第22話
「お前は昔から王族の婚約者である自覚が足りなさ過ぎる。分かっているのか?」
バルデマーによって生徒会室に連行された私は彼からの説教受ける羽目になっていた。
ルードルフの婚約者である自覚はある。ただ昔から「どうせヒロインにその座を奪われるのだから」と冷めた気持ちも持っていて、それがバルデマーにはバレてしまっていたのだ。
事あるごとに長い説教をされてしまう。
完全に自業自得なのよね。それにしたってもう少し優しくしてくれて良いのに。
きっと私が嫌いだからきつく叱るのだと思う。
「自覚が足りないから暗殺者に狙われてるのだ」
「いや、それは…」
全くもってその通りだけどあれが並の暗殺者の変装だったら気が付けていた。しかし私を呼び出した男子生徒は完璧な変装をしていたのだ。私が警戒するまで殺気の一つも出さなかった。
「それでお前を狙った奴はどんな人物だった?」
「逃げるのに必死だったので何も分かりません。申し訳ありません」
犯人の特徴くらい見ておけと叱られるだろうか。
流石に狙われた直後にその説教されるのは嫌なのだけど。
そう思っているとバルデマーは深く溜め息を吐いた。
「謝る必要はない。それにしても暗殺者の侵入を許すとは学園側には抗議が必要だな」
「警備を万全にしたところで私を狙った人は捕まらないと思いますよ」
「しないよりはマシだろ」
それはそうだけど手練れの暗殺者は警備を出し抜いてあっさりと対象に近づけてしまうのだ。
ガラリと扉が勢いよく開く。
「ディア、大丈夫ですか!」
入って来たのはルードルフだった。彼の顔を見た瞬間、安心してしまう。
「ルード、ノックをしてから…」
「怪我はありませんか?」
バルデマーの言葉を遮ったルードルフは私の隣に座って手を握ってくる。慣れた手の温かさに涙が出てしまったのは仕方ないと思う。
情けなくぼろぼろと涙を流す私にルードルフもバルデマーも驚いた表情を見せた。普段なら気丈に振る舞い続けられたのに今回に限っては出来なかったのだ。
「で、ディア、大丈夫ですか?」
「平気です」
「泣いているじゃないですか。また兄上に酷い事を言われたのですか?」
ルードルフに睨まれたバルデマーは動揺しながら首を横に振った。
別に彼に説教されたから泣いているわけじゃない。そんなのは昔からなので慣れている。
ただ今になって自分の命が狙われた事が怖くなったのだ。
「バルデマー様は助けてくださっただけですから」
「ならどうして泣いて…」
「命が狙われて怖かっただけですよ」
命を狙われたら誰だって怖いものだ。
「命を狙われたくらいで」
「兄上、やめてください」
ルードルフに睨み付けられたバルデマーはバツが悪そうに目を逸らす。
結局ルードルフは私が泣き止むまで背中を撫で続けてくれた。
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