第37話 人事を尽くして天命を待つ

こうして、歴史を学びつつ曲作りが完成した。


「これで、私が出来ることは揃いました」


マーリンは執務室でモードレッド、クロウリー、レイモンドに言った。


「決行は早い方が良いと思います」

「そうだな」

「あー、じゃあさ、丁度明後日建国祭があるじゃん?その日にやればいいアピールになるんじゃねぇか」

「建国祭、なるほど」

「だが女、場所はどうする」

「黒の大樹の前が良いかと。近い方が効き目が大きいですから」

「防犯上どうか」

「まぁ、全市民に開放するのは難しいが、貴族や市長、街の有力者あたりに絞れば良いんじゃねえか。公人だから身元調査もしやすいし」


ひっそりとやるはずが、ちょっとしたパフォーマンスになってきた。だが、不信感が募るモードレッドの評判を回復させる意味もあるという。もし失敗したらどうかと思ったが、元々皇帝による神への奉納という名目ということなので、傷は負わないという算段だそうだ。


「わかった」


その日到着したカールおじさん一行に内容を説明し、マーリンは意識を新たにした。


★★★


晩餐の時だった。

その男が、また闇から現れた。そこにはユージーンと、縄で縛られた一人の少女がいた。


「エカテリーナ!!」

「遅れてすまない。ナジェイラの裁判が先だと歌聖が言って聞かなくてな。こいつが、お前の言っていた犯人だ。おい、真実を話せ」


魔力を乗せた言葉で脅され、少女はびくりと体を震わせた。その後堰を切ったように、しゃがれた声で彼女は話し始めた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る