20:メスガキは新しい服を堪能する
「あふ……」
ベッドの中で下着姿で目覚めたアタシ。寝巻は丁寧にたたまれている。
「よく寝た……のかな? ちょっと気怠い」
のそのそとベットから起き上がり目をこする。昨日は一日中採寸されて、もう面倒だから服着ないでベッドに入ったのだ。予想通り、寝ているときも何度か起こされておねーさんに採寸された。
そのせいもあってか、ちょっと寝不足。またおねーさんが飛び込んできそうだから服も着ずに、ベッドから出る。
「完成しましたよトーカさん! ほぶぁ! 寝起きの下着姿幼女……!? 誰にも汚されていない美しき花園。無限の可能性を秘めた永劫回帰の始まり! ああ、もう思い残すことはない……」
ベッドから出た時におねーさんが入ってきて、いきなりぶっ倒れた。
「いやおねーさん。昨日さんざんアタシのこと採寸したじゃない。下着姿で。なんでそうなるのよ」
「ふふふ、すべてを凌駕する幼き者の魅力。不思議でも何でもないのです……ああ、
「いやわかんないから」
「とりあえず何か服を着てください、トーカさん」
聖女ちゃんのツッコミ(?)を受けて、服を着るアタシ。そして5分ぐらいして起き上がるおねーさん。
「失礼しました。服が完成したので、お知らせに。細かな調整は必要でしょうが」
咳払いしながらそういうおねーさん。服の数を確認する。うん、ばっちり。
「すごいわね。全部『高品質』の出来じゃない」
高品質。ゲーム的に言えばスキル判定で大成功を出して生まれる品物だ。アタシで言うクリティカルヒットみたいなものである。運要素があるが、技量を高めれば確率は上がる。
「ええ。がんばりました。何せトーカさんの命を守るお召し物です。手は抜けません」
「さすがですね。職人魂を感じます」
感心する聖女ちゃん。
「それでその、ここで着ていただけませんでしょうか? 服は着てもらってこその服。かわいいトーカさんがかわいい服を着て、その姿を見ると幼女養分が回復して、はふぅ! 想像しただけでワタクシ、ハヒュ!」
「さすがおねーさん。ブレないわね」
感心するアタシ。
でもまあ、着る分にはいいかな。出発まで時間はあるし。
「そんじゃおねーさんの期待に応えてあげるわ」
言ってアタシは【早着替え】で服を着替える。
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★アイテム
アイテム名:エレキロッカー
属性:服(高品質)
装備条件:ジョブレベル15以上
耐久:+15 抵抗:+15 <耐性>雷属性:50% <弱点>土属性:50%
解説:パンクでロックな衣装。派手に決めるぜ!
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まずは雷属性耐性服。現実世界で言うロックミュージシャンのような服だ。稲妻のギザギザが刻まれたレザージャケットと赤いズボン。エレキギターとか持てばそれなりにかっこいいかも。
「エキセントリック! 時代に逆らう音楽を奏でる幼き子供! 大人の反逆を歌うのはいつだって未来を持つ可能性! ならばこの服をきたトーカさんは時代を変える改革者! ああ、派手に歌ってほしい……!」
いや、アタシ歌とか歌えないからね。アビリティもないからギターも弾けないし。
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★アイテム
アイテム名:モールローブ
属性:服(高品質)
装備条件:ジョブレベル15以上
耐久:+15 抵抗:+15 <耐性>土属性:50% <弱点>光属性:50%
解説:モグラを模したローブ。
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んでもって、土属性耐性服。体をすっぽり覆うローブね。頭の部分がモグラの顔だったり、攻撃力はないけど腕の部分に爪っぽいのがあったり。色は茶色と地味だけど、ゆるキャラっぽくて愛嬌があるわね。
