第一章 出会い編
第1話 俺はいつでも後悔する
人生の中で後悔しないということはあるのだろうか。俺なら、『ない』と答えるだろう。失敗を人が必ずしてしまうように後悔もする。それはどうやったって防ぎようがない。世の中が、社会がそのように作られているのだから。
◇
キンコーン、カンコーン。授業終了のチャイムが聞こえてきた。俺、切井当麻は、大きく伸びをした。やっと帰って勉強できる。それしか、俺の中にはない。クラスの奴らを見てみろ。カラオケだの、カフェだの、アホか! 放課後は、勉強だ。それ以外は無駄だ。それに俺にはそんなことをしている余裕はない。
ホームルームが終わると、俺は、すぐ帰路についた。
俺は、家につくと、手洗いうがいなどを済ませ勉強を始める。俺のいつもの日課のようなものだ。
俺の部屋は、シンプルで部屋の真ん中に勉強机、端の方に本棚がある。中身は参考書やどこぞの大学の過去問やら、模試の過去問。ぶっとい小説といったところだ。つまらない一色の俺の部屋。だが、俺はシンプルなこの部屋を気に入っている。なんでも自分の部屋だしな。
自分の部屋。
響きがいいように俺はいつも思う。小学校時代に憧れ、遂に手に入ったときのあの感覚。今でも覚えている。なんでも感動もんだ。
机の上で勉強をしていると、
「お兄ちゃん、おはぎ作ったよ!」
妹の切井りずはが入って来た。りずはは、髪を長く伸ばし、頭のてっぺん辺りで髪を結んでいる。服装は家であることもあるが、ラフな格好をしている。ワンピースの上が半袖であるものを着ている。
顔は幼いながらも可愛らしく我が家ではちょっとしたアイドル的な存在だ。親父はりずはのことを激愛しており、りずはの言われたことは文句一つ言わずに行動するほどに。普段は言われても動こうとすらしないのにな。不思議なことだ。
俺は、りずはを見ると、
「ノックをしろって前にも言ったと思うが? それとりずは、おはぎは、本棚の上においといてくれ。後で食べるから」
「了解です!!」
今日は妙にテンションが高いな? いいことでもあったのか?まぁ、聞くだけ無駄か。
俺は、勉強に戻った。
◇
夕飯の時間になり、俺は本棚の上からおはぎを手に取り、リビングに向かった。おはぎは、夕飯に食うか。勉強に集中していて完全に存在すら忘れていた。後でやるというのが信用できないのも今なら分かる気がするな。俺は、そう思った。
夕飯は、白飯に卵焼き、味噌汁、唐揚げ、俺だけプラスおはぎ。バランスはなんとも言い難いが、まぁ、いいほうだろう。野菜ないけど。
味噌汁の中身はなんと大根のみ。シンプルすぎるな。大根になんか恨みでもあるのかって言いたくなるレベルだ。まぁ、言わないが。
夕飯中は、我が家のルールでテレビを消すことになっている。家によっては違うかもしれないが、我が家ではそうなのだ。俺は、別にテレビとかは見ない人間だが。ニュースとかは新聞で済ませてしまう質だしな。
りずはが、俺に『学校ではどうなのか』とか、『友達がいるのか』などを聞いてきた。俺は、適当にあしらったが、お前は俺の母親か?と思ったがすぐにいや違うなと思い直した。
俺からも話題を出し、夕飯の時間は終わった。
十二時になった。
そろそろ寝るか、そう俺が思っていた頃、明日が試験であることを思い出した。原因は机にあるカレンダーだ。明日の予定に試験とでっかく書かれていた。いつ書いたのだろうか。全く、記憶になかったが、いつも通りにやればいいと思い直し、結局寝た。
◇
次の日。
俺は、5時に起きて勉強をしていた。りずはが、朝食の準備をしている間は勉強するようにしている。けっして、俺が料理ができないわけではない。勘違いしてはいけない。
「お兄ちゃん、朝ごはんできたよ!!」
「ああ、今行く!」
俺は、そう言い、朝ごはんを食べに降りていった。
「今日、テストなんだよね?お兄ちゃんなら、余裕だと思うけど、頑張ってね!」
「ん?!そうだな」
俺は、テストのことをもたもや忘れていたことに気づいた。このごろ、物忘れがひどいのか?いやただ単に興味がないだけか。それはそれでまずい気もするけどな。
「行ってくる」
「いってらしゃい」
りずはは、小学生であるから、俺と違い、登校が遅い。いいご身分だ。ほんとに。
俺は、教室につくと、勉強を始めた。
放課後。テストは、無事終了し、
しかし、この女、俺は
「今日のテストはどうだったかな、 切井くん? 今日は随分焦っていたように見えたけど。今回の試験で君の一位の座は、私にとられてしまうということなのかな?」
『誰だお前?』俺が第一に思ったことはそれだった。テストというのは、今日やったやつのことだろう。あれなら、かんたんすぎる。ひねりがなく、やる意味すらあるのかと疑いたくなるようなものだった。あれを1問でもミスるやつなどいるはずがない。
俺は、声をかけてきた女子生徒を無視して帰路についた。
◇
1週間がたった。
先週の中間試験の結果が返ってきた。俺は、その結果を見ると、すぐに自分の勉強を始めた。
廊下を歩いているとき、廊下の壁に中間試験の結果が貼り出されているのに気づいた。俺の名前はいつもと同じところに書かれていたが、興味はない。通り過ぎようとすると、
「待ってくれ!」
誰かともしれないやつに声をかけられた。声をかけてきたのはこの前の女子生徒だった。名前は知らない。
「君には余裕がなかったはずだ。なのに、なのにどうして全科目満点なんて取れるんだ!」
女子生徒は信じられないかのような目で俺を見てきた。しかし、俺からしたらこの程度のテスト(笑)で満点が取れないのはそれこそ信じられないことだ。余裕?そんなものは自ら作り出すものだ。まあ、凡人には分からないことかね。クククっ。俺はやはり天才か。
それはそれとして、何度も突っかかってもらわれては面倒だ。ここらでビシッと言っておかないとな。
「あのレベルの問題なら、ノーミスで解けるだろ? あれはテストじゃない。ただの作業だ!」
俺の言葉に驚いたのか、引いたのか。どちらであっても関係はない。俺は、教室に戻ろうとすると、
「それでこそ、私のライバルだ」
ん!?え?ライバル?誰が?
「君には、次勝つよ」
誰だか、わからないやつに、そう言われ、俺は関わるやつを間違えたのだと後悔した。
◇
俺は、知らなかった。コイツと仲良くなり、友達となる、なんてことは。
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