28:メスガキは魔王(第二形態)と戦う
「今の姿は魔王にとってかりそめの姿。切り札を使って倒したことでいい気になっているようだが、第二形態をみて絶望するがいい!
人間状態が霞むほどの強さじゃからな。同じやり方はもう通じぬと思え!」
魔法使い姿から変異し、巨大なドラゴンの姿になる魔王<ケイオス>。
「GAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!」
咆哮が空間をも振るわせる。山を思わせる巨大な姿。雪を思わせる白。鋭い爪だけでもアタシの身長を超える大きさだ。頭部、右手、左手、羽根、尻尾がそれぞれ独立したHPを持つボス。その一つ一つが難敵と言われ――
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名前:魔王<ケイオス> (頭部・本体)
種族:ドラゴン(ボス)
Lv:255
HP:那由他
解説:魔王の本当の姿。世界すべてを飲み込む悪しきドラゴン。
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名前:魔王<ケイオス> (右腕)
種族:ドラゴン(ボス)
Lv:200
HP:65536
解説:魔王の右腕。城の防壁すら切り裂くかぎ爪と、大砲すら凌駕する魔法を放つ。
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名前:魔王<ケイオス> (左腕)
種族:ドラゴン(ボス)
Lv:200
HP:65536
解説:魔王の左腕。城の防壁すら切り裂くかぎ爪と、大砲すら凌駕する魔法を放つ。
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名前:魔王<ケイオス> (羽根)
種族:ドラゴン(ボス)
Lv:200
HP:65536
解説:魔王の羽根。羽ばたくだけで烈風を生む。天空の覇者たる証。
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名前:魔王<ケイオス> (尻尾)
種族:ドラゴン(ボス)
Lv:200
HP:65536
解説:魔王の尻尾。そのひと振りは1万の軍隊すら薙ぎ払う
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「ちょっと待て。なにこのHP!?」
魔王のステータスを確認したら、なんかとんでもないことになってた。確か<フルムーンケイオス>だと各部位は7000どまりだったはず。本体の頭部でも4桁内だったのに、とんでもない数値になってるんですけど!
「ふっふっふ。妾が改造したからのぅ。どうじゃ、恐れおののいたか! どんなことをされようがHPを高めておけばとりあえず対応できるという究極の改造! 無論魔王第二段階には即死も効かぬ! 『マジックカード』のぞろ目即死も対応済みじゃ!」
魔王の頭の上でどや顔するゴスロリ厨二悪魔。大きさ的に豆粒みたいで見えないけど、声はやけに響く。あとどんな顔してふんぞり返ってるか想像できるわ。
「っていうか頭部のHP表記バグってるわよ。なんかよくわかんない漢字になってるし」
「ふん、無学な子供にはわからぬか。
「『もとは仏教用語で『極めて大きな数量』を意味します。出典によって異なりますが、10の60乗が現行使用されている値になります』……とサブ思考が言っています」
アタシの質問に答えたのはかみちゃまイン聖女ちゃんだった。じゅうのろくじゅうじょう? は? 乗、って、どういうこと?
「10の後に0が60個ついています。
「ぬぉ、そんなに多かったのか!? ……いや、知っておったぞ。当然知っておったとも!」
「……知らなかったんだ。雑な強化にもほどがあるけど、ここまでくるとアホを通り越して呆れるわ」
ホント『ぼくのかんがえたさいきょうのもんすたぁ』とかに出てきそうな強さね。中二病に数値設定させたらだめっていういい例だわ。
「と、とにかく絶望したじゃろう! 妾と妾が手を加えた魔王を前に無力を感じ、許しを請うがよい! 七度生まれ変わっても許さぬがな!」
「許さないんなら謝る気はないわ。ついでに言うと、絶望もしてないし」
何それ、って思ったけどその程度だ。どのみちHPが高くてアタシが殴っても手が届かないことはわかっていたし。
「虚勢を張るのも大概にせい。遊び人がどれだけレベルをあげようとも、どれだけ強い武器を持とうとも今の魔王<ケイオス>を倒すだけの力はあるまい。いや、どんな人間でも勝てぬじゃろうなぁ。
尻尾に薙ぎ払われるかか、翼の突撃で吹き飛ばされるか、爪で体を切り裂かれるか、竜の吐息で骨すら残らぬ骸になるかか。好きなのを選ぶがいいぞ」
「要らないわ。代わりにこれをあげる」
どれも真っ平御免とばかりに、アタシは手に持っている『フーマの吹矢』を使う。
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★アイテム
アイテム名:フーマの吹矢
属性:アイテム
装備条件:なし(片手に何も装備していない状態でないと、使用不可)
解説:対象に使用者のレベルに応じた<毒>を与える。
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ダメージは与えないけど、相手に<毒>を与えるアイテムよ。使った人間が33レベルまでは<毒>。34から66レベルまでなら<猛毒>。67から99レベルまでなら<劇毒>を与えるわ。
「何かと思えばバッドステータスか。確かに状態異常耐性は万全ではないが、すぐに癒しておしまいじゃ」
アタシの行動を嗤う厨二悪魔。確かに魔王<ケイオス>は自分の行動前に自動でバッドステータスを回復する。行動を伴わないので、麻痺系バッドステータスは意味をなさない。そのため、魔王<ケイオス>戦ではバステ攻めは悪手と言われている。
