5年目 冬 1/2
みなさんこんにちは。アリスです。
王都でのアリストクラシも終わり、私の初のおのぼりさんも終了しました。
王都では旧工房棟組とも再会出来て、結構楽しかったよ。
そして帰ってきたら――。
文官部屋がゾンビ部屋になってた。
みんな顔色悪くて目もうつろ。
話しかけると、『あぁー』とか『うぅー』とか言ってるし。
即行で、空いてた六階の従者用客室に放り込んで寝かせました。
そして私とソード君は、文官部屋で書類に埋もれた。
たった二日空けただけなのに、文官部屋を王都出発前に戻すのに、ソード君と二人で三日もかかっちゃったよ。
でも、それからの文官さんたちの様子がおかしいの。
ゾンビ化は寝かせたら治ったんだけど、その後が今までと違った。
指示を仰ぐ念話の頻度が少ない。
私が纏めてた資料の内、半数位が纏められた状態で出てくる。
何か表情がキリッとして、黙々と仕事してるの。
心配になってなんでか聞いてみたら、私の仕事をしてみて、子供(私)にどれほどの仕事量を押し付けてたのかと反省したらしい。
第二文官部屋まで作っちゃって各街の文官を一人ずつローテーションさせて招集し、城での事務仕事を教え込んでる。
そして遊撃文官部隊は各街の役所を襲撃(?)し、うちのルールを徹底させてる。
それ、もう少し後で仕事に余裕が出てからやる気だったんだよ?
帰ってきた言葉は、『地獄を見せなきゃ理解しない。徹底的にルールを叩き込む』だって。
なんか文官さんが鬼教官っぽくなってるよ。
このままじゃ社畜戦士が量産されちゃいそう。
この方法が有効なのは分かってたけど、教える負担が増えるから後回しにしてたの。
でも、お城の文官さんが、自ら始めちゃった。
私が考えてたのは、この領の事務処理的な流れを理解させつつ、ゆっくりとルールに慣れさせていくことだった。
でも、お城の文官さんはショック療法を執った。
仕事地獄を経験させ、いかにこれまでがぬるま湯だったかを認識させたの。
この方法だとやり方を受け入れられなくて反発する人が出てくるから避けてたのに、『反発する奴など不要。受け入れて前に進む奴だけ育てる』とか言ってるし。
どこの軍隊だよ。
切羽詰まった状況なら悠長なことは言ってられないんだけど、容赦ないな。
……あれ?そういえば、私も同じようなことを代官に言ってたわ。
私が言うこと聞かない代官にイラついてたように、城の文官さんも編入した街の文官にイラついてたんだね。
結果二人の旧伯爵領の文官が辞めて新人に入れ替わったけど、状況は徐々に改善されて行った。
でも、文官さんには悪いけど、みんな大事な事忘れてない?
一気に各街の事務処理を統一化しようとして、この状況作っちゃったのは私だよ。
確信犯に同情の余地は、あんまし無いよ?
そんな今期の領の財政は、”超赤字”。
なにせ四倍ほどに増えた住民にうちの領民と同じサービスを提供する上に、陸海空プラス家庭用魔道具工場建ててるし、そのための道路敷設もしてる。
財政難で放置気味った河川や道路の補修工事、橋や官舎、診療所の新設なんかもやった。
人件費の増加もごつい。
うちの領では基本給プラス能力給を導入していたので、編入した人たちの給金も能力給分増えた。
そしてうちの兵士さんたちには、出張手当も付いたし能力給に至っては爆上がりした。
自走車や飛翔機操れる兵士はうちにしかいないのに、警備範囲は海上含めたら十倍で利かない。
さらに色んな工事まで爆速で出来ちゃうから、本業の人たち真っ青。
なるべく既存の事業者には影響が出ないように、新規案件の公共工事だけ手掛けてもらったんだけど、件数が半端なかったからね。
兵士のお兄ちゃんなんか、『使う暇が無え!!』って叫びながら仕事してた。
公共事業を既存業者に発注して各街の経済活性化することも考えたんだけど、費用対効果と工期が違い過ぎて無理だった。
だから経済活性化は、各街に新設した工場で担うことにしたんだ。
当然各工場の従業員や警備員、輸送人員も地元で雇った。
結果、人件費もごっつい金額に跳ね上がったんだよ。
各工場は今では製造も安定してかなりの収益を出しつつあるけど、投じた金額を回収するのに何年かかる事やら…。
でも、一つ朗報が。
採掘した金、ちゃんと代金払ってもらえるようになったんだよ。
無茶な要求した元老院には反撃して解体しちゃったし、その末路を見た欲深貴族さんたちもさすがにやばいと思ったのか、
でも、これには裏があるの。
『このままでは辺境伯領がつぶれる。そうなった場合、原因となった辺境伯家への不合理な領地拡大の恩賞を要求した者たちで採掘を担ってもらう』と王様が発言。
そして、カインさんが持ち帰った写像版を見せちゃったの。
欲深さんたちは採掘のための自身の金銭的犠牲を嫌い、公金からの支払いに賛同したそうだ。
相も変わらず欲深な事で…。
軍部も上層部を解体して騎士団の統制下においたし、元老院を解体したことで反王族派の欲深貴族の勢力も激減したからこそ議会で筋を通せるようになったんだけど、やはり王様は忠臣への不義理を許せなかったんだね。
この件に関してはこちらが何の要望もしていないのに、しっかり行動してくれたんだ。
王様ありがとー!!
