25:メスガキはデーモンを倒す
ステータスに『フレンド』のタブが追加され、そこに『イザヨイ・コトネ』が追加された。
その瞬間――
<条件達成! トロフィー:『初めてのお友達』を獲得しました。スキルポイントを会得しました>
そして脳内に響くアナウンス。
……まさか、このトロフィーを取ることになろうとは、ね。
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★トロフィー
はじめてのお友達:フレンド合計が1名になった証。
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説明通りのトロフィーよ。あとはフレンドが10名と100名で新たにトロフィーがもらえる。そんな感じの奴。
友達とかどーでもいいけど、スキルポイント10ポイントがもらえるわ。
「一気に行くわよ! 【着る】レベルアップ!」
今もらったスキルポイントを使って、ジョブレベルを一気に上げるわ。
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★ジョブスキル(スキルポイント:5)
【笑う】:Lv6
【着る】:Lv4→Lv6
【買う】:Lv4
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<【着る】がレベル6になりました。アビリティ【ドレス装備】を獲得しました>
「やっ、やらっ、こんにゃ……し、しびれて……あう♡」
体中を触られ、そこからびりびりと震えるような感覚が全身に広がっていく。何が何だか分からない。何をされているのか理解できない。だけど確かにその感覚がアタシを支配していた。
この感覚に、逆らえなくなっちゃうぅ……。
「……っ、止まってる場合じゃないわね」
真っ白になりそうな意識を取り戻す。時間的には一秒も経ってないんだけどね。
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★アビリティ
【ドレス装備】:一流の遊び人は貴族服も着こなせる。『装備:ドレス』が装備可能になる。【早着替え】【カワイイは正義】の効果が『装備:ドレス』にも適応される。常時発動。
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ドレスは服の上位版。高いけど、その効果も相応に高いわ。
そしていつもの――【デリバリー】! 財布のお金全額使って購入するのは、コイツよ!
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★アイテム
アイテム名:
属性:ドレス
装備条件:東国系ジョブレベル45以上 or 【ドレス装備】習得
耐久:+20 抵抗:+20 即死の確率を30%上昇させる <無効>即死 毒 火
解説:赤と白の彼岸花が描かれた黒の着物。死を纏った東国の正装。
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黒い和服に赤と白の六弁の花装飾。そんなシャラン、とした和服。ドレス、ってイメージから遠いけど、これも立派なドレス。
キモは即死効果増幅と、即死と毒と火を完全無効化する事。また防御効果も結構高く、東国系のジョブレベル45以上という中級者入りレベルの装備ならではの効果。
「トーゼン、【カワイイは正義】!」
どれだけ抵抗と幸運が高かろうが、それを超えるレベルで増幅されたアタシの即死攻撃がデーモンを襲う。
『死神の手』は反動で攻撃と同時に同確率の即死攻撃をアタシに仕掛けるけど、それは沙羅双樹曼殊沙華の即死無効効果で弾けるわ。
「あーんなおにーさんにいいように扱われてる悪魔オジサン、かっこわるーい。
悪魔のくせに人間に使われるとか、プライドあるの?」
「ぐはあああああああ! し、しょうがなかったたんだぁ……!」
あ、なんか赤い涙流して即死した。
うん。アイテム効果よね。決してトーカのセリフが判定にプラスされたとかはない、はず。
「私のデーモンが! ありえない! あんな運だけの攻撃で私のデーモンを倒すだななんて!」
「おい、また運よく勝利かよ! ふざけんな!」
「遊び人は運だけだな!」
「やり直せー!」
「ツルペタ和服ロリ最高!」
「オレも優しく即死タッチされたい!」
傍目に見れば『高確率で死ぬはずのトーカは即死せず、低確率のデーモンの方が即死した』ようにしか見えない。実際そうなんだし、そこに運の要素がなかったかと言われれば、ウソじゃない。
理解しようとしないヒトには理解できないやり取りがあった事なんて、絶対に気付かない。
「えへ、運だけで勝っちゃったー。デーモンよわーい。よわよわっ。
あんな程度で死んじゃうなんて、悪魔ってざーこだったんじゃないの? それに勝てない人とか、ダサすぎー」
だからアタシはそう言う。気付かない人達へ、皮肉を込めて。
挑発はしてみるが、再戦はヤだ。今の攻撃で、デーモンが即死しない可能性もある。そうなったらアタシは殴られてお終いだ。その危険性は間違いなくあった。
それよりも聖職者の服とかを着て悪魔からの攻撃を完全カット。クリティカルでじわじわ削り倒す方が、生存率が高かったのは確かだ。
光とか神聖とかの辺りは聖女ちゃんのキャラだし。キャラがカブんのやだし。
そんな自分でもよくわからない理由で、それは避けた。なんとなくやだ、って程度だけど。まあ、毎回耐性服着ての無敵モードもワンパターンだし。あと着物の方が綺麗だもんね。うんうん、そう言うこと!
