第7話

「いらっしゃい、クラウディアちゃん」

「先程ぶりでございます。王妃様」


王妃様のところまで行くと笑顔で出迎えられた。


「私は貴女の伯母でもあるのだから、そんなに畏まらなくて良いのよ?」

「ここが私的な場でしたら気を緩められますが、ここは王妃様主催のお茶会ですのでご無礼がないようにするのは当然の事です」


しまった。

そう思ったのは王妃様に言葉を返してからだった。

こんな流暢に人様を意見を否定する八歳児が居てたまるかという気分だ。現に王妃様とお母様はそっくりな顔を驚かせていた。


「アデリナ、貴女の娘は凄いわね。まるでルードのようね」

「私も驚いていますわ、お姉様」


目の前でそんな会話が繰り広げられる。

王妃様の言うルードはおそらくルードルフの事だ。

一緒にされるのはちょっと勘弁してほしい。


「お、王妃様。私にお話があると聞いたのですが…」

「ああ。そうだったわね」


先程の発言を誤魔化すように会話を変えれば、すぐに応えてくれる王妃様に内心ホッとする。


「私の息子のルードルフの事だけどね。今日は婚約者を探しているのよ」

「父から聞きました。良い縁が見つかると良いですね」


他人事のように言葉を返せば王妃様が戸惑った表情をした。

私の居ないところでやってほしかったという思いが強いのだ。無関係で居させてほしい。


「え、えぇ…。クラウディアちゃんは興味ないの?」

「母である王妃様には申し訳ないのですが、はっきり言ってしまえば答えは『ない』です」


自分を破滅に導く人に興味なんて湧きません。

元々はクラウディアが悪いのだけどね。

私がルードルフに興味がない事が分かった途端に落ち着かない様子の王妃様がいた。


その様子を見て、悪い予測が確信に変わっていく。

おそらくゲームの中でルードルフとクラウディアが関わりを持ち始めるきっかけを作ったのは王妃様だ。


この国では第一王子以外の王子は基本的に王位継承権を持たない。

第二以降の王子はいずれ臣籍降下して公爵となる存在なのだ。

つまり王子が婿となっても問題が発生しない家は跡継ぎになれない娘のみを持つ公爵家だけとなる。

そして国内でその条件に当てはまる公爵家は我が家だけ。

王妃様からしてみれば大切な妹がいる家でもある。

自分の可愛い息子を婿に出すのには最高の場所なのだ。


我儘娘のクラウディアが自身の息子であるルードルフに惹かれる事を期待した王妃様がお茶会という席を設けて二人を出会わせた。

そして王妃様の期待通りクラウディアはルードルフに興味持ち出会い一目惚れをして婚約に漕ぎつけたというのがゲームの裏設定なのだろう。


つまりはクラウディア達の婚約はあらかじめ決められていたも同然だったのだ。

そしてそれは現在も変わらない。

状況を変えるには私の対応が重要になってくる。どう切り抜けるかと考えていると遠くから衛兵の声が響いた。


「ルードルフ第二王子殿下のご入場です」


ようやく来ましたね、破滅フラグ様。

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