21:メスガキは女吸血鬼に驚く


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名前:カミラ

種族:アンデッド(ボス)

Lv:124

HP:1501


解説:貴族階級の吸血鬼。嗜虐的で妖艶な白の王。


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 カミラ。女性の吸血鬼。テキスト通りのサドで大人な感じの女性だ。


 白いドレスは血痕で紅く染まり、手にした奇妙な形の器具も同じ色の液体が滴っている。もう片方の手には複数の鎖を持ち、その先には二体の女性型のヴァンパイアの首輪に繋がっているわ。


「ああ、カミラ様。あいつらの血を吸うのですか?」

「カミラ様のために戦います。ですからどうかご褒美を」


 つながれた女性型ヴァンパイアは顔を赤らめて言う。熱にうなされた彼女達の言葉に込められた想い。それを感じるように髪らは笑みを浮かべ、そして叱咤する。


「誰が喋っていいと言ったのかしら?」

「お、お許しをカミラ様! 不遜でした!」

「黙れ。それともお仕置きされたいからそうやって不躾を晒すのかしら? 発情する駄犬は嫌いよ」


 冷たく言い放つ言葉に吸血鬼の紅潮した顔は一気に青ざめる。カミラに冷たく扱われる。それがこの世の地獄であるかのように。世界そのものはカミラであり、カミラに見捨てられれば生きる価値がない。そんな洗脳。そんな調教。


「ああ……」


 アタシは目の前に現れた吸血鬼ボスに驚いていた。喉元が乾く。驚きで言うべき言葉がまとまらない。


「あら、子供には刺激が強すぎたかしら? でも大丈夫よ。貴方達もすぐにこうなるから。二人は愛し合っているみたいだから、特別に同時に愛してあげる。目の前で私に愛を誓わせて、壊してあげようかしら? それとも愛し合ったまま肉体を堕としてあげようかしら?」


 唇に指をあて、嗜虐的な笑みを浮かべる白女。その挙動、その言葉。その一つ一つがアタシが抱いている疑問を加速させる。うそ、ありえない。なんで? でもその事実は間違いなく現実のモノ。認めるしかない。


「何で……?」

「あら? 私がここにいることが疑問? 吸血鬼の領主は領内ならどこにでも現れることができるわ。此処は私の領地だから、出てきてもおかしくない。

 それとも城の守りを捨てたこと? 領主は城を護るから出てくるはずがない? 残念ね。ブラムストーカーやドラキュラみたいな保守的なのとは違うの。欲しい女の子がいればすぐに向かって奪うのが私の主義なのよ」


 アタシの呟きにニィと唇をゆがめる白女。違う、そんなことはどうでもいい。確かに想定外だけど、今カミラがここにいることは些細な事だ。予想外の特殊嗜好とかもあるけど、それよりも――


「変な語尾とか英単語ばかりで喋らないとか、あなた本当に吸血鬼の偉い人なの!?」

「へ?」

「ヴァンパイアが変な語尾で銀色料理人が英単語まみれなのに、なんでアンタは普通に喋ってるのよ! ニセモノね!」

「そこ!? 驚くところそこなの!?」


 アタシははっきりきっぱりと白女に向かって言い放つ。だってあり得ない。吸血鬼ってそういう生き物じゃない。銀色があれだけ濃いんだから、この白女も同じぐらいに来い喋り方すると思ってうんざりしてたのに。


「あんな変人奇人と一緒にしないでほしいわ! 私もブラムストーカーと喋るときはうんざりしているんだからね! 何あの喋り方。言いたいことはわかるけど頭痛くなるんだから!」

