第10話 この国の話

食器が片付けられ(手伝いを申し出たが丁重に断られた)、食後の紅茶を飲んでいるとローズブレード家の人たちが様々な話をしてくれた。


「一番上の子は王都で働いているの!王都の士官学校を首席で卒業した後、騎士として働き始めたんだけど、とっても強くて頭が良いから皇帝様の側近に抜擢されたのよ!」


アリアナおばさんが誇らしげに言った。


「バーナードはこの州の騎士官学校に通っているわ。将来は州軍に入りたいのよね」

「そうとも」


バーナードは腕組みしながら微かに頷いた。


「王都の学校は目指さなかったの?」

「兄貴と違って、俺は生まれ育った土地を守りたいと思っている。それに…今の軟弱な皇帝に仕える気がない」


バーナードは鼻息荒く言った。


「今の皇帝はどんな人なの?」


マーリンは何の気はなしに聞いてみた。それを聞いたカールおじさんは顎に手を当てて少し考えてから言った。


「兄君と年の離れた弟君なんだが、確かに先々代、先代と比べて影は薄い印象はあるな。だが即位してまだ数年だ。これからだろう」

「父さんは甘い。それを言うなら先代だって、即位前からその武が広く知られていたでしょう。ですが今の皇帝に何ができるというのでしょう。聞けば昔から無口で大人しい子供だったと言うじゃないですか」


バーナードは鼻息荒く言った。双子の席から「脳筋」という言葉が聞こえてきたが、彼は聞こえなかったふりをした。ジーンは「男の子ったら」というように、呆れ顔で眉をひそめていた。


「そうかね?私はそうは思わないが…」


カールおじさんは穏やかに言ったが、それ以上は言わず、子供たちについての紹介を続けた。


「サイラスとエドモンドは州都にある服飾専門店で働いているんだ。昔からおしゃれが好きな子たちだったからね…」


双子はニヤリとした。


「俺たち今あそこで修行してるんだ。いつか自分たちの店を持つことが夢さ」

「サイラスとエドモンドのセンスは素晴らしいのよ!若い女の子たちの間でも評判なの」


ジーンが言った。聞けば、双子たちはよく「試作品」を作っては周囲に配っているらしい。そういわれてみれば、二人の容姿は他の人たちに比べておしゃれだった。対してアリアナおばさんの顔を不満げだった。


「えぇ、この子達には才能が有りますとも。ですがね」


双子たちはまたか、というように肩をすくめた。


「ちょっとあなた達の服はちゃらちゃらしすぎだと思うわ?若者だから分からないでしょうが、伝統というものを尊重していないのはとんでもないことよ」

「いいじゃないか…今も昔も時代は若者が作るんだ。大人たちがそれを邪魔してはいけない。さて、話を戻そう。もう聞いているかな?ジーンはウィルの幼馴染なんだ」


ジーンとウィルがにこっと笑った。マーリンは頷いた。


「家はこの地区より格が二つ程下のほうだから、あんまり近くじゃないの。だけど私の両親が医者をやっててね…」

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