34:メスガキは神に会う
<条件達成! トロフィー:『ボスキラー』を獲得しました。スキルポイントを会得しました>
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カルパチアの吸血鬼ボス4タテ達成……! さすがに、疲れたぁ……!
「ふ。見事であった。このドラキュラを制するとはな……しかし余は永遠。いずれまた蘇り、人の血をすするだろう。しばしの平和を満喫するがいい!」
ドラキュラ戦では即死攻撃を食らわないように警戒しながらじわじわ攻め、
「ふはははははは! 面白い戦いだったぜ! だが次は勝つ! その時も面白い戦いであることを祈るぜ!」
ノスフェラトゥ戦では持ってるバフを全のせしてからクリティカルで一気に削り、
「ふふ。悪は静かに去りましょう。しかし忘れないで。次はアナタが悪として滅ぼされるかもしれないのだから……」
騎乗悪役令嬢カミラ戦では相手の突撃をいかに避けるかを苦心し、
「OH! FULL-Courseを満喫されたのDESUネ! 次はもっと素晴らしいCookingを用意しMASU!」
ブラムストーカー戦はとにかく回復するから長期戦になって。
吸血鬼達は負けセリフを吐いて消えていき……すぐに復活したわ。ザマス吸血鬼も一分間のインターバルがあったっていうのに。
「やはりな。十字架の中はカルパチア全土と繋がっている。滅びて蘇るのもこの十字架内ということか」
成程、とばかりに呟いたのはドラキュラことマント男だ。マント男ことドラキュラ? どっちでもいいわ。
「やられてもすぐに復活するとか、アンタ達狡くない?」
「そうでもない。この十字架を排しない限り、我らはここから出ることができぬからな。神とは恐ろしきものよ」
「じゃあ十字架はこのままにして帰る……うーん、ないわね。レアアイテムが待ってるんだし」
人類のために吸血鬼はここに閉じ込めておいた方がいいかも。そう思ったけど、レアアイテムへの欲望が勝ったわ。
マント男と白女を倒すことがこの部屋クリア条件だったのだろう。気が付いたら闘技場のど真ん中にワープできる魔法陣が浮かんでたわ。気付いてたけど、4タテするまでは放置してたんだけどね。
「おおおおおおお! すごい戦いだったぞ!」
「ドラキュラ様、お見事でした!」
「ノスフェラトゥの動きが目で追えなかった……!」
「カミラ様、踏んで!」
「俺もブラムストーカー伯爵の料理が食べたーい!」
そして周りのギャラリーからは拍手喝采だ。アタシは勝者の証とばかりに手をあげた。その瞬間にさらに湧くギャラリー。
「ふん。アタシにかかれば吸血鬼なんてよゆーなんだから! 可愛いアタシに見惚れてもいいんだからね!」
「くそ生意気ー!」
「見下し目線かわいー!」
「惚れたぜ、そのブレないキャラ!」
……なんか、アタシの想定していた声援じゃないけど、たぶん好意的な感情なのだろう。アタシはうんうんと頷いていた。
「それじゃ行くわよ。コピペ神なんかぶっ飛ばしてやるんだから!」
言ってアタシ達は魔法陣に乗る。一階の時と同じような浮遊感の後に、また景色が変わった。十字架の頂上なのだろう。空が広い。下を見たら雲と大地が見える。……足踏み外したら絶対死ぬわ。
「この高さなのに寒くない……。完全に外というわけではないのですね」
「あい。此処はデミナルト空間で形成されてまちゅ。温度も気圧も地上と同じレベルに整えられていまちゅ」
コトネの質問に答えるかみちゃま。よくある神が作ったご都合主義空間なんだろう。そしてその神が目の前にいるわ。
兜をかぶり、盾を持ち、剣を持った男。体を守る鎧を始め、装備には汚れ一つない。ローマだかギリシアだかの兵士っぽい感じね。
「よくぞ集いた英雄達。我が名はリーズハルグ神。戦と努力の神なるぞ」
「正確に言えば、そのコピペね。本人そっくりなニセモノ」
「その減らず口を閉じよ! 不敬なるぞ!」
アタシのツッコミに、顔を真っ赤にして起こるコピペ神。あ、気にしてるんだそれ。
「アサギリ・トーカ、イザヨイ・コトネ。ここまで来た汝らは最後の試練<おおっと、ゴッド!>を受ける権利がある。あるのだが……」