「分かるわー。言いたいことはわかるんだけど、意味不明なのよね。コトネがいなかったら会話放棄していたわ」

「英単語は基本的に形態素の組み合わせですから、そこさえ押さえればおおよその意味は理解できますよ」

「ゴメン。そのケイタイソっていうのが分かんない」


 理解と会話を放棄するアタシ。白女も同じように頷いた。


「でもまあ、会話が成立するだけマシね。ドラキュラは身分主義でノスフェラトゥは獣だし。貴方達を受け入れたというのもあの性格でしょうから当然と言えば当然ね」

「みぶんしゅぎ? けもの?」

「ドラキュラはヴァンパイアロードを頂点にして、ヴァンパイア、レッサーヴァンパイア、そして人間で扱いを変えて、身分付けて支配しているのよ。逆らうことは許されない牢獄みたいな国。

 ノスフェラトゥは弱肉強食。弱い人間やレッサーヴァンパイアを食らって、強いヤツだけが生き残って徒党を組んでいる感じね」


 はあ、とため息をつく白女。あの銀色以上に会話にならないというのも大問題。やはり人間と魔物は相いれないという事か。


「戦争の原因はそう言った国家の在り方の違いという事ですか?」

「戦争の……原因?」


 コトネの問いにオウム返しに言葉を返す白女。そう言えばこいつら、何で戦ってるのか知らなかった。正直ただの設定なので、どうでもいいと言えばどうでもいい事なんだけど。


「はい。四つの吸血鬼国家が争う理由です。聖地を求めると聞いていますが、それ以外にあるのなら教えてほしいです。ともすれば協力或いは和解の道も――」

「原因……理由……」


 白女は口元を押さえ、激しく呼吸を繰り返していた。元々白い顔だからわかりにくいけど、酸素が足りないのか蒼白だ。スイッチが入ったかのように単語を繰り返し、そして頭を掻きまわす。


「理由……理由……! なんで、なんで私達は……! 私は!

 聖杯、聖地、故郷……! そんな者よりも、好きな子と一緒に静かに暮らしたい……! 違う、そうだ。聖地で、聖地に向かわないと……!」


 さっきまでの大人なサド女の余裕はない。激しく呼吸を繰り返し、吸血鬼さながらとばかりに凶器に満ちた瞳でこちらをにらんだ。わけわかんない。さっきまで会話らしいものが成立していたのに、いきなりヘンになった。


「どういうこと? 何か地雷踏んだの?」

「よくわかりませんが……戦争の理由と原因に何かあるようですね」


 メチャクチャ不安定な白女を前に、アタシとコトネは戦闘の構えを取る。どっちにせよ戦いは避けられそうにない。会話が通じそうと思ってたけど、そうでもないらしい。それにしても支離滅裂すぎる。


「ふふふ……! そうよ、貴方達は敵なんだから。敵は倒して、イジメなくちゃ。なに悠長に会話なんかしてたんだろう?

 私はカミラ! ヴァンパイアロードのカミラ! あはははははは! ブラムストーカーの刺客を殺して、弄って、壊して、血をすする女領主よ!」


 敵意100%の視線と哄笑。それと同時に掴んでいた鎖を引っ張り、女吸血鬼二体を自分の前に出す。引っ張られた吸血鬼達はそれで白女の意図を察したのか、牙をむいて構えを取る。


「ボスとその取り巻き二体って所ね」

「勝てますか、トーカ?」

「五分五分。できればもう少し準備したかったけどね」


 コトネの問いかけに脳内で戦い方を構築しながら答えるアタシ。できるならもう少しレベルを上げて、コイツに対する準備をしたかった。だけど戦闘は避けれそうにないわ。


「聖女、お前がいるならこの服ね」


 言うと同時に白女は目にも止まらぬ動きで。血染めの白いドレスから、天使を思わせる羽の生えた衣装。天使ローブ。聖属性に耐性を持つドレスだ。


「こいつはこれがあるから面倒なのよね」

「今の!? トーカと同じことしましたよ!」

「ええ、前にも言ったけど吸血鬼ボスは元人間でアタシ達と同じジョブを持ってるわ」


 銀色吸血鬼が『料理人』ジョブを持っているように、カミラも人間のジョブを持っている。


「こいつの持っている人間ジョブは『悪役令嬢』。ジョブの中に【着る】もあるわ」

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