クズジョブの遊び人に転生したメスガキは、ゲーム知識で成り上がる! ~あは、こんなことも知らなかっただなんて、この世界のヒトたち頭悪いんじゃない? ざこざーこ。
19:メスガキはサブジョブイベントをクリアする
19:メスガキはサブジョブイベントをクリアする
天騎士おにーさんとの勝負は三日後。その前にいろいろやることがあった。それは――
「サブジョブ?」
岩山を進みながら、聖女ちゃんに説明するアタシ。出てくるモンスターは全部スルー。どうしようもない場合は【ハロウィンナイト】&プリスティンククロークのコンボで倒して通過する。
「そう。レベルが50になったらメインジョブとは別に、もう一つジョブが増やせるわ。そのためのクエストをクリアするために、この山を越えたところにあるヤーシャに向かってるのよ」
「そのサブジョブが増えると、どうなるんです?」
「そのジョブカテゴリ内のスキル枠を二個選択して習得できるわ」
各ジョブにはジョブスキルが5個ある。例えば遊び人の場合ジョブスキルは【笑う】【着る】【買う】【食う】【遊ぶ】だ。聖女の場合は【聖魔法】【聖歌】【聖言】【聖武器】【聖人】である。
で、サブジョブを選ぶとその五つの中から二つを選択して習得できるようになる。ジョブスキルを一定数上げれば新たなアビリティを得られるので、その分強くなる……んだけど、それだけスキルポイントも必要になるのだ。
「ええと、じゃああの天騎士ルークさんは、天騎士から5つと祝福者でしたっけ? そこから2つのジョブスキルがあるわけですね」
「そうそう。言っても現実的にはスキルポイントの関係上、サブジョブで取れるのは一つってところね」
<フルムーンケイオス>でも、このサブジョブのおかげでスキルポイント不足に悩む人は多かった。なので大半の人はメインジョブから三つ。サブジョブでつまみ食い程度に一つといった感じになる。
「聖女は大器晩成で、スキルポイントに余裕がないと聞きましたけど、別のスキルを取って大丈夫でしょうか?」
「そうね。聖女ちゃんはそんなに余裕ないかな。一つをジョブレベル2にして、初期アビリティをもらって終わりになるわ」
サブジョブは、本当に補強程度の強さだ。一点特化型な育成の場合、選択しない人もいる。遊び人みたいなジョブレベルを上げやすいジョブ用ね。アタシもそこまで余裕はないけど。
「まあ、アンタも本来なら取らなくていいんだけど……タンクやるなら持っといたほうがいいアビリティがあるのよ。それを取ってもらうわ」
「はい。それがさっき説明していただいたウィッチジョブの【使い魔】ですね。……聖女なのに魔女というのは少し引っかかるのですが」
「よくわかんないけど、問題はないから」
ジョブの説明をした時『宗教的に相反するんですけど……いえ、あくまで元の世界での話ですのでこの世界では違うんでしょうけど』とか少しもにょってた聖女ちゃん。アタシはよくわからないけど、色々混ぜたら危険なものらしい。
「さあ、ヤーシャに着いたわよ。さくっとクエストこなしてサブジョブに目覚めるわ!」
ヤーシャ。チャイナっぽい感じの町だ。この近辺の敵も中国っぽい敵で、ダンジョンも中国な龍とか、チャイナ服着た格闘家とか出てきたりする。いろいろ回りたい店やダンジョンがあるけど、時間がないからスルー。
そしてヤーシャの端っこにあるお寺に入る。巻物の山が積まれた中に、ハゲヒゲマッチョな坊さんがいる。こいつがサブジョブ覚醒イベントのNPCサンゾーだ。
「サンゾー……名前だけなら西遊記の玄奘三蔵を想起させるんですけど……これは何というか、濃い外見ですね」
「気にしたら負けよ。そんじゃ、始めましょうか」
「そんな簡単にできるものなんですか?」
「簡単簡単。心技体の三つの試練をクリアすればいいだけだから」
要するに三つのミニゲームをクリアするだけだ。心はクイズ。技はコマンド入力。体は連打。失敗してもやり直しは効くので、成功するまでやればいいのだ。
「ワシがサンゾーである!
む、汝らは新たな領域に目覚めることができるな。つらい修行になるが、その力覚醒させてみるつもりはないか?」
「いいわよ。ばーんときなさい」
OKサインを出すアタシ。聖女ちゃんもうなずいた。
「では汝らの心技体を図る! まずは心。すなわち精神と頭脳だ!」
覚醒イベントNPCのセリフね。この後は<フルムーンケイオス>の歴史や地名にちなんだクイズが出てくるわ。とーぜん、全部記憶済みっ! 余裕なんだから――
「
「そ、そもさん? はい?」
こんなセリフだったっけ?
