【本編完結】俺はいつでも後悔する。

みずけんいち

第一部

プロローグ

あの日々を思い出して

 俺はこれまでの日々を思い返して何を思うだろうか。


 バカだったと思うだろうか。


 もっと必死に勉強しろよと思うだろうか。


 どちらにせよそれらは後悔から来ているように思う。実際、心残りのようなものはある。


 しかし、それは違う。そのことを俺は教えられた。多くの人と触れ合っていく日々の中で。










 ◇


 カラーンカラーン。どこからか鐘の音が聞こえる。その鐘の音がするとパタパタと鳥が羽ばたいていくのを俺は見た。それは、今日、この日を祝福してくれているかのようだ。俺は鳥の羽ばたきを見て、頬を緩めた。俺も心の底からこの日を楽しみにしていたのかもしれない。


 巣立ちという言葉がある。親の元から離れ、自立する。自分で衣食住を確保し、全てにおいて自己責任になる。


 俺は巣立ちという言葉がそれだけの意味を持つ言葉ではないと思う。


 巣立ちは確かに自立するという意味合いもあるだろう。だが、それだけではなく新たなことへの“挑戦”のような意味合いもあるように思う。


 俺も今日からその新たな挑戦をしていくことになる。


「当麻くん、何しているの?」


「過去を振り返っているんだよ」


「過去?いつごろのこと?」


「お前と会った頃くらいだな。あのときは―――」


 とんでもないくらいに楽しかった。


 俺は話しかけてきた女性の隣に立ち、これから行われる式の会場へと向かう。



 ◇


 俺は高校時代に大きな転機を迎え、そこから大きく人生が変わった、ように感じたといったほうが良いのか?


 なんのために勉強をしているのか。あの当時は俺が事故にあい、俺の醜態を見た友人たちが俺のもとから離れていく、そんなときに出会った少女のためと言ったことだろう。


 だがそうではない。今だからこそ言えることだ。


 答えは――――――――――――――――

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