詩集 鏡箱

手をつなごう

今日

手をつないでいる老夫婦を見た

とても微笑ましかった

長年連れ添ってきただろうに

それでも手をつなぎたいと思えるなんて

今朝

会社に行きながら

手をつないでいる若い夫婦を見