第7話 クリフと阿須ノレン ※ノレン視点
私の名前は阿須ノレン。大学二年生だ。
大学内に金髪幼女がいるという都市伝説を聞いたことはあったが、実際に目にしたことはなかった。
その金髪幼女が目の前を通り過ぎて歩いていった。
(o゚Д゚o)ぉ♪
金髪幼女、本当にいたんだ。
長いさらさらストレートの金髪、白い肌の小さくカワイイ顔。日本語話せるのかな?
けど、なぜ大学に?
彼女は大学の正門を抜けて、駅の方へ向かっていた。
帰るのだろうか?
私も駅の方へ向かう。
私の家は大学のご近所だが、駅まで行く必要はないのだが、いや、駅の方に買い物する予定があったのだ。そう買い物だ。
断じて彼女の跡をつけたわけではない。
彼女が駅の近くのゲームセンターの前で足を止め、ふらふらと中に入っていく。
もうそろそろ十八時を回る。
あれ?確かゲームセンターって。
横にポスターがあった。
そうそう、十六歳未満は保護者同伴の場合に限り十八時以降も在店していいよ、という決まりごとである。(注:場所によっては保護者同伴でも十八時までというところもあるよ)
彼女はマシンのひとつに齧りついてクレーンゲームをプレイしている。私も怪しまれないように、彼女が見える近くの台でプレイする。景品はシュシュだ。人気アニメのモノの類似品であるため、多少取れやすそうな台だった。台にシュシュが引き詰められているが、狙いは台の端にいるシュシュ。
どう狙おっかなー、と悩んでいるフリをしながら一回一回に時間を稼ぎ、彼女を盗み見る。
今までよく見えていなかったが、彼女のプレイしている台の景品はネコが着物や浴衣を着ているキャラで子供に人気の、確かにゃにゃタ。
「お客様」
ゲームセンターのスタッフの声が私の思考を遮った。
スタッフは背後の怪しい私ではなく、金髪幼女に話しかけている。
ちょっと私の心臓がバクバク鼓動している。良かった、私じゃなかった、怪しまれて声かけられたのかと思った、と安堵したのもつかの間。
「大変申し訳ございませんが、十六歳未満の方は保護者同伴でないと、、、」
スタッフは金髪幼女に察して、と言わんばかりに近くにあるポスターの方に目を向けさせようとする。
やはり言われたか。
彼女はまだプレイの真っ最中だ。景品はまだ落ちていない。
だが、もうそろそろ落ちそうな気配がする。
ここまでやった台を放棄して、時間だから店を出ろというのはあまりにも酷だ。
そうだ。私が保護者代わりとして名乗りをあげれば、彼女はプレイを続行できる。彼女に少しぐらい変な目で見られようと、彼女が損害を被るのを黙って見過ごすわけにはいかない。
「す」
「私はそこの大学生だ。問題はない」
私が話しかける前に、金髪幼女がスタッフに語気を強めて言い返した。
プレイ途中に中断させられて、良い気はしないだろうけど。
やっぱり金髪幼女は大学生なんだ。確かうちの大学には年少でも高い成績の者は附属から大学で学べる制度があったはずだ。
「あ、いえ、ですから大学生であっても、年齢が、」
若いスタッフは少ししどろもどろになっている。言い返されることに慣れていないのが見て取れる。
「だから、何ら問題はない」
彼女は言い切った。
「あ、あの、事務所の方で詳しく話を聞きますので、こちらに」
この店舗内に十八時以降も保護者もいない年齢に満たない者がいることに耐えられないのか、それとも、店長にでも指示を仰ごうというのか。というか、このスタッフ、彼女を裏に連れていくのではなく、店長を呼んで来い。新人さんかな?
「何をするかっ。今、ここを動いたらハイエナどもににゃにゃタロが攫われてしまうではないかっ」
奥に促そうとしたスタッフに、彼女が大声を上げる。
その通りだ。
景品を横取りされようと、店側は何ら責任をとることはない。
両替でマシンから離れているときも、マナーの悪い客には要注意なのだ。
周囲の客も彼女とスタッフに注目し始めた。
やはり、私が保護者代わりとして名乗り出よう。
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