第2話




 悪役令嬢に引きずられて教室入りした私は、席について頭を抱えた。


 なんなのいったい!?


 ゲームのエリザベータは『おほほほ! 平民ごときが身の程を知りなさい!』とか言うキャラクターだったのに。


 間違っても、『校庭百周してきます!』とか言うキャラじゃなかった。


「はっ! さては」


 私はあることに思い至ってエリザベータの前に立った。


「さてはアンタも転生者ね!」

「テンセーシャ? 何スカそれ? 新発売のプロテインっすか!?」

「違う! 公爵令嬢がプロテインなんか飲むな!」


 くっ……とぼけやがって! こうなったら絶対に尻尾を掴んでやる!


「アンタが転生者だっていう証拠を掴んでやるわ! 覚悟しておきなさい!」

「うっす! ちゃんと鍛えとくっす!!」

「鍛えろとは言ってない!」


 覚えてろ。


 席に戻った私は次なるイベントを思い出した。

 それはお昼のお弁当イベント!


 この学校には学食があるんだけど、ヒロインはお弁当を持ってきているのよ。

 そこへ悪役令嬢が「あーら? 平民はランチの代金もありませんの?」とか言っていびってくるのよ。


 でも、それを見たクリストファーがヒロインのお弁当を見て、


『すごく美味しそうだ。僕も食べてみたいな』

『え……?』

『こんなに美味しそうなお弁当が作れるなんて、君は素敵な女の子だね』


って台詞で背景がキラキラーってなってクリストファーの微笑みが拝めるのよ!


 ふふふ……出会いイベントは邪魔されたけれど、お弁当イベントは完璧にモノにしてみせるわ!

 私は気合い十分にお弁当を取り出す!

 さあ! 見なさい!


「あら、エリザベータ様。今日も手作りスタミナ弁当ですの?」

「うっす! 筋肉付けるためにタンパク質は欠かせないっす!」

「食後の昼休みはドッヂボールをおやりになるの?」

「昨日、騎士団長の息子を倒しちゃったので今日は挑戦者がいないっす!」


 ちょっと! 何さらっと攻略対象その2を倒してるのよ!


 ていうか、学食行きなさいよ! なんで机の上に重箱広げてるのよ!


「挑戦者がいないのでしたら、久しぶりに私達と……」

「エリザベータ嬢!!」


 ああっ! 突然教室に現れた彼は……サイラス様!! 宰相の息子で眼鏡を持ち上げる姿が様になる攻略対象その3!


「先日は破れましたが、あの敗北を乗り越えて私は真の強さを得ました! ありとあらゆる戦術を学び、私の意のままに動く最強部隊を作り上げたのです! さあ! 戦いましょう!」

「うっす! 望むところっす!」


 攻略対象その3まで倒しとったんかい!



 結局その日一日、悪役令嬢エリザベータのせいでクリストファーとの仲が縮まらなかった。

 おのれ! 明日こそはクリストファーとイチャイチャしてやる!

 私は強く決意した。



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