第7話 幽霊屋敷
幽霊屋敷は、元は旧領主の別邸だ。骨肉の争いにより旧領主の家は断絶し、現在この町は他家の領地となっている。
門番はいなかった。大きな門を開けて広い敷地の中に入ると急に暗くなる。昼前なのに新月の夜のようだ。
聖魔法で明かりを灯し、屋敷へ進む。暗い所に一人というだけで怖い。
ここは一日中暗いが、冒険者ギルドにあった資料によると夜間の方が強い魔物が出るらしい。
最初はビクビクしながら邸内を歩いていたが、昼間なので弱い魔物しか出てこなかった。
フヨフヨ漂っているレイスやカタカタ近付いてくるスケルトンに聖魔法を当て魔石に変えていくうちに、3Dグラフィックのシューティングゲームをしてるような気分になった。
私結構上手いんじゃないかな。
二時間ほど暗い幽霊屋敷を回って、冒険者ギルドに戻った。
今回の稼ぎはお小遣い程度だったが、時給にすれば悪くない。
寮に帰る前に、冒険者ギルド近くのケーキ屋に寄った。行列ができていて幽霊屋敷に行く前から気になっていたのだ。
◇◇◇
休日二日目は、カヌレ町を歩いて回り、商業ギルドで仲介している借家を見せてもらった。
幽霊屋敷の近所は人気がなくて、家賃が安い手頃な物件が何件もあった。
昨日冒険者の初報酬で買ったチーズケーキはすごく美味しかった。今日も買って帰ろう。
◇◇◇
週末の下見で退学後の生活がイメージできて気持ちが軽くなったのが表情に出ていたようで、週明けのランチで「サクラ、なんかいいことあった?」とダリアに質問された。
ランチは友人達と学食で取っている。
高い天井から豪華なシャンデリアが下がった広い学食。バイキングのエリアと給仕がいるエリアに別れていて、身分に関係なくどちらも利用可能だ。男子生徒は高位貴族でもバイキング利用者が多い。
一部の生徒は個室で食事をしている。乙女ゲームではヒヤシンス殿下とサクラが個室でランチデートをする場面があった。
「いいことあったよ。そういえばダリアに訊きたいことあったんだけど…」
「ヒヤシンス殿下よ!」
周りがざわざわしだした。
皆が見ている方を振り向くと、20m程先でヒヤシンス殿下が学食内を見回している。
(ひえっ! ダブル攻略対象者!)
殿下の横には攻略対象者その2がいた。
騎士団長子息、グラジオラス。赤毛に赤銅色の目のゴリマッチョだ。
「まだ例の女子生徒を捜してるのかな」
ダリアは面白そうに殿下を眺めているが、私は全然面白くない…!
入学式以降殿下を回避できていたが、近くで顔を見られたらばれるかもしれない。かといって今席を立って逃げるとかえって目を引きそう。
内心焦っていると、殿下の婚約者、公爵令嬢のローズ様が学食に入ってきた。
ローズ様の縦ロールの髪は真っ黄色。スピリチュアルな感じだ。父親の公爵は宰相、弟は攻略対象者その4である。
彼女は殿下と腕を組んで、攻略対象者二人を学食の外へ連れ出した。
(助かった…。ありがとうローズ様!)
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