クズジョブの遊び人に転生したメスガキは、ゲーム知識で成り上がる! ~あは、こんなことも知らなかっただなんて、この世界のヒトたち頭悪いんじゃない? ざこざーこ。
29:メスガキは19999回暗黒騎士を倒す
29:メスガキは19999回暗黒騎士を倒す
「ぐおおおおおおおおお!」
完全に黒の鎧に身を包む天騎士おにーさん。そしてアタシに向けて刃を向ける。
「アサギリ・トーカ! 貴様に正義を叩き込んでやる!」
それは数分前の再来だ。このままアタシを殺さず何度も切り刻み、精神が折れるまで痛みを与え続ける。きっと逃げても隠れても追ってくる。それまでにいろいろ殺して、奪って、アタシが絶望するまで続けられる。
だけどもうそんなことはない。さっきまでと違うことが一つだけある。
今のアタシにはお金がある。天騎士おにーさんとトレードして得たお金。
よーするに、準備万端てことよ!
「トーカさん!」
「大丈夫。アタシに任せなさい。これ終わったら、アンタの装備買いに行くからね」
心配そうに声をかける聖女ちゃんにウィンク一つするアタシ。勝ち確になったので、余裕しゃくしゃくのアタシ。
だた、唯一の懸念はあった。それをどうにか乗り切れるかどうかは、アタシの頑張り次第だ。気合い入れないとね。
「んじゃ、れべるあーっぷ!」
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★ジョブスキル(スキルポイント:45)
【笑う】:Lv6
【着る】:Lv6
【買う】:Lv4
【遊ぶ】:Lv4→Lv6
【食う】:Lv4
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スキルポイント55点使って【遊ぶ】を6まで上げるわ。……またレア狩り用のアビリティ獲得がが遠のいていく……。仕方ないけど、仕方ないんだけどぉ!
「んうっ、ふっ、にゃぅ!? きゃふ、あう、んっ!」
くすぐったいようなむずむずとするような奇妙な感覚が全身を包んでいく。どうすればいいのかわからない。そんな状況にただただ身をひねることしかできない。自分の内側を抉られる感触に身体を震わせ、熱い棒で突き上げられるような感覚に壊れそうになる。いっそこのまま壊れてしまいたいほどぐちゃぐちゃにかき混ぜられる錯覚。
「あわわわわわわ。見せませんからね、あなたには!」
聖女ちゃんが慌てた様子でアタシと暗黒騎士の間に割って入って視線を遮断する。その聖女ちゃん自身もアタシの声と様子を見て耳まで顔を赤らめていた。そんだけ恥ずかしい状況なんだろう、今のアタシは。……うん、それを自覚させられてちょっと恥ずかしくなった。
ともあれ、アビリティゲットよ!
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★アビリティ
【カード装備】:カードを支配するものは世界を制する。『武器:カード』が装備可能になる。常時発動。
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専門装備が可能になるアビリティね。カードを持っていないと意味がないんで、当然購入。【デリバリー】を使って購入するわ。……値段が高いから、二割増しが地味にきついけど……!
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★アイテム
アイテム名:マジカルカード
属性:カード
装備条件:【カード装備】習得
解説:魔法により加工されたカード。とある条件を満たすと……?
