第18話
あの一件以降、アロイスはバラバラと関わる事をやめたようだ。むしろ軽蔑の眼差しを送っているらしい。
一方バルバラは相変わらず信者を増やそうと動いているみたいだ。
しかし私とアロイスの件が広まったせいか付き合いを控える人間もいるらしい。
特に高位貴族であればある程、彼女の事は避けている。
理由は簡単、私の隣で真っ黒な笑みを浮かべている婚約者のせいだ。
「ディアは何も心配しなくて良いですからね」
私の腰を抱き、笑いかけてくるルードルフが魔王に見える。
どうやら高位貴族の多くはルードルフに睨まれるのが怖くてバルバラとの関係をやめたらしい。まあバルバラが私に行った事に対して幻滅した人もいるようだけど。
「何があっても、あの阿婆擦れ糞女から守ってあげます」
髪にキスをしてくるルードルフは甘ったるい笑みを浮かべたが正直に言ってそれすら怖いのだ。
守ってくれるのは嬉しいが、もしも敵になった時にどう対峙したら良いのか分からない。
それにしてもバルバラはヒロインであるはずなのに散々な言われようだ。
「ルード様、あまり過激な事はしないでくださいね」
「それはあの女次第ですよ」
ラスボスの風格を見せるルードルフに私は頬を引き攣らせるしかなかった。
「それにしても彼女は変な人間ですよね」
「どういう事ですか?」
「どうやらアロイスの好む物や学園で過ごす場所、休日の予定まで把握していたみたいです」
「あー…」
それは彼女が転生者で、前世では乙女ゲームをプレイしていた人間だからだと思いますよ。って言ってあげたいけど私まで頭がおかしいと思われたら嫌だ。
「ディア、何か知っているのですか?」
「いいえ。彼女は全く知りません。自分を怪我させた相手の事を知ろうとは思いませんよ」
「それもそうですね」
ごめんなさい、それ半分くらい嘘です。
心の中で謝った。
ただ今の世界で彼女がどんな風にして過ごしてきたのかは知らない。いつ前世を思い出して、いつから攻略を狙っていたとか知るわけがないのだ。
「とりあえずディアは警戒していてください」
「警戒?」
「いつあの女に絡まれるか分からないので学園では一人にならないようにしてください」
そこまで心配しなくても大丈夫だと思うけど。
現に彼女は私に近寄ってこようとしないし、アロイスの一件で私を陥れられない事くらい理解したはずだ。
「とにかく絶対に一人にならないでください」
「わ、分かりました」
どうしてルードルフの忠告を真面目に聞かなかったのか。
後悔する事をこの時の私はまだ知らなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。