これでこっそり貯め込んでたのが売れる~♪
え?ガメてたのかって?
違うよ。坑道に金鉱石のまま置きっぱで抽出もしてないから、まだ採掘されてないだけだよ。
河原に転がったままの金鉱石と大差無いよ。
坑道に転がってるのが、ほぼ金の塊みたいな鉱石なだけで。
だって料金貰えないのに、がんばっていっぱい採掘する人なんていないよ。
そして言い分もちゃんとある。
坑道の掘削も魔法、抽出も魔法。
そして往復では、万一の不時着時の猛獣&スライム対応も魔法。
簡易シェルターづくりと飛翔機修理も魔法。
何より不時着時の怪我はポーションでゆっくり回復出来る状況じゃないんだから、回復魔法必須。
つまり掘削や抽出に使える魔力はそんなに無いんだよ。
実際、転がしてある金鉱石まで抽出する余力は無いからね。
でもこれ、領主様は知らないの。
領主様は抽出出来た全部を黙って差し出しちゃうような忠臣だから、王様に不義理にならないように相談しなかったの。
姉妹ちゃんと私だけで話し合って、領の将来のために抽出せずに残しておくことにした。
合言葉は、『お世話になった領主様を、没落なんてさせるもんか』。
長いな。
まあそんな理由だから、今度暇見つけて姉妹ちゃんに同行して、抽出してこよう。
私、レベル15になったから、がっつり抽出出来るよ。
後ね、マギ君のお母さんのハンナさんが来てくれたよ。
王都から帰って二週間後に、リアーナお姉ちゃんが飛翔機で迎えに行ってくれたんだ。
初めて会った時、いきなり抱き締められた。
ちょっと母ちゃん思い出して、涙が出そうになった。
初対面なのに警戒心皆無で接して来るから、なんだか親戚の叔母さんみたいな感じだ。
わたしのおうちを案内して、トラップタワーも再稼働させた。
ハンナさんレベル0だったから、しばらくぷすってもらって辺境に対応してもらわなきゃね。
設備を説明したら、『これ、平民の家じゃない』って言われたけど、『平民の家具職人の家にいい家具があるのは当たり前。平民の魔道具マイスターの家だから、魔道具あるのが当たり前』って言って納得してもらった。
家庭菜園が夢だったと聞いたので、地下菜園も使ってもらう事にした。
マギ君に、自分で育てた野菜を食べさせたいそうだ。
十日ほどしてから様子を見に行ったら、玄関で『おかえりなさい』と言われて泣いてしまった。
ハンナさんは何も言わず抱き締めてくれて、頭を撫でてくれた。
しばらく泣き止めなかったよ。
お城でも『おかえりなさい』は言ってもらえてたけど、それは会社に帰って同僚に言われた感覚だった。
でも、おうちで言われたのは初めてだった。
私がおうちを自宅だと認識しちゃってるから、自宅に帰って母ちゃんにお帰りと言われたように感じたの。
まいったよ。自分でもあんなに泣いちゃうとは思わなかった。
でも、妙にすっきりした。
両親が亡くなってから、私の感覚は薄い膜を通したような、現実感が膜の分だけ薄れた感じだったの。
でも、その膜が取れて、両親と過ごしていたころのような、はっきりとした現実感が戻って来たんだ。
薄布越しに触れていたものを、素手で掴んだようなリアリティ。
頬を撫でる風の冷たさも、飲んだ水が身体に染み渡る感覚も、歩く地面の感触さえ、得られる情報量が違う。
私はこの世界で生きてるんだという実感が持てた。
これは両親に報告せねばとお墓参りに行ったら、墓石を見てもいつもするはずの胸の痛みが無い。
それに、いつもなら両親が地面の下に眠ってるって感じてたのに、今は空の上にいる気がする。
そして理解した。
五年も経って、やっと両親の死を受け入れられたんだと。
空の上の両親の魂に届くようにと、墓石に報告してからおうちに戻った。
ハンナさんにお礼言わなきゃね。
ハンナさんにお礼を言って我が身に起こったことを説明してたら、ハンナさんも同じような体験をしてたよ。
ハンナさんのご両親は夫婦で行商をしてた。