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能力補正も属性も何もない50枚ほどのカード1デッキ。攻撃しても1点しかダメージを与えられない飛び道具。だけどこの真価はダメージ量とかじゃない。急いで装備するアタシ。
このゲームの仕様上、モンスターにターゲットされたら装備変更できないというのがあるけど、聖女ちゃんが暗黒騎士からの射線防いでくれてるおかげで装備変更できた。マジ感謝するわ。
「もう大丈夫よ。見てなさい。アタシのカードさばきを!」
ついでに【早着替え】でバニースーツに着替える。あんまり意味はないんだけど、気分だ。ぶっちゃけ、このカードだけで事足りる。
「アサギリ・トーカ、わが正義の炎を――」
「えいっ」
暗黒騎士が攻撃を開始するより早く、アタシはカードを投げる。アビリティも何も使わないただの攻撃。魔法で加工されたカードは折れることなく鎧に突き刺さるが、それだけだ。HPに1点だけダメージを与える。
「――受けるがいい!」
暗黒騎士が攻撃に移る。
だけど、その時すでに決着はついていた。
カードの刺さった場所からヒビが入り、崩壊していく暗黒騎士の鎧。わずか1点のダメージ。HP10000を9999にしただけの変化。たったそれだけで、アタシの勝ちだ。
「4カード! 相手は死ぬわ」
このマジカルカードの真価は攻撃力や属性じゃない。攻撃後の相手のHPに依存して効果を発揮する特殊効果よ。
HPの下一桁と二桁めが同じならワンペアで防御無視のレベルの10倍分ダメージ。三つ同じ数字が並べば3カードでレベル33倍ダメージ。数字が順に三つ以上並べばストレートでレベル50ダメージが入る。
そして4カードだと相手は即死する。4は死の数とかなんとかそういう意味でそんな効果だ。ボスだろうが何だろうがお構いなしに即死させる。唯一の難点は、この即死で倒した相手からは経験点が入らないことね。
「ば……ばかなぁあああああああああ!?」
絶叫を上げて霧散していく黒の鎧。
いやー、ひっどいもんよね。このおかげでボスのHPは10000とかきっちりした数字じゃなくなったし。暗黒騎士ぐらいよ、これが役立つの。あとの役は狙って出すのは難しいし。
「んじゃまあ、暗黒騎士狩り行くわよ。リアルの<フルムーンケイオス>だと、さすがに自重したけど、20000回分の報酬品いただくからね!」
一回倒すごとにかなりの報酬がもらえたレイドバトル。それが20000回分独り占めできるのだ。もう美味しいったらありゃしない。
「おのれアサギリ・トーカ! だが同じ手が何度も通じると思うなよ!」
「ほいっ」
「うがああああああああああ! だが、この程度ではまだ終わらぬぞ!」
「早く復活してねー」
「次は負けぬぞアサギリ・トーカ! 私は復活をあと――」
「よっと」
「ぐふぅ……! だが光ある限り、闇は在る。朝ある限り、夜は来る。故に我が身は――」
「このセリフ言ってる間が暇なのよねー。タップして早送りとかできないかしら」
問題があるとすれば、20000回という数。それが
これが唯一の懸念だった。あと何回ぐらいあるの?
「これは……卑怯って言われても文句は言えないと思います」
そんな様子を見てた聖女ちゃんが、呆れた口調で言う。カラクリを説明されて肩を落としていた。
「しょーがないでしょ。そういう仕様なんだから。あ、復活した。ほい」
「おのれアサギリうぐわあああああああああ!」
「私、町のほうを見てきます。影の狼が暴れてるかもしれませんし」
「気を付けてねー。あ、よいしょっと」
「おのれぐぎゃあああああああ!」
やることがなくなったこともあり、聖女ちゃんは街の様子を見に行く。何かあったらフレンドチャットで知らせてもらえる。ぶっちゃけ、今のレベル的にもそこまで危機は感じない。
そしてこっちは延々とカードを投げる。魔法の効果なのか、投げたカードは自動で手元に戻ってくる。自動命中効果というのもあって、狙う必要もない。相手を意識してカードを投げれば、それだけで命中するわ。
いやそれはいいんだけど、あとどれぐらいかかるんだろう? ……考えたくないけど、計算してみる。2秒で1回倒せたとして、1分で30回。1時間で1800回。それを10倍して10時間で18000回だから……。
「ほぼ一日近く!? 飽きるヤダー!」
先の長さを知り、アタシは泣きながらカードを投げ続ける。さっきまでのやる気はもう折れた。作業とばかりに心を虚無にする。ホントもう何なのよこれー。
……………………。
………………。
…………。
……。
「わが闇を払うとは……英雄よ、善き戦いであった」
「もー、やだ。つかれたぁ……」
全部が終わった時には、アタシは気力が尽きて地面に突っ伏していた。
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