみたいね。
「努力すればいけるんでしょ? ほ・ら、頑張れ頑張れ♡」
「貴様……! その腐った性根を徹底的に叩き直してやる!」
「へ?」
空中に無数の剣を召喚し、アタシに向かって降らせるコピペ神。
「ふぎゅ……!」
一撃でアタシのHPは0になる。オーバーキルもいい所だ。死に至る痛みがアタシの体を襲い、そしてすぐにHPが全快になる。
「はぁ……はぁ……! 今、アタシ死んでた……?」
自分でも顔が真っ青になっているのが分かる。死。その文字がアタシの心に刻まれていた。
「そうだ。だが神の力で蘇らせた。この空間内で、死ぬことはない。神に勝つまでな」
お腹を貫かれ、内臓を斬られた痛みと背骨を断たれた痛み。一瞬で脳みそが真っ赤になって、そして真っ暗な世界に落ちていって……そして蘇った。
乱れる呼吸を強引に飲み込む。ぎゅっと唇を結んで、何とか言葉を紡ぎだす。
「はん。300年もも殴ってらんないわ」
死んだ、という恐怖で背筋が凍る。その凍えを振り払うように、アタシは虚勢を張った。
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