ある日、仕入れ先の街に向かう途中、崖崩れに遭って夫婦共々亡くなってしまった。
当時メイド見習いを始めていたハンナさんは、その日から現実感を失った。
でも、マギ君を生んで抱き上げた時に、現実感が戻ったそうだ。
多分何らかのきっかけがあって、初めて大切な人の死を受け入れられるんだろうと言ってくれた。
私は、やっと前に進めた気がして、とても嬉しくなった。
そしてその夜、夢を見た。
どこまでも続く雲の上、私の目の前には女神様が優しく微笑みながら立ってる。
でも、パンは抱えて無いな。
女神様の左右には、実体の無い淡く光る光の球体が浮かんでる。
私はその球体を両親だと認識していた。
女神様がそっと球体に手を添ると、ゆっくりと空に昇って行く二つの
私が笑顔で球体が見えなくなるまで手を振っていると、女神様が私の頭を撫でてくた。
そして両親を送ってくれたことにお礼を言ったら、優しく抱きしめてくれた。
そこで夢は終わったけど、翌朝目覚めてすぐに異変に気付いた。
魔力感知の範囲が広がってる。
いや、広がりすぎてる。
レベル15に上がって感知範囲が半径100mくらいになってたんだけど、今はまるで日中の視界。
それも高い場所に立ってるみたいに、視界(?)を遮るものが無い。
試しに領主様を思い浮かべると、位置や距離がはっきり分かる。
お城から街まで8kmくらいあるはずなのに。
王都のシャルちゃんに意識を向けてみたら、さすがにはっきりしないけど大まかな方向は分かった。
…これってネージュと同じなのでは?
そして魔法もおかしなことになってた。
消費魔力が激減してる。
例の制限は今まで通りあるんだけど、そこに至るまでの魔力の消費量が1/4くらいになってる。
今までの感覚で物を浮かせようとすると、天井にぶつかりそうなくらい持ち上がる。
まいったな。
また慣れるまで慎重に魔法使わないと、大惨事だぞ。
ぬるま湯作るつもりで沸騰させてしまう。
料理の加熱は消し炭製造機になるな。
はぁ、今日からしばらく、書類仕事は手書きだな。
…念話もかよ。
ソード君に報告しようと念話したら、頭痛くなりそうだって言われた。
試しにシャルちゃん呼んでみたら、王都まで繋がっちゃったよ。
びっくりされたけど、こっちもびっくりだよ。
まあ、いつでも連絡取れるようになったからいいか。
【アリス、商業区で事故発生だ。雪の重みで建物が崩れたみたいで、怪我人が二十人くらい出てるそうだ。昨日から父上は隣領行ってるから俺は現場に向かうけど、アリスはどうする?】
【私も行くよ。二十人じゃ、診療所だけだと対応しきれないかも】
【もう少し魔力絞ってくれ。まだきつい】
【あ、ごめん。で、足は?】
【兵も数人連れて行きたいから、予備のファン型飛翔機使おう】
【了解。じゃあ格納庫に向かうよ】
【俺も直ぐに行く】
私は常備してある薬と治療器材持って、格納庫へ急ぎました。
すぐにソード君も兵士さん四人連れて来たので、ソード君の操縦で飛び立ちました。
今日も雪は降り続いてるけど、飛べない程じゃないから良かったよ。
「なんでこの程度の雪で倒壊したの?商業区って、みんな新しい建物だよね」
「理由はまだ分からんが、さっき現場に着いた兵士から念話あった。教会の屋根が落ちて、中にいた人たちが下敷きになったみたいだな」
「はあっ!?教会って、建って数か月じゃん!まだ積雪1mも無いのに、絶対おかしいよ」
「ああ。教会の建築は領外から材料も人も来てたから、雪国仕様じゃない可能性あるな」
「いや、建築許可出す時に、ちゃんと雪国仕様を条件にしたよ」
「実際、忙しくて建築中の確認までは出来てねえだろ?」
「そうだけど…。領の指示を無視したって事?」
「それは追々調べる。今は救助が先だ。着いたぞ」
上から見ると、教会の屋根の東側半分くらいが落ちて楕円状に穴が開いてる。
あっちは礼拝堂側か?
