月がまぶたを閉じて

月が

まぶたを閉じていく

うっすらと

光の涙を潤ませて

そのまぶたを閉じていく

眠るように


やがて辺りが暗く覆われて

静寂が闇を包み込むと

ぼくの心に

ひゅっと

冷たい風が吹いた気がした


きみよ


今誰がために泣いてるの


下弦の曲線アーチを描いていた光が

いつしか一つの雫になりて

輝いた

宝石のように


ときに妖しく

ときに美しく

ときに可愛く

つねに優しい


きみの

心のように


この夜空は

きっと

今きみのいる場所まで

つながっている


ぼくの心も

きっと

今きみと同じ月を見て

つながっている


きみとつながっている

きっとつながっている


ずっとつながっている


月が

まぶたを開いていく

ゆっくりと

光の微笑みをたたえて

そのまぶたを開いていく


もう、淋しくないよ


そう言って

見守られている気がした


目を腫らして笑っている

きみに


同じ空の下で

同じ月を見て




―――――――――――――――――――――――――――――――――

2021年11月19日 140年ぶりの限りなく皆既月食に近い部分月食がありました。秋の夜空の壮大な天体ショーでした。

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