もう少しだけあなたのそばに
チカチカ
1話完結
「それじゃ、お母さん、いってきまーす」
お兄ちゃんたちはそう言って、元気よく旅立って行った。
「いってらっしゃーい!頑張るのよー」
お母さんはちょっぴり寂しそうな顔をして、お兄ちゃんたちを見送った。
春風が優しくそよぐ。お日様がぽかぽかして暖かい。
今日は絶好の旅立ち日和。
「ねえ坊や。坊やはまだ出発しないの? 」
お母さんが心配そうに僕に尋ねる。
「うん。もう少しだけ、お母さんと一緒にいるの」
僕はお母さんに甘えるように、そう言った。
「もう、仕方のない子ね、甘えん坊さん」
そう言いながらも、お母さんはどこか嬉しそう。
ねえ、お母さん。この間、お姉ちゃんたちが出発したときも、さっきも、お母さんは寂しそうにしていたでしょう。
だから、もう少しだけ、僕はここにいるの。お母さんのそばに。
大丈夫。春風さんも待っていてくれるから――
「あ、ママー、みてー、ふわふわしたのがとんでるー」
「あれはね、たんぽぽさんの綿毛よ」
「わたげ? 」
「そう。ああやって、風に乗って飛んでいくの。そして、どこかに着いたら、そこで大きくなって、新しいたんぽぽさんのお花を咲かせるのよ」
「ふうん・・・・・・? 」
小さな男の子は分かったのか分からなかったのか、きょとん、とした顔をした。
そして繋いでいたママの手を、もう一度、ぎゅっと握った。
それは、道端に生えていたたんぽぽに、一つだけ綿毛が残っているのに似ていた。
もう少しだけあなたのそばに チカチカ @capricorn18birth
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます