6:メスガキは育成相談を受ける
「オーガ4体とかマジおいしかったわ」
しばらくしてから起き上がり、アタシはステータスを開く。
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★アサギリ・トーカ
ジョブ:遊び人
Lv:38
HP:61/61
MP:39/39
筋力:14(+3)
耐久:9
魔力:10
抵抗:10
敏捷:17(+5)
幸運:45(+5)
★装備
スネークダガー
バニースーツ
★ジョブスキル(スキルポイント:65)
【笑う】:Lv6
【着る】:Lv6
【買う】:Lv4
【遊ぶ】:Lv2
★アビリティ
【笑顔の交渉】:常時発動
【微笑み返し】:MP1消費
【笑裏蔵刀】:MP10消費
【早着替え】:常時発動
【カワイイは正義】:MP3消費
【ドレス装備】:常時発動
【ツケといて】:常時発動。
【デリバリー】:MP5消費
【パリピ!】:MP3消費。
★トロフィー
『格上殺し』『勇猛果敢』『不可能を覆す者』
『初めてのお友達』『大切な友達』
『英雄の第一歩』『駆け出し英雄』
『ボスキラー:バンディット・ヘッド』『ボスキラー:ガルフェザリガニ』『単独撃破』
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一気に12もレベル上がったもんね。ホント、美味しかったわ。聖女ちゃんも7上がったし、結構なレベリングになったわ。
「んー。スキルポイントはもう少し溜めとこうかな」
現在65あるポイント。レベル6から8にするのは75ポイント(6→7で35。7→8で40)必要になる。そして8レベルのアビリティを得るには、アビリティ数が9になると得られるトロフィーが条件になる。なのでさらにポイントは被つ塔なのだ。
なのでここは使わずに溜めておくのがベスト。【笑う】のレベル8アビリティ【笑う門には福】はレアアイテムのドロップ率増加。これを手にしたら、レアアイテム狩りが始まるわ。
「あの、トーカさん。私はどうしましょうか?」
「どう?」
「その、スキルポイントというのがかなりあるんですけど、このまま【聖歌】のジョブを7にしていんでしょうか? 70も使うみたいなんですけど」
【聖歌】は成長の係数が高い。っていうか『聖女』は全部のスキルが係数10と上げにくいジョブ。遊び人の2倍もポイントが必要なのだ。【聖歌】を7にするにはポイントが70必要になる。
【聖歌】アビリティの回復量やバフの効果アップは、使った人の魔力とジョブレベルに依存する。なので【聖歌】一本伸ばしも悪い選択肢じゃないわ。
っていうか、
「なんでアタシに聞くのよ?」
「すみません。今まで皇子に『【聖歌】と【魔力増加】のみレベルを上げろ』と言われてまして。本当にそれでいいのか、不安になったんです」
あー、そっか。この子今までずっと皇子の言う通りにしてたんだ。
<フルムーンケイオス>のキャラ育成のテンプレは『メイン能力の上昇系と、使うジョブスキルの二点伸ばし』だ。殴る系なら【筋力上昇】とそれ系のアビリティ。防御系なら【耐久上昇】【抵抗上昇】と、防御アビリティ。結構カツカツになるので、他のアビリティは取らない事が多い。
魔力特化聖女なら【聖魔法】と【聖歌】の二本伸ばしが王道だ。【聖魔法】をあげてから、【聖歌】をあげるパターンが王道だ。余裕を見て【魔力上昇】を取ればいい。人によっては【聖魔法】と【魔力上昇】をあげるパターンもある。
「んー。順序逆になったけど、【聖魔法】とるのが王道かな? 回復量も増えるし、聖属性の攻撃もできるから」
「攻撃……うーん……」
攻撃、という単語を聞いて聖女ちゃんは少し眉をひそめた。
「攻撃とか嫌い? 人を傷つけるのが嫌とか、甘いこと言ってたら魔王は倒せないわよ」
「あ、いえ。それは……。確かに人を傷つけたりするのはあまり好きじゃないですけど」
