第8話 クリフとシュシュ ※ノレン視点

 クリフがゲームセンターのスタッフと揉めている。

 ここで私が保護者代わりとして名乗り出れば、彼女のプレイは続けられるのだ。


「す」


「どうした?」


 私が意気込んでスタッフに話しかけようとしたそのときに、他のスタッフが出てきた。


「店長っ。実はこのお客様が十八時になったのに」


 ああ、店長だったのか。だが、私が名乗り出なければ保護者不在は変わらない。


「ああ、、、このお客様は大丈夫だ。何か言われたらまずは身分証で年齢確認と教えただろ」


 (o・ω・o)ホエ?

 店長はスタッフに言ってから、金髪幼女に向き直った。


「お客様、大変申し訳ございません。この者は最近新しく入った者でまだまだ教育不足でして。どうぞプレイをお続けください」


「うむ、若輩者に怒る私ではない。だが、きちんと教育はするんだぞ」


 若輩者?

 店長が若いスタッフに頭を下げさせている。

 彼女がプレイを再開するのを見届けると、彼らは後ろに下がっていった。

 店長が若いスタッフに。


「あのお客はあの異文化交流の留学生だ。二百五十一歳というのは以前に学生証で確認している。年齢も問題ないんだ。今後も見た目で判断できない客が増えるだろうから確認は怠るな。特ににゃにゃタロの最新作にはありがたいお得意様だ。他の店に取られるような失礼な態度だけはするなよ。顔は覚えたな」


 と小声だったんだけれども言っているのが、ついつい聞こえてしまった。

 二百五十一歳。。。

 あの異文化交流かあ。

 今後は彼女を幼女ではなく、小柄な女性と表現することにしよう。

 そういや合法ロリがいると大学内で騒いでいた奴がいたな。

 合法か、そうか。


 彼女が努力の末、にゃにゃタロの景品を獲得していた。

 彼女の喜びの表情につい拍手してしまった。


「お、さっきは私のためにスタッフに声をかけようとしてくれたな。礼を言う。私が大学生というのを伝えようとしてくれていたんだろう。先ほど正門の辺りですれ違ったしな」


 ごめんなさい、大学生とは思っていなかった。正門ですれ違ったのも記憶しているのね。私、何か変な行動とってなかったよね。


「あ、私、同じ大学で二年の阿須ノレンと言います」


「おお、同じ二年生か、なら年齢は多少年上だが同じ席で学ぶ者、私に敬語はいらない。私はクリフトス・アーガラー。クリフと呼んで良いぞ」


 多少なのか?二百五十一歳ってそうとう年上だぞ。

 もしかして百や二百は誤差の範囲とかいう種族なのかな?もっと親しくなったら聞いてみよう。


「そうだ、コレ、さっきそこの台でとれたんだけど」


 シュシュ二つ。ちょうど同じ柄だった。


「髪、触っていいかな?」


「いいぞ。クレーンゲームを愛する者なら悪い者はいまい」


 それはどうかな?

 クリフの髪をツインテールに縛る。やっぱり似合う。


「すごい、似合うっ」


「お、そうか。そうなのか。だが、二つしかないのであろう。私に与えてはノレンの分が、、、」


 ちょっと照れたように笑う彼女もかわいい。


「え?いや、私はそんなに髪長くないし、似合うクリフにつけてもらいたいというか」


「この台か。私もやってみよう」


 クリフがシュシュの台に挑戦する。


「ぬ?台の端で、もう落ちそうなのに落ちないな」


「あ、それ、台にぶら下がっていて落ちそうに見えるけど、タグが台にくっついて落ちないようにされているの。よく見ると取れるのと取れないモノがわかるよ」


「なるほどな。簡単そうに見えて、奥が深い」


 闇が深い、とも言う。マスコットなどの小物の景品をタグやヒモで台から落ちないように固定するのはやめてほしいよね。見ればわかるでしょ、って言いたいんだろうけど、見え辛いものも多い。

 彼女が落としたのは、同じ柄だった。


「ほら、コレでお揃いになるだろう。私とノレンはクレゲ仲間だな」


 クリフが笑顔でシュシュを私に渡してくれる。

 ( ;∀;) ジーン

 ええ子や、この子。あ、子じゃなかった。


「ありがとう、クリフ」


 私は長くない髪をムリヤリ縛る。小さいお団子にしかならないが、これぞ仲間の証だ。

 私はクリフと連絡先を交換した。



 数日後、金髪幼女がツインテールに進化したという都市伝説が大学内で広まった。

 彼女はツインテールが気に入り、実際に大学内もその髪型で歩いているのだが。

 広いキャンパスだ。同じ大学であっても、一度も顔も合わせることすらない学生が数多くいる。噂が都市伝説に進化していてもおかしくない。


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