第4話 攻略対象者

「サクラ、どの部に入るか決めた?」

「まだ。ダリアは?」

「新聞部に入ろうと思ってる」


 ダリアは、乙女ゲームではヒロインのサポートキャラだった。オレンジ色の髪と目をした活発な女の子だ。

 登場頻度が高いキャラだっただけに、こうして生身の人間として動いていると不思議な感じがする。


 乙女ゲームのサクラは馬術部に入っていた。ヒヤシンス殿下も馬術部で、同じ部の先輩後輩として親交を深めるのだ。


 私も乗馬ができるようになりたくて、入学前は馬術部に入ろうと思っていた。でもヒヤシンス殿下がいるなら駄目だ。

 馬術部以外も危ない。他の攻略対象者と関わってしまう可能性がある。


 記憶にある攻略対象者は次の4人。

1  第二王子(ヒヤシンス殿下、三年生)

2 騎士団長子息(三年生)

3 魔術師団長子息(二年生)

4 宰相子息(ヒヤシンス殿下の婚約者ローズ様の弟、一年生)


 他に隠しキャラもいるはずだが、そちらはわからない。ありがちなのは、留学生(他国の王子)、教会関係者、幼馴染、教師(リアルだったらアウトだろ)とかだろうか?


 攻略対象者が所属する部はもちろん避けるが、調理部や園芸部なんかも女らしさや優しさをアピールするイベントに関係しそうだし、そもそも教師が攻略対象者ならどの部も顧問の可能性がある。

(お爺ちゃん先生が顧問の部を選んでも、ぎっくり腰で顧問交代になったりとか…。強制力ってあるのかな)


 乗馬以外特にやりたいこともないので、どこにも入部しないことにした。


 一年生の前期は座学が中心で、宿題を出されることもない。となると東屋通いはやめたしイベントも起こらないし、放課後はとても暇だ。

(冒険者になるの前倒ししようかな。夏季休暇から始めるつもりだったけど)



 乙女ゲームの定番といえば、卒業パーティでの悪役令嬢の断罪。

 悪役令嬢がいじめる対象のピンク髪の女子生徒がいないので断罪も起こらないとは思うが、念のため今年度の卒業パーティより前に退学した方が安全だ。


 家を継ぐため領地に戻ることになった、結婚することになった等の理由で中途退学する生徒は珍しくない。

 田舎の男爵家の娘など退学したらすぐに忘れられるだろう。在学期間が短ければ尚更だ。


 アイテムボックスに入っていた所持金は思いの外多かった。ミニゲームばかりしていた前世の自分を褒めたい。

 寮を出て小さな家を借りても暫くは生活費の心配はいらないだろう。

 冒険者として生活できる目処が立てば、夏季休暇明けに退学しようと思う。

 

(寮は居心地いいけど、クロもいないしな)

 次の週末は、退学後の拠点をどこにするか下見に出掛けよう。

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