「ブレッシング! ブカブカローブを着た幼女に祝福あれ! 小さな体に大きなローブ! 誰もが夢見る子供の姿! ゆるく可愛いモグラの服を着た可愛い子供。カワイイが可愛くカワユイのでいいのです!」
可愛いがゲシュタルト崩壊してるわねー。
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★アイテム
アイテム名:シスター服
属性:服(高品質)
装備条件:ジョブレベル15以上
耐久:+15 抵抗:+15 <耐性>光属性:50% <弱点>闇属性:50%
解説:神に仕える修道女の服
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そして光属性耐性服。紺を基調とした衣服と頭巾。胸に下げているのは、この世界の神の聖印。足元までのスカートが少しうっとうしいけど、サイズを調整してくれたのか動くにそん色はない。
「ホーリー! 貞淑さを前面に出した神の子供! コトネさんとは異なる清楚さを出し、それでいて元気のいいトーカさんを損なわない! ああ、神は何故小さい子を成長させるのですか? 時よとまれ、永遠に!」
なんか行き着くところまで言ったおねーさん。そこまで子供が好きなんだ。
「炎と水と闇の耐性服はもう持ってるから、とりあえずはこれだけね」
炎耐性はドレスの彼岸花。水耐性はフロッガーハット。闇耐性はキョンシー服。これでナタの6属性攻撃は全部ストップできる。
「あれ? まだ服はありますよ」
「こっちは城に着くまでの兵士対策と、ナタ本人への対策よ。両方ともドレスだけど、見る?」
「ふふふ。インスピレーションあふれる注文でしたよ。これまで作った中で、最高のドレスになりました」
余った包みを見て聖女ちゃんが首をかしげる。おねーさんは満足した笑みを浮かべて倒れたまま親指を立てた。なんで倒れてるかって、服を着替えるたびに悶えて大声で盛んで床を転がりまわっているからだ。痙攣して、満足そうな笑みを浮かべている。
「――これは」
「パンチが聞いてるでしょ?」
「……ええ。トーカさんの事ですから実用性優先で選んだんでしょうけど、これは」
ドレスを見て、聖女ちゃんは驚いた声をあげる。アタシは笑みを浮かべてそう言い返した。実際、聖女ちゃんの言うように実利優先で頼んだドレスだ。
「おはおはー。いやー、兵士の数多すぎ! アミーちゃん、全員にサインするの大変だったよ。とほほとほほー」
ドアをノックして、アイドルさんが入ってくる。戦った後なのか、ちょっとボロボロになっている。
「何やってたの、アンタ?」
「実は実は、アミーちゃんは夜の間に兵士達にライブをしてきたのだ! 四種妖精が夜に映える! 全員相手してたらこんな時間になっちゃった。てへてへ」
「ライブって……要するに戦ってたってこと?」
「いえすいえす! この場所がばれないように離れた場所で派手にどったんばったん! 全曲フルコーラスで頑張ってました。いえいいえい!」
アイドルさんはアイドルさんでいろいろやっていたみたいだ。それがなかったら、もしかしたらこの場所がばれて捕まっていたかもしれない。
「――でも一番の理由は目立ちたかったからでしょ?」
「だからだからー、アミーちゃんはキラキラしたいの! ぶーぶー」
相変わらず訳のわかんない理由である。
「まあいいわ。ちょっと休んだら出撃よ。作戦は――」
アタシはここにいる人達に作戦を告げる。ナタの強さに応じて臨機応変に対応するつもりだけど、基本はこの流れだ。
「はい。がんばりましょう」
「微力ながら、お手伝いさせていただきます」
「うんうん。問題ナッシング! アミーちゃんも頑張るぞいぞい!」
了承を得た後で、ラクアンオバサンにこのことを伝える。オバサンは『無理だと判断したら逃げてきなさい。できるだけのサポートはするから』と言ってくれた。
ひと眠りしたおねーさんとアイドルさんが目覚める。時刻は正午。お日様が真上から照っている。
面倒だけど、やりますか。
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