第30回甘い言葉選手権決勝戦
某県某所で行われる「甘い言葉選手権」も今年で30回の節目を迎えた。全国から集まった「甘い言葉ラー」は約150名。その中から、最後の審査に勝ち残ったのは3名である。
一人目は、エントリーナンバー17番、
「それでは、どうぞ」
「『君は僕の月、僕は君の夜空。夜空がどうしようもなく暗いからこそ、月の美しさが際立つんだ』」
ぱちぱちと拍手が起こる。自虐を含んだ言葉選びが、彼の特徴である。
「いやあ甘木節出ましたねえ」
審査員席のコメントもいつもの、といった感じである。
「自分をサゲて相手をアゲていくスタイルですね。絶妙なバランスです」
二人目は、エントリーナンバー83番、
「それでは、どうぞ」
「『そんなに卑下することないよ。内気で、陰気で、社交性がない? でもね、俺はそんな君だから一緒にいたいのさ』」
敏夫さーん、という観客席からの声に、彼は軽く手を挙げて応えた。
「今度は承認欲求をくすぐってきましたね」
審査員の女性がちょっと赤くなった頬を叩きながら言った。
「甘いですねえ。さすがシュガーアンドソルトの異名を持つだけあります」
三人目は、エントリーナンバー129番、
「それでは、どうぞ」
「『オレを信じろ、っていうのが普通の男の言うことだろ? オレはお前がうっかり信じちゃうような男になるから、待ってろよ』」
ウインクを華麗に決めて、彼は壇上から下りていった。
「自分がチャラいところを存分に発揮してきましたね」
審査員席から唸り声が漏れる。
「うっかり、っていうのがポイント高いですね。無意識を狙ってきました」
……というわけで、審査に移ります。一般投票もございますので、ぜひご参加ください。
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