第6話 冒険者ギルド
図書館でデブ猫を見た翌日、冒険者ギルドカヌレ支部にやって来た。昼前で人は疎らだ。
ダリアにデブ猫のことを訊きたかったが、外泊届が出されていて会えなかった。
カヌレ町の位置は、王都とソメイヨシノ男爵領の中間くらい。
馬車で何日もかかった距離も転移なら一瞬だ。交通費がかからないのも素晴らしい。
王都から遠いので変装はしていない。一応、モスグリーンの膝丈のローブのフードを目深に被っている。
ローブの下は白いシャツとベージュのカーゴパンツ。靴は革のブーツ。背には茶色の帆布のリュックサックだ。
冒険者ギルドの中は、右手の壁に掲示板、正面にカウンター、左手奥が酒場になっていた。
掲示板にはランクごとに依頼票(魔物討伐、護衛、雑用等)が貼られている。
その横の買取り素材一覧表には、魔物や植物、鉱物の名前と、標準買取り額、推奨ランク、とれる場所、注意事項等が載っていた。
カウンターの裏には買取窓口兼解体場、倉庫、訓練場。2階には資料室、会議室、応接室、事務室があるようだ。
受付カウンターにいた男性職員に話しかける。
「冒険者登録をしたいのですが」
「こちらの用紙に記入をお願いします。名前と年齢以外は空欄でも結構です。代筆が必要な場合は承ります。登録料は銀貨5枚です」
通貨は、金貨1枚=1万円、銀貨1枚=千円、大銅貨1枚=百円、小銅貨1枚=十円って感じだ。町の食堂のランチが大銅貨5枚。
名前の欄には『ソメイ』と記入した。
元日本人としては仕事でファーストネームを使うのは抵抗がある。
用いる武器、特技などを記入する欄があったが、パーティの斡旋は不要なので書かずに提出し、登録料を支払う。
「ではこの石に血を一滴垂らしてください」
直径5mmほどの円形の平たい黒い石と針を渡された。
念のため針に聖魔法で洗浄をかけ、指先を刺して石に血を垂らすと、石が血を吸い込んだ。
職員がその石と、名前とギルドのマークが入った革を銀色のタグにはめ込む。
「こちらが冒険者のタグになります。ランクは下級のEランクです」
中級ランク以上は、石と金属板をはめ込むらしい。上級のAは金、Bは銀、中級のCとDは銅。下級のEと見習い(12~14歳)のFは革。なお、英雄級のSはタグ自体が金とのこと。
職員が冒険者ギルドの説明をしてくれる。
・冒険者ギルドは国に属さない国際組織
・受けられる依頼は自分のランクと一つ上のランクのもの
・依頼を達成できなかった場合は違約金が発生
・定期的に(中級以下は半年に1回、上級は1年に1回)依頼を受けなければ登録抹消
・殺人等、罪を犯した者は除名処分 等
「依頼票と規則は掲示板に貼り出していますので確認してください。依頼が出ていない素材も買取りはしております。冒険者ギルドの窓口でお金の預け入れも可能です。引き出しはどこの支部、出張所でもできます」
「わかりました。ありがとうございました」
掲示板に貼られた下級Eランクと中級Dランクの依頼票を見てみる。
低級魔石納品の常時依頼があった。常時依頼は依頼受注手続きが不要だ。これにしよう。
2階の資料室で魔物の情報を仕入れてから、幽霊屋敷で冒険者デビューだ。
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