12:メスガキは駄犬を跪かせる
ポーションの数が残り少ない。そのことを確認した後で、アタシはオーガキングのHPを確認する。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
名前:オーガキング
種族:幻獣(ボス属性)
Lv:83
HP:702
解説:人を喰らう巨人族を力で束ねるオーガの覇王。その力は圧倒的。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
これまでの攻防で、HPを半分ほど削っている。薄氷を踏むような戦術で、出来るだけ速攻を心がけて、だ。焦って強硬策に出ればオーガキングのパワーにカウンターを喰らい、しかし時間をかければ素の能力で押し切られる。
この戦術が成立するのは、アイテムでHPとMPが維持できるという前提だ。聖女ちゃんのポーションが尽きれば、戦術は成り立たなくなる。あとはオーガキングの棍棒で殴られて、二人まとめてお腹の中だ。
そしてアタシの試算では、オーガキングのHPを削り切るまでにポーションはもたない。あともう少しは削れるけど、そこでお終いだ。アタシの攻撃力では満足に削り切れない。
どうするか。ここで決めなければいけない。
案その1。ここからクリティカルが連発し、バッドステータスも継続し、超ラッキーが続いてオーガキングを倒す。
ないわー。っていうか案って言うかただの願望。楽観視。確かにアタシの戦術はバッドステータスとクリティカルによる運任せの部分があるけど、それでも可能な限り運そのものに寄りかかるつもりはない。
100パーの安全は無理だけど、出来るだけそれに近づけるようにする。少ない勝率を引き寄せるのが戦術で、運任せはただのギャンブルだ。
案その2。何処からともなく謎の援軍とかラノベ主人公が颯爽とやってきて、オーガキングを一刀両断してくれる。
んなこと起きたら逆に指差して笑う。次いこう、次。
案その3。諦めて逃げる。割と現実的で、不可能ではない話だ。帰還用アイテムの『トンボガエリ』を使えばいい。アタシも聖女ちゃん岩山に来る前に買ってきている。
アタシは聖女ちゃんの顔を見て、
『分かりました。トーカさんは逃げてください。私は残ります』
と、この子の性格からいうだろう言葉を先読みした。
うん。アタシはアタシが大事だから最悪逃げるわよ。捕まっている人を助ける義理はないし、助けたいっていうのも聖女ちゃんのワガママだ。アタシがそれに付き合う義理も理由も意味もない。殴られたら痛いんだから、逃げて正解。
……うーん。となると、あれかぁ……。あまり気乗りはしないんだけどなあ。
案その4。アタシは突然新たな力に目覚め、オーガキングを倒す!
具体的にはアビリティ習得ね。【笑う門には福】を取りたかったけど、仕方ないわ。折角レベル80代のボスがいて、倒すチャンスなのだからこれを逃す気はない。
……まあ、捕まってる人も聖女ちゃんが助けたいって言ってるんだし助けてあげないとね。これからも聖女ちゃんをいいように利用するために、アタシの凄さを見せておく必要もあるしね。それだけだからね!
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
★ジョブスキル(スキルポイント:35)
【笑う】:Lv6
【着る】:Lv6
【買う】:Lv4
【遊ぶ】:Lv2→4
【食う】:Lv4
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
【遊ぶ】をレベル4まで一気に上げるわ。本当は【笑う門には福】を取りたかったけど、取りたかったんだけど!
「はぁ、あっ! んや、くうぅ……ふぁああん!」
魂をとろかす甘い毒が体内に染みていく。体が熱く熱くなって少しの刺激で反応してしまう。何度も繰り返された体の改造に順応した肉体は震え、そして魂さえもその刺激に順応していく。調教。目的に応じて教えられること。アタシは色々教えられていく――
「あ、あの、トーカさん、その、あの!」
聖女ちゃんの声で我に返るアタシ。おおっと、やっばい。
取得したのは、これよ。プリスティンククロークをゲットしなかったら、スルーしていたアビリティ。ぶっちゃけ【遊び】グループは取るつもりはなかったんだけどね。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
★アビリティ
【ハロウィンナイト】:皆で仮装タイム! 敵味方問わず、周囲内のキャラクター全員の種族に、指定した種族属性を追加する。MP20消費。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
種族を付与するアビリティよ。例えば人間属性に悪魔属性を追加させて、『種族:人間 悪魔』と言った感じにするわ。特にステータスの数値的な変化はない。これ単体だとただの遊びスキル。
だけどプリスティンククロークは動物属性を持っている相手に追加ダメージが入る。それは追加された属性でも同じ事。このアビリティを使ってオーガキングの種族を『動物』に変化させれば、追加ダメージが入るわ。
「跪きなさい、ぶ・た・さ・ん」
言うと同時に【ハロウィンナイト】を発動させて、攻撃を放つアタシ。プリスティンククロークの動物属性への追加ダメージと、各種トロフィーの追加ダメージがオーガキングのHPを削る。あと<古呪>の効果がのっかって、
「ブヒイイイイイイイイ!」
あ、なんか四つん這いになった。<古呪>の行動不能効果だろう、多分。ちょうどいい位置に顔があるから、頬をビンタしながら攻撃を続ける。
「豚の王様如きがでかいツラしてるいんじゃないわよ」
「スンマセンデシタアアアアア!」
「豚は豚らしく大人しくしてればいいの。群れて人を襲うとか、何様になったつもり?」
「チョウシ、ニ、ノッテマシタア。ゴメンナサイィィィィ!」
ぺしんぺしんと顔をはたきながら言葉を続ける。その度にオーガキングは謝罪を続けた。うんうん、自分の立場がわかればいいのよ。
「ハッ! オレ、ナニヲシテタ!?」
あ、我に返った。じゃなくて<古呪>が解除された。
「オノレニンゲン! アヤシゲナ魔法ヲ!」
「うるさいわよ、犬」
「ワオオオオオオオン!」
でももう一回攻撃して<古呪>のバステを乗っける。うわー、なんだかよくわっかんないけどよくバステが乗るわ。動物属性ってそういう効果あったっけ?
繰り返すけど【ハロウィンナイト】はあくまで種族を追加するだけで、見た目とか強さとか性格は変わらない。プリスティンククロークの追加ダメージはのるけど、それ以外は変わらないはず。何だけど……。
まあ気にしたら負けね。がしがし削っていくわ!
「伏せなさい。ワンちゃん」
「こんな子供に犬扱いされて恥ずかしくないの? ねえ、お・う・さ・ま」
「首輪付けてあげようか? トーカが飼ってあげるー」
言いながら、ちょっとゾクゾクしてきた。落ち着けアタシ。
「じゃあ死になさい。アタシの命令、聞けるわよね」
「キャイイイイイイイン!」
最後の最後まで動物属性に変化したままだったオーガキングは、アタシの一撃で力尽きたのだった。
いやー、プリスティンククロークの動物属性追加ダメージって強いわ。流石レアドレス!
……なんか違う気がするって? トーカ、分かんなーい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます