3:メスガキはいろいろ話を聞く
イベントの内容を聞くと、簡単な物作り系お使いクエストだったわ。
「ラクアンの街を守っているナタ様が『蓬莱の玉の枝』『火鼠の皮衣』『仏の御石の鉢』『龍の首の珠』『燕の子安貝』の五つのお宝を所望していまして」
ラクアンというのはヤーシャから少し行ったところにある町ね。モンスターが支配する区域との境に位置する町で、同時にヤーシャとの国境になる場所。で、ナタ様っていうのはそこで戦う戦士らしい。
「『封神演技』の哪吒は
「それってモンスターじゃないの?」
「ナタ様はそんな姿はしていません! 亜麻色の髪に炎の槍。紅顔の美少年とはまさにあの姿! 幼いながらも赤き炎槍を振るい戦う姿はもう……ごひいいいいいい!」
テーブルの上で悶えるテーラーおねーさんを冷めた目で見ながら、聞いた話を脳内でまとめる。言ってもそんなに大したことじゃない。
ざっくり言うとナタっていう戦士のNPCが強くなるために五つのアイテムを求めていて、アイテムを渡すと経験点とかトロフィーがもらえるといった感じね。
生産系キャラはこういったものを作ったり渡したりで経験点がもらえたりトロフィーがもらえるわ。聖女ちゃんの癒し数に似た生産数によって得られるトロフィーや、特定のイベントクリアの報酬トロフィーよ。
「にしても『火鼠の皮衣』とか難易度高くない? 前提【ドレス作製】で、作製アイテムとかもいるんじゃなかったっけ?」
「抜かりはありません。『針子』系のトロフィーは『アラクネー』まで習得済みです」
おねーさんが言っている『針子』系というのが、生産数によって得られるトロフィーよ。スキルポイントに加え、服生産の成功率も上げるわ。その最上位が『アラクネー』ね。服系生産の成功数100000と大成功500とかいうバカみたいな条件だったはず。
「うわ。ガチに服作ってるわね」
「むしろそれしかできなくて……戦闘はほぼ不意打ちしたり逃げたりです。お恥ずかしい限りで」
「よくそれで火鼠倒そうと思ったわね。あれレベル80よ」
「ひえええええ、そうだったんですか!? ネズミと聞いていたんでそんなに強くないものかと……」
言いたくないけど、第二区域の牛頭馬頭を突破できない強さなら、難しいだろう。火属性に対してガチ対策をもっていけば何とかなるけど。
「80……オーガキングと同じぐらいの強さなんですね」
「そうよ。オーガキングは体力と物理特化。火鼠は炎攻撃や速度で攻めてくるからうまく追い込めればあの脳筋よりは楽勝よ。アタシ達もレベル上がってるし装備も充実したから、ヨユーね」
オーガキングとの戦いを思い出した聖女ちゃんが緊張した表情を浮かべるけど、別にそんなことはない。念のために装備を整えていけば、先ず負けることはないわ。
「問題はテーラーお姉さんをそこまで護衛しないといけないことよね」
「? ソレイユさんを連れて行かないといけないんですか?」
「はい。三暗の第三区域は専用の通行書がないと入れないんです」
あのダンジョンはちょっと面倒な構造になっていて、第二区域までは普通に行けるけど、第三区域はNPCの門番が守っている。おねーさんの言うように、通行書を持っていないと通れないのだ。で、何が面倒かってその通行書を得るイベント。それをクリアしないともらえないんだけど……。
「面倒なのよね、あのクエスト。『我が国に貢献せよ』とか言われて、鉱山で岩系モンスターを500体倒さないといけないのよ。んなもんやってらんないわ。おねーさんが通行書持ってるなら、それ使うほうが楽なのよ」
「ワタクシは服を5000着作ってクリアしました」
「ああ、生産系はそのやり方があったわね」
とにかくヤーシャのために働かされるクエストよ。で、通行書自体は他人に譲渡もできないアイテムなので、おねーさんについてきてもらうしかないのだ。
「ですけどソレイユさんはあまり戦えないようですし、危険じゃありませんか?」
「んー。そこは聖女ちゃんタンクの見せ所ね」
「なななななんとぉ! 清く正しく美しい乙女のコトネさんに守ってもらえるだなんて、ワタクシ感激……。ああ、ダメ大人を守る少女にときめいてしまいます……!」