先に現場に来てた兵士さんが、街の人が飛翔機に近付かないように整理してくれた。
ソード君は、教会前の道に飛翔機を着陸させた。
私は荷物を持って教会内に駆け込みます。
中では街の住人が協力して瓦礫をどけ、一か所に集めてます。
瓦礫の下敷きになった人たちは既に助け出されてるみたいで、瓦礫の下に魔力反応はありません。
「ロッテ嬢ちゃん。こっち手伝ってくれ!」
横たわる人の前に座ってた医師のおじいちゃん先生が、私を呼びます。
このおじいちゃんは、村時代から私の事を『ロッテ嬢ちゃん』って呼んでるんだよね。
おじいちゃんの前には、二十歳前後の男の人が横たわってます。
「こいつ、ついさっきまで歩いとったのに、急に倒れよった。急激に顔色が悪くなっとるから、内臓だと思う」
「すぐ見るよ。…やば、肝臓が破裂してかなり内部で出血してる。お腹開けるから場所代わって」
「頼む」
即座に肝臓に治癒魔法を使いつつ、おじいちゃん先生と場所を代わります。
おじいちゃん先生は、すぐ他の患者さんに向かいました。
私が任された患者さんは肝臓の損傷がかなり激しいので、治癒魔法だけじゃ追い付かない。
太い血管を優先的に修復しながら、手を消毒します。
私は急いで開腹手術の準備をしつつ、ソード君を呼びます。
「ソード君、私と患者さんの周りをクッション魔法で覆って、埃が来ないようにして」
「おう」
即座に展開されるクッション魔法。
本当はこんなところで手術なんかしたくないけど、この人は一刻を争う状態だから仕方がない。
ためらい無くお腹を切開すると、大量に血が溢れて来て臓器が見えません。
内部診断の情報を頼りに、血を球にして捨てます。
どう見ても出血量1ℓ超えてるよ。
この人、大柄な方だけど、かなりまずい出血量。
肝臓が見えたので9.0ポーション掛けて、修復を待ちます。
「なっ!神の家たる教会内で人を斬り刻み、教会を血で汚すなど悪魔の所業!決して許されんぞ!!」
何だこいつ。
多分教会の司祭か何かだろうけど、今は構ってられない。
「繊細な手術中に近付くな!そいつを取り押さえろ!!」
さすがソード君。
兵士さんに指示して、私に近付こうとした男を取り押さえます。
私は肝臓が修復したのを確認してから、切開部分をポーションで閉じます。
手術は終わったけど、この人出血量が多い。
少しでも多くの血液を内蔵に供給するために、近くにあった椅子で両足を持ち上げます。
「何をする!?神の家で司祭を拘束するなど、神をも畏れぬ暴挙だぞ!」
「うるさい!人が人を助けようとしてるのに、それを妨害することこそ女神様の教えに反する。女神様の教えに反することが、司祭の仕事か!?」
おおう、ソード君切れてるな。
この馬鹿はソード君に任せて、私は他の人を治療しよう。
「なっ、何たる侮辱!貴様も悪魔だ!!」
「悪魔はお前だ!この教会の建設は、ここでの積雪に耐えられる構造を条件に許可されたものだ。なのに崩れて怪我人を出した。神の家たる教会で人を傷付けることこそ、悪魔の所業!絶対に責任を追及してやるからな!!」
「せ、責任だと!?そんなものは工事した者が悪いに決まっておるわ!!」
「条件付きの建築許可は教会に与えられている。教会は条件に合った建築をする義務がある。それくらいは理解しているな?」
「だから言っているだろう!工事をしたものが手を抜いたのだ!」
「それは調べればわかる事だ。いずれにしても、この教会で怪我を負った人が出た事には変わりはないぞ。たとえ手抜き工事だったとしても、教会の責任は無くなったりはせん」
「教会に逆らうなど、女神様への反逆だぞ!?」
