ぽこっと浮かんだ

外に一歩踏み出せば

澄み切った青空が高くて

頬にあたる風が

顔を洗う水のように

冷たく感じられて

冬の訪れを予感させる

そんなある日の朝


歩く道の空の上

白い半月が

ぽこっと空に浮かんでた


下半分が白く見える半月は

いつもよりも低く見えて

とても近くに見えて

まるで

青空に浮かぶ島のようで


行ってみたいな

知らない世界に


白い雲の階段を登って

虹の桟橋を渡って

あの白い天空の島に乗って


そこから下の世界を覗いたら

小さなぼくの悩みなんて

ちっぽけだって思えるのかな


道を走る車の音が

人混みの雑踏が

ノイズのようにそのビジョンを

かき消してゆく

やがて

周りは高いビルだらけになって

もう月は見えなくなってた


かわりに浮かんだ悩みは

消えそうにないけど





―――――――――――――――――――――――――――――――――

 先日、月食があった後のある朝に下半分が白い半月が澄みきった青空の中にぽこっと浮かんでいました。

「先日は素敵な天空ショーをありがとうございました」

 と心の中でお礼を言ったら

「すっぴんだからあんまり見ないでよ」

 と、少し気怠そうに、少しほっとしたように、返事をされたような気がしました。

 朝焼けで微かに下端が紅みがかった半月は、徹夜の打ち上げの後で目が腫れてるような、それとも少し照れくさいような、そんなふうに見えました。

 夜に眩しく輝くお月さまは日中はメイクを落としてリラックスしているようです。

 大役おつかれさまでしたね。

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