☆ 領兵勧誘?
「さて、俺は平原の自走車まで一緒に行くから、うちの兵士一人付いてきてくれ。後は帰って隊長に報告頼む」
俺は兵士に指示を出して、森を下りだした。
やがて侯爵領の分隊長が話しかけてきた。
「えっと、あの、貴族様なんですよね?さっきは無礼な口きいてすいません」
「ああ、気にしないでくれ。俺はいつもこんなだから、公式の場以外はさっきまでの口調で頼む」
「いいんですか?」
「頼んでるんだが、ダメか?」
「えっと、わかり…いや、分かった。だが、貴族様にため口なんて、調子狂うな」
「ははは、貴族は二種類いるからな。貴族って仕事をしてる人間だと思ってるやつと、貴族っていう高等生物だと思ってるやつな。少数だが、俺や父上は前者だな」
「あんたの領、すげー住みやすそうだな」
「お、移住なら歓迎するぞ。あんたらお嬢を子供だと侮らずに説得に応じてくれたし、祝福も七回近くあるだろ?しかも危険な森を侵入路に選んで、渓谷で網張ってた俺たちの予想外したし」
「俺も娘いるからな。娘は子供扱いするとすげー怒るんだ。侵入路は、危険な場所の方が警戒が緩いと思ってな。だが、何で俺たちの祝福回数わかるんだ?さっきの嬢ちゃんも怪我人の祝福回数言い当てて薬出してたぞ」
「祝福回数七回近い兵を使い捨てにするとは思わんかった。回数が分かるのは詳しくは言えないんだが、そういうのが分かる技があるんだ。俺もお嬢に教えて貰ったからな」
「…すげー嬢ちゃんだな。さっきも平気で10mくらい飛んでたし」
「ははは。よし、もっと驚かせてやろう。お嬢の治療、王宮医師でも真似できないからな」
「さっきの治療か。傷口切り開いてるのに怪我してる本人は平然としてたから、すげー驚いたぞ」
「残念、驚き済みだったか。じゃあ、使ったポーションは金貨一枚の高級品、丸薬は一粒金貨二枚。どちらもお嬢にしか作れない」
「まじかよ!?支払い、少し待ってくれるか?」
「大丈夫だぞ。生き証人の治療に使ったんだから、うちの領の経費で落とす。請求なんてしない」
「…本気で移住したくなってきたぞ」
「大歓迎だが、侯爵領も領主が代わるだろうから住みやすくなるんじゃないか?」
「だが、あんたみたいなのは少数派なんだろう?当たりが来てくれりゃあいいが…」
「まあ、しばらく様子見て、ダメそうなら相談してくれ」
「ああ、そん時は頼むよ」
「おう」
話しながら森を抜け、念話で呼んでおいた自走車を見つけて近づいた。
俺は自走車に乗り込み、直轄領代官への手紙と騎士団長宛の報告書、分隊長用の紹介状を書いた。
正式な押印は無いが、封蝋指輪で封じておいたから通用するだろう。
生き証人たちを荷台に乗り込ませ、運転手ともう一人兵を付けて、代官の所に送り出した。
さあ、俺は放置した仕事を片付けに帰ろう。
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