でも<毒>などのスリップダメージは無意味ではない。魔王の行動が開始されるまでは自動でHPを減らしていく。<毒>なら毎秒でHPを1と敏捷10%減少。<猛毒>なら毎秒5点と敏捷15%減少。<劇毒>なら毎秒10点と敏捷20%減少。そして――
「GA……BAGHAAAAAA!?」
「ななななななな、なんじゃ!?」
口から吐血する魔王。それに驚く厨二悪魔。然もありなん、HPが……10の58乗も減ったのだから。
「毒は毒でも<死毒>よ」
「し、しどく? なんじゃそれ!?」
「<劇毒>の一つ上。毎秒HPの1%を減らして敏捷を30%減少させるバッドステータスよ」
「はああああああ!? 何それ、妾知らないんじゃが!」
「<劇毒>を『辰砂』の効果で一段階引き上げた<毒>系バッドステータスよ。
やーだー。モンスター改造してるのに、そんなことも知らなかったの? 頭悪いんじゃない?」
<フルムーンケイオス>内でも物議を醸しだした最強バッドステータスよ。HPの最大値に比例した減少量のスリップダメージ。でも最大HPによっては毎秒10点の方が減りが多くなり、むしろ弱体化したとまで言われてるわ。HPが1000を超えたあたりから使えるようになるぐらいね。
魔王<ケイオス>はHPが回復したりしないから、食らえば100秒後には確実に死ぬわ。毎秒HPが100000000000000000000000000000000000000000000000000000000000も減ってるんだもんね。血だって吐くわよ。
厨二悪魔が知らないのも無理はない。辰砂を装備できる【キラキラしてる!】を習得できるジョブが少ない上に、その手のスキルを持てるジョブが軒並み戦闘向きじゃないから発見されなかったもんね。アタシも『あれ、どうなるのこれ?』って試してみて初めて知ったぐらいだし。
「こ、こんなもの動くと同時にすぐに解除して――」
「解除してもすぐに吹矢で<死毒>与えるからむ・い・み♡ って言うか、敏捷ががっつり下がってるから『次』に動くまでにどんだけHPが減ってるのかなぁ?」
<毒>の恐ろしい所は、敏捷も下がる点だ。行動開始時に全バッドステータスを自動解除する魔王第二形態だけど、行動する速度は敏捷に依存する。それががっつり減っていれば、当然<死毒>を解除するのも遅れてその間にHPも減っていく。
ついでに言えば、回復したと同時に『フーマの吹矢』を使えばいい。消耗品じゃないし、片手さえ空いてれば何度でも使用できるのだ。魔王が<毒>から逃れる術はない。
「な、ならお主を先に倒せばいいだけじゃ! <毒>を受けていない爪と羽根と尻尾は普通に動ける! その攻撃を受ければ、ひとたまりもあるまい!」
「トーゼンそっちも対策済みに決まってるじゃない。【貴方を買う】わ」
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★アビリティ
【貴方を買う】:金さえあれば人だって買えるの。倒したことがある人間型モンスター(ボス属性除く)のアビリティを使用できる。対象モンスターのレベル×10000ガマを支払う必要がある。MP60消費。
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人間限定だけど、モンスターのアビリティを使えるアビリティ。【買う】のレベル8で習得できるアビリティよ。
「某、闇に生き闇に死ぬ運命。……されど地獄の沙汰も金次第。悲しきは物価高騰と寒空よ」
指定するのは嫌になるぐらいに倒したニンジャ。なんか声に泣きそうな響きがあるけど、無視。
「これが忍びの一閃。影より放たれる死の手裏剣。あらゆる武芸をも無に帰す理不尽なる一打。そして――」
「いいから早くしなさいよ。金出さないわよ」
「とほほ。世知辛い世の中でござる。【アンシーン・ダガー】!」
不可視の刃。高い命中率と使用者の回避率を上げる攻撃ね。ダメージは通ればラッキー程度。だけど重要なのは回避アップ効果よ。攻撃に合わせて【早着替え】でシノビスーツに着替え、【カワイイは正義!】で回避率をガン上げ!
迫る爪をバックステップで交わし、尻尾の薙ぎ払いは振るわれる前に範囲外に移動。翼が産む風は放たれる瞬間に横に飛んでかわす。
「よ、避けた!?」
「魔王<ケイオス>第二段階の攻撃パターンと攻撃範囲、ついでに予備動作は全部覚えてるわ。よゆーよゆー!」
繰り出される攻撃を避けながらVサインをするアタシ。攻撃が来る前に攻撃の届かない範囲に移動し、尻尾や爪をやり過ごす。ソロだからできる戦法ね。いくつか避け切れないけど、回避率の高さもあって問題ないわ。
範囲の広い【ドラゴントランプル】と【
「まさ、か……それで100秒間逃げ切るつもりか!?」
「よーやく気付いたの? 気づくの遅すぎー。ばっかじゃない?」
【アンシーン・ダガー】で回避率がアップする時間は5秒。その度に【貴方を買う】を使ってニンジャにお金を払ってアビリティを使用。100秒でお金が約
「いや、その! 魔王を金の力と毒で殺すとか、それありか!? 魔王との戦いは普通勇気とか希望とか友情とか愛とか覚醒した力とか、そう言うので決着をつけるもんじゃないのか!?」
アタシのやり方に不満があるのか、必死になる厨二悪魔。鼻で笑うわ。
「ラノベとかマンガの見過ぎじゃない? 妄想おつー。
闘いなんて勝てばいいのよ。そんなこともわからないなんて、頭悪いんじゃないの? ざーこざこ。ざっこ悪魔」
「…………っ!? こ、こ、この、この、このおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
うわ、顔真っ赤にして地団駄踏んでる。いい気味。心の中でほくそ笑む。そのまま避けて避けて避け続けて――そして100秒後。
「おのれ、覚えておるのじゃぞー! ばーかばーか!」
魔王はスリップダメージで力尽き、厨二悪魔はアタシが予想した通りのセリフを吐いて逃げるように消えていったわ。
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