「1がOであり、2がWであり、3はRである。ならば4は如何に?」
「は? え、なにそれ!?」
えー、なに言ってるのよこの坊さん。そんなクイズ<フルムーンケイオス>で出さなかったじゃないのよー。
「Rですね」
動転するアタシの横で、あっさり答える聖女ちゃん。
「
「見事である」
「何よそのひらめきクイズ。そんなの<フルムーンケイオス>と関係ないじゃないの」
っていうかこの世界英語あるの? いや、会話も日本語なんだし、アビリティとかステータスとか英語なんだからそこを問うのは今更なんだけど。
「何を言っているのかわからぬが、心の試練は精神と頭脳の試練。拙僧の言葉は汝らの魂に届くと同時に『少し知恵を絞ればわかる問題』になる。汝らの答えも拙僧に届くと同時に変換され、問いが正しいか否かをわが魂が判断するのだ」
わけわかんないこと言ってるけど、要するにゲームとは違う仕様のようだ。
「続けて
「今度はそういう方向性なの!?」
「85909560ですね」
「そしてアンタは何で即座に答えれるのよ!? おかしくない!」
……以下五問ほど、ずっと聖女ちゃんが答えてくれたわ。あー、もう。
「以上、心の試練を終了する!」
「思ったよりも簡単で助かりました」
「うう……。アタシが出る幕じゃないってことね。うん」
ちょっと悔し涙を流しながら、アタシはそう言い放つ。まあ、こういうこともあるわよ。
「では次に技の試練! 指示通りに体を動かし――」
「今度は華麗に決めてあげるわ、コマンドは記憶しているんだから」
「――拙僧の攻撃をよけ続けるのだ! 右ぃ!」
……は?
サンゾーが拳を突き出し、そこから魔力なんだか気なんだかよくわからないエネルギーが飛んでくる。当たるといろいろやばそうなエフェクトだ。とっさに右に避けるけど、え? そういう試練なの?
「くっくっく。うまく避けたなぁ。しかし次はどうだ! 左!」
「うひゃああ!」
「下ぁ! 右右左ぃ! しゃがめぇ! そしてはいつくばって逃げろぉ!」
「ちょ、早すぎ、コマンド入力ってこういう感じなの!?」
破壊光線飛び交う寺の中、アタシ達はサンゾーの指示通りに動き回る。なんかこの坊さんハッピートリガー気味なんですけどぉ!?
「ちぃ……全部避けたかぁ」
「何舌打ちしてるのよこのハゲ!」
「避ける方向を指示してくれたので親切なのでは?」
「だからなんでアンタは冷静なのよ」
なんかいい汗かいた、って言いたげな聖女ちゃん。
なまじ<フルムーンケイオス>の仕様を知っているがために、このイベント内容に驚かされてばかりである。むしろ知らないで受けたほうがよかったんじゃないの、これ?
「これで技の試練を終了する。最後は体の試練だ!」
「もう嫌な予感しかしないわ……」
「全身全霊をもって、この岩を叩くがいい!」
アタシたちの前に用意されたのは、アタシと同じ高さほどある岩だ。……うん、これを叩いて壊せってことね。連打すればクリア、っていうのはこういう形になるんだぁ……。
「この岩は汝らの強さに応じて硬度が変わる岩だ。体力が尽きるまで叩けば、必ず壊れる! あきらめずに、すべての体力を叩き込むのだぁ!」
「ということみたいですので。とりあえず頑張りましょう」
「……何なのよ、この熱血少年漫画っぽいノリは……」
もう文句を言う気力もないアタシは、黙々と岩を叩き続ける。こぶしが痛くならなかったりアタシの攻撃でもヒビが入っていくのは、そういうファンタジー仕様なんだろう。そしていつしか気を失い――
「見事だ、汝らは新たな力に目覚めた! その力をもって、さらなる道を進むがいい!」
<イベントクリア! サブジョブが獲得可能になりました! ステータス画面から好きなジョブを選んでください>
<条件達成! トロフィー:『第二の力』を獲得しました。スキルポイントを会得しました>
消えゆく意識の中、サンゾーのクソうざったい熱血おっさんボイスと、システム的な声がアタシの脳内に響いていた。
もー、体育会系には近づかないわ……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます