仕事前

彼女のポカンとした顔は漫画にでも出てくるような模範的なポカンとした顔で褒めてやりたいが、

「わかったか?」

「いや、全く。」

「ここに居候するなら学校へ行く。それだけだが」

「なんで?」

「学校へ行かないというのはぶっちゃけビミョーだと思う。これからが苦労する。」

これは本心だった。残念ながら、俺の過程は壊滅的で母はギャンブル狂、父は蒸発、祖父母は宗教狂いとなかなかな家庭で育ち師匠に拾われた。そんな中、俺は学校へ行けなかった。きっと高校生の時に体験するであろう、楽しみ、苦しみ、葛藤そのすべてが俺には抜け落ちている。きっとその経験は何よりも大切で、なによりもう取り戻せないものだった。

「学校へは行け、それ以上は何も言わん。」

「まぁー、わかったよ」 

彼女は言った。

「じゃあ、支度しろ。」

というと、彼女はごちそうさまと言って立ち上がり食器をシンクへおいた。彼女のリュックから制服を取り出し、脱衣所で着替えている。

その間にと、俺はパソコンを開く。最近の殺しの依頼はもっぱらパソコンで、どの仕事にもパソコンがついて回るようになった。そんなところに時代の進みを感じる。 

連絡はと、パソコンの画面を見るとHからの連絡があり依頼があったとのことだ。そいつは金髪のガタイのいい男で犯罪のすべてに手を染めたと地元では言われているやつらしい。依頼主はある男で、その彼女が強姦にあい復讐心から連絡したそうだ。

どの時代でも殺しの理由は人のドロドロの心のせいだと師匠はよく口にしていた。

「じゃあ、荷物持ったから行くよー」彼女が玄関から行く。

「何で行くんだ?」

「でんしゃー」

じゃあ、と思い俺は彼女に千円札と俺の電話番号の書いてある紙を渡した。

「行き帰りで足りなかったら連絡しろ」

「ありがと」

彼女は、行ってくると言って出てった。

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