だが、と言った後でこぶしを握ってプルプル震えるコピペ神。なによ? イベント台詞なんだからちゃっちゃと言いなさい。
「何なのだあの戦いは! 一階部分はズルをして外側を歩いて突破! 二階部分はドラマ性を無視して! ただ戦って勝っただけじゃないか!」
「何が悪いのよ。勝てばいいじゃない」
「いかん! ただ戦うだけなら獣と同じだ! 人間なら、英雄と呼ばれる人間なら、戦う理由に葛藤し、そしてそれを乗り越えねばならんのだ!」
アタシの言葉に怒り狂うコピペ神。
「いいか! 心の中に在る葛藤。それを乗り越えること! それこそが人間としての成長なのだ! 血の汗を流して障害を突破し、涙を流しながら敵を倒し! そうして進んだ一歩にこそ、価値があるんだ! 分かるか!」
アタシを指さし叫ぶコピペ神。うわもうウザったいなぁ。
「知らないわよ。そういうのは好きな人同士でやってちょうだい」
そういう熱血とか燃えるとか、そういうのが好きな人がいるのはアタシもわかる。アタシには理解できないけど、まあそういうノリもあるし勝手にしてって感じ。アタシの見えないところで勝手にドラマする分にはどうでもいい事よ。
「いかんいかんいかーん! 人間はみな英雄になる素質を持っている! くそ生意気ではあるが、キミはこのミルガトースで十指に入るレベル保有者だ! 力には責任が伴う! キミの行動を見て他の人達が真似るかもしれないんだぞ!」
「ふーん。いいじゃん。皆効率よくレベルアップすればいいことづくめよ」
「ダメだ! 人間は効率を重視することで多くのモノを失う! 苦労して得られた経験こそが、本当の経験なのだ!」
うわぁ。めんどくさい努力厨ね。苦労しないといけないとか、どんだけマゾなのよ。いいじゃない。楽して強くなれるのなら。
「ルールに違反してないんなら、責められる筋合いはないわよ」
「ルールの問題ではない! 人としての態度の問題だ! 話を逸らすな!」
「とーかぁ、こどもだからわかんなーい。コトネお姉ちゃんに言ってよ」
「お、おねえ……ちゃん……! ときめきました。もう一回言ってくださいトーカ」
「やめて。ガチでやめて」
ウザったいのでコトネにパスしたら、本気でそんなことを言ってくる。お姉ちゃん呼びがツボったらしいので、ステイさせた。コトネよりもアタシの方が美人で大人なんだからね! 勘違いしないでよねっ!
「リーズハルグ神。ルールの穴をついた形にはなりましたが、私達は踏破しました。ならばそれに応じるのが神の務めではないでしょうか?」
「……然り。汝らには神への挑戦権がある。それを行使して神に挑んで新たな聖武器を得てもよし。此処で膝を折って2階までの報酬を得て帰ってもよし。
さあ、選ぶがいい」
コトネが咳払いした後にコピペ神が気を取り直して手を広げる。その瞬間にワープ用の魔法陣が現れる。こっちに行けば、地上に帰れるのだろう。
「当然挑んでレアアイテムゲットよ。決まってるじゃない!」
アタシの答えは決まっていた。此処で戦わないで何しに来たっていうのよ。
「いいだろう。思い上がったクソガキに大人の様式美と正義のすばらしさを叩き込んでやろう。泣いて土下座して謝るまで痛めつけてやろう」
若干私情が入ったコピペ神。とりあえず情報が欲しいので。吸血鬼ボスに先陣を切らせようと振り向いて――
「あれ? 吸血鬼ボスたちは?」
「そう言えばいませんね。こっちに来なかったんでしょうか?」
「転移条件が『ドラキュラとカミラに勝った者』でちから、条件を満たしてないのでこっちに来れないんでちよ」
……あー、そうなんだ。
「ま、相手はコピペされた神様なんだしアタシとコトネだけで十分勝てるわよ」
「自信満々ですね。何か根拠でもあるんですか?」
「神とか悪魔ってアタシ達に直接攻撃できないんでしょ? この試練も必勝イベントとかそういうのよ」
「リーズハルグ本人じゃないから、その制限はありまちぇんよ」
……あー、そうなんだ。
「思い上がったガキに現実を教えてるのも、神の務めだ」
そして必勝イベントでもなさそうな感じね。ヤバくない?
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