「ねえ、もっと強いデーモン呼び出せないの? 皆おにーさんの再チャレンジ、期待してるよ?」
「ぐ……ぐぅ……!」
悪魔使いのおにーさんはアタシの言葉に力尽きるように断念する。もう一回召喚されたら、それはそれでヤババなんだけどさ。
ともあれ、アタシの勝利だ。ブーイングを受けながら、アタシは凱旋した。あーん、ザコの負け犬罵り気っ持ちいいー!
「あーん。バニー服被りもなかったし、ドレスは買えたし。アタシ絶好調!」
兵士NPCに武器を返し、ほくほく顔でケーキをむさぼる。これも【着る】を6ベルまでできたからで――それが出来たのは聖女ちゃんがフレンド申請してくれたからだ。あれが無かったらスキルポイントが足りなかった。
「まあ、お礼ぐらいは言った方がいいわよね」
たかが10ポイントだけど、そのお礼は言わないといけないわよね。別に無視してもいいけど、フレンド登録してくれたお礼とそれで勝てたってことは事実だし。
ステータスウィンドウからフレンド欄に移行し、そこに触れる。相手と繋がったサインがウィンドウに浮かび、マイクのようなアイコンが出てくる。
(ボイスチャットみたいな感覚かな?)
よくわからないので、そのまま話をして見た。
「はーい、アタシ。トーカよ。聖女ちゃんハロー」
『…………とーか、さん? あの、これは一体……?』
頭の中に直接声が届く。てれぱしーとかそんな感じっぽい。
おそらく相手も同じ感覚なんだろう。スマホで話すように会話を続ける。
「フレンド申請してくれたんでしょ? アリガト! フレンド同士はこうやってチャットできるのよ。まー、アタシみたいな遊び人に離すことなんてあまりないでしょうけどね」
『遊び人……。あの、トーカさんは、遊び人? なんですか?』
なんだか会話の内容というか互いの認識がズレている感覚。
色々話した結果『遊び人』を言うのをジョブと認識していなかったようだ。聖女ちゃんの認識では、夜遊びする悪い子的な蔑称だったらしい。
あーうん。ゲームとか知らないとそうなるわよね。
『す、すみません! わたし、その、この世界の事、全然知らなくて。皆さんに迷惑かけて』
「迷惑じゃないわよ。むしろ新鮮で面白かったわ。そりゃ、遊び人てそう思うわよね。実際、アタシもそんな感じだし」
『そ、そうなんですか? 夜は寝ないといけませんよ』
「あー、うん。そうね、そうするわ」
色々冗談の通じない子である。ちょっとふざけた会話しずらい。
「とにかく今日はお礼したかっただけだから。フレンド申請してくれてありがと。なんか困ったことあったら相談に乗るわ。聖女の育成方法とか」
『…………はい。その、まえにいっていた、ことですけど』
話を終わらせようと振った話題に、急に声を硬くする聖女ちゃん。
『……ほんとうに、魔王を倒す聖女になるには、ひとをころさないで、よかったんでしょうか』
聖女ちゃんの表情は解らない。
だけどあの泣いている顔が、アタシの頭をよぎった。
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