第21話
バルデマー・フォン・ロタリンギア第一王子。
攻略対象者であり、彼ルートの悪役令嬢はクラスメイトの高位貴族のご令嬢。ゲーム内ではクラウディアと関わりが薄いけど現実ではそうでもない。
幼少期は全く絡みが無かったのに私がルードルフと婚約してからは何かと突っかかってきているのだ。事あるごとに叱られてきたせいで今は苦手意識がある存在となっている。
「久しぶりだな、クラウディア嬢。第二王子の婚約者が廊下を走るとは良い度胸だ」
二歳上である彼は学園の先輩だ。校舎が違う為、会う事はないと思っていたのだけど私が逃げ込んだのはどうやら三年生の校舎だったらしい。変な人からは逃げられたけど出会ったのがバルデマーとは最悪だ。
「い、いや、事情がありまして…」
「ほぉ?その事情とやらを聞かせて貰おうか」
睨み付けてくるバルデマーから視線を逸らすとゆっくり詰め寄られて壁ドンを繰り広げられた。
弟の婚約者に壁ドンをしないで欲しいのだけど。
「顔色が悪いな。何かあったのか?」
「少しだけ…」
普段よりも優しい口調で尋ねてくるバルデマーに素直に答えると溜め息を吐かれた。
とりあえず離れて欲しいのだけど。もし誰かに見られたら変な誤解を招いてしまう。
「何があったんだ?」
「その前に離れてください。誰かに見られたら困ります」
「逃げないか?」
「逃がしてくれないのがバルデマー様でしょう?」
この人はネチネチした性格なのだ。ここで逃げ出せば後で何をされるか分かったものじゃない。その前に逃げ出せるとは思わないけど。
逃げないと言う意思を示せばバルデマーは大人しく離れて行ってくれる。
「それで何があった?」
「変な人に追いかけられて」
「変な人?」
「クラスの男子の格好をしていたのですがあれは…」
「暗殺者の類か?」
察しの良いバルデマーに頷けば鬼のような形相で「本当か?」と肩を掴まれる。
いちいちスキンシップが多い人だ。身体を捩って彼の手から逃げ出す。
「すぐに学園に警備の強化を手配させよう」
「い、いや、そこまでしなくても…」
「何を言っている、お前は第二王子の婚約者なんだぞ。まだ自覚がないのか?」
うっ、声を詰まらせる。
昔からバルデマーが説教を始める時のお決まり文句は「お前は第二王子の婚約者なんだぞ」だった。またあの悪魔のような説教が始まるのかと頰を引き攣らせる。昔は理不尽に感じていたけど今回の件に関しては完全に私が悪い。
「生徒会室までついて来い。ルードにも報告させて貰うからな」
「え、いや…」
「あいつが来るまでは説教だ」
覚悟しろと言うバルデマーの声に項垂れた。
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