「話をすり替えるな。俺はこの事故の責任を負うべきものを非難しているだけだ。それともこの教会は女神様が建てたとでも言うつもりか?」
「女神様の代理たる教会が建てたものだ!」
「なら代理が責任を負うのが当たり前だ。女神様の家で、血を流させたんだからな」
「き、教会を敵に回すつもりか」
「愚かな。俺は、自領の領民を傷付けて敵に回った者を追い詰めると言ってるだけだ。もしも教会のトップが手抜き工事を指示していたら、相応の責任は取ってもらうがな」
「大司教様がそのような事をするものか!」
「なら教会は敵にはならん。だが、お前はどうだ?さっきから、事故を起こした者ではなく、大司教様も救助行為だと認める高度な手術をした特級薬医師と、事故の一報を聞きつけて飛翔機まで使って救援に駆け付けた次期領主である俺を悪魔呼ばわりしたお前は?」
「な、くっ、わ、私は司教だぞ!女神様のご意志を代弁する私を疑うか!?」
「当たり前だ!『人が人を救う』という医療行為を『悪魔の所業』と言ったんだ。女神様のご意志を悪魔の所業呼ばわりする奴が、真面なわけあるか!!」
うわー、ソード君さすがだわ。
次の患者さん治療しながら聞いてたけど、私が言いたいことをガンガン言ってくれてる。
正直、胸がスッとするわ。
「ご継嗣様のおっしゃる通りです!その人は安い材料を使って教会を建てるように工事の人に言い、差額をもらっていました。そんなことをする人が司祭でいることこそ女神様への冒涜です!!」
ぬお?突然、シスターさんっぽい服装の若い女性が、司祭の悪行を証言したぞ。
「う、嘘を言うな!教会から破門するぞ!!」
「あ?お前にそんなこと出来ねえぞ。なにしろお前は、陛下が直接任命された法衣子爵の特級薬医師と、次期領主で現子爵でもある俺を悪魔呼ばわりしたんだ。当分牢から出られねえからな。牢にぶち込んでおけ!」
「はっ!」
「な、よせ!止めろ!い、痛い!」
ソード君の命令で、兵士さんは男を連行して行きます。
男は暴れ出したけど、両腕を左右からがっちり掴まれて、足が浮いちゃってる。
兵士さんたち、わざと痛がるように持ち上げてるよね。
結構怒ってるなー。
「えーと、シスター?詳しい事情を聞かせてもらっていいか?」
「はい。シスターライラと申します。あの男の執務室に業者との契約書や図面があったはずですので、お持ちします」
「執務室なら壁同士が近いから崩れそうには無いな。ちょうどいいからその執務室で話を聞こう。アリス、そっちはどうだ?」
「ここでの治療は終わり。動けない人は診療所に運ぶから、一緒に行って診療所手伝ってくるよ」
私は治療を終えたので、近くにあった長椅子を材料にして、どんどん簡易担架を作っていきます。
そしてさすが辺境人。
何も言わずとも、重症だった患者さんを担架に乗せて、せっせと運んでくれてます。
「そうだな。こっちは遅くなりそうだから、終わったら飛翔機で帰ってくれ」
「わかった。終わったら念話入れるよ」
「おう、頼む」
診療所に移動した私は、おじいちゃん先生を手伝って、軽傷だった患者さんたちを処置して行きます。
「さすがじゃのぉ。こりゃあご両親も鼻が高いじゃろうて」
「えへへ、そうかな?」
「当たり前じゃ。ロッテ嬢ちゃんの医術は国王様が認めるほどのものじゃ。あのご両親が喜ばぬはずがない」
「そうだよね。ありがとう」
今までは両親の話題になると胸が苦しかったのに、今は笑顔で話せた。
父ちゃん、母ちゃん。私、頑張ってるよ。
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