「ほら。本人もそれでいいって言ってるし」
「少し違うような気もしますが……」
アタシもそう思うけど、面倒なイベントをこなすのもヤなんでスルー。
「あ、一応聞くけどおねーさん何ができるの? 隠れたり逃げたりとか言ってたけど攻撃手段なし?」
「はい。攻撃手段はありますがキョンシーと一対一で何とか勝てる程度で……あ、ステータス見ます?」
隠すほどでもありませんので、ということであっさりとステータスを見せてくれた。
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★ソレイユ・クシャン
ジョブ:テーラー/ダンサー
Lv:50
HP:90/90
MP:61/61
筋力:25(+30)
耐久:20(+45)
魔力:19
抵抗:17(+45)
敏捷:45
幸運:29
★装備
マジカルマフラー(ハイクオリティ)
パリィマント(ハイクオリティ)
カモフラクローク(ハイクオリティ)
★ジョブスキル(スキルポイント:0)
【裁縫術】:Lv6
【コーデ】:Lv6
サブジョブ
【踊り子】:Lv2
★アビリティ
【服作製】:常時発動
【品質上昇】:常時発動
【ドレス作製】:常時発動
【カワイイは正義!】:MP3消費
【光の演出】:MP10消費
【ランウェイ】:MP30消費
サブジョブ
【布武器装備】:常時発動
★トロフィー
『一人前の針子』『夢紡ぐ糸』『アラクネー』
『依頼達成:港町の歌姫』『依頼達成:花売りの少女』『依頼達成:孤児院の劇団』『依頼達成:翼の生えた少年』
『英雄の第一歩』『駆け出し英雄』
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構成はおおむね純粋テーラーって感じね。ダンサーも【布武器装備】の為にとった感じかな。
【服作製】【ドレス作製】は服やドレスを作れるコマンドができて、それで服を作れるわ。【布武器装備】はマフラーとかで戦えるの。打点は低いけどバステ与えたりするタイプね。で、【品質上昇】を取ると(ハイクオリティ)が付く服を作れるようになるわ。各種の装備修正ががっつり上がるし、高く売れるようになるの。
【コーデ】は服装備をしている人のバフ系ね。アタシも持ってる【カワイイは正義!】や、ヘイトを集める【光の演出】、あと【カワイイは正義】の効果を味方複数に与える【ランウェイ】。アタシ達のパーティにマッチするバッファーだわ。
服を黙々と作ってこのレベルに達したのだから、大したもんよ。
「結構すごくない? かなり服作ったんじゃないの、これ?」
「はい。毎日毎日頑張りました。最初は動物の皮をはいで服を作り、どうにかお金を作って布を買ってハンカチを作り……ハイクオリティ品が作れるようになってからは何とか余裕もできましたが」
「苦労なさったんですね」
「いえいえ。かわいい子供が奇麗な服を着ているを見ているだけで、もう、ひへ、苦労なんて吹き飛び、フヒヒヒヒ!」
変なお薬やってるみたいに笑いだすおねーさん。いろいろ怖い。
「……一応聞くけど、子供にべたべた触ったり誘拐して閉じ込めたりとかしてないわよね? お巡りさん呼ぶわよ」
「してません! 子供は遠くから愛でるもの。ワタクシのような大人が触れて汚すなどもってのほか。野に咲く花は触れぬのが掟なのです! イエスロリータノータッチ!」
両手を交差させてバツを作り、強い口調で否定するおねーさん。うん、まあ、子供好きで怖い嗜好なのを否定しないのが正直と言えば正直なのかな?
「じゃあ炎対策の準備して、今日は寝ましょう。おねーさんもいろいろ働いてもらうわ」
「もちろんです。むしろお二人の戦うお姿を間近で見れるなんてご褒美! ああ、想像しただけで、コヒュ! 息、息が途切れ、ハフュ!」
「本当に大丈夫なんでしょうか?」
……アタシも少し不安になってきたわ。
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