揶揄するようなアタシの言葉に、聖女ちゃんはそう言って深呼吸をした。
「タンク……っていうんですか? 防御して皆を守る事が出来るようになりたいです」
「……は? なんで?」
「さっきも言ったとおり人を傷つけるのが好きじゃないというのもありますけど、誰かを守れるというのは、すごく誇れることなんだなってさっき思ったんです」
今まで言われるままにレベルを上げ、皇子の道具としてその後をついてきた聖女ちゃん。そこに彼女の意思はなく、ただ人形のように動いていた。自由を奪われ、自分を保つことが出来ない状況だった。
そんな彼女が自由を得て冒険に旅立ち、実際に戦って、そして危機を乗り越えて、やりたいことを見つけた。皇子に言われるままに成長するのではなく、自分の道で自分のやりたいことを見つけた。
「や。それは――」
魔力特化のアンタが今更タンクに転向なんて、無理。アタシの言うようにスキルとってればいいのよ。
そう言おうとした瞬間に、
『あの学校に入らないと、アンタの人生終わりだからね! 言う通りに勉強してなさい!』
『子供がつまらない意見なんかするな。先生の言う事を聞いておけばいいんだ』
『お前みたいなガキと違って、こっちは人生を長く生きてるんだ。大人は間違いなんかしないんだよ!』
すんごくどうでもいい記憶がリフレインした。
「それは……ビキニアーマーが気に入ったとか、殴られて気持ちよくなったとかそういう事? ごめん、ヒクわ」
「違います! なんなんですか気持ちよくなるとか……えーと、そう言うアビリティ? があるんですか? 殴られて回復するとか?」
「あ、うん。知らないならいいの」
よかった。そう言う性癖とかに目覚めてなくて。
「でもタンクかー。最大の問題は【聖歌】で歌ってる間はほとんど行動できない事なのよね」
RPGにおけるタンク役はただ立って攻撃を受け止めているだけに見せかけて、かなりやることが多い。
相手の攻撃を一手に引き受ける為のヘイトコントロール。集中攻撃を受けて倒れないだけのHP管理。動き回る仲間から身を守るための立ち位置。その他、不測の時が起きた際の対応策。とにかく、やる事は多いのだ。
ただ防御力を高めて立っているだけでは案山子以下。むしろ『ただ立っているだけで味方を守れる』様にするのが、タンクの理想形よ。水鳥が水面下で足をバタバタさせたりしているとか、そう言う感じ。
で、【聖歌】を使っている間は移動と攻撃、能動的にアイテムやアビリティを使用することができない。途中で【聖歌】を止めれば行動できるけど、そうすると防御力がガタ落ちになってしまう。
「無理ですか……。ごめんなさい。わがままを言って」
「理想形を作るとなるとかなり無理があるわね。確認だけどポイントの問題で【聖魔法】がとれなくなるけど、それでいい? 聖属性の攻撃魔法とかとれないよ」
「え? よくわからないですけど、攻撃とかはあまり好きになれそうにないので」
「悪魔相手に【クルセイド】ぶっかまして、経験点うっはうはドロップがっぽがぽ強い悪魔を蹂躙できる気持ちいいわーいすんごい爽快感、とかできなくなるけどそれでいい?」
「あの、その、よくわからないんですけど、いいです」
【聖魔法】を育てた『聖女』の解放感を身振り手振り込みで教えてあげたのに、ドンビキされるアタシ。納得いかないわ。
「そこまでタンクをやりたいというのならいいわ。アタシがその道かなえてあげるわよ。感謝しなさいよね」
「出来るんですか? でも無理があるっていってましたけど」
「無理も無理。急な路線変更だからね。アタシじゃなかったら匙投げてたわ。
まずは【聖人】のスキルを4にしてもらうわ。スキルポイントはレベル0からだから、100ポイント必要ね。それが最低ラインよ」
「あ、はい。頑張ります!」
こうして、聖女ちゃんのタンクへの道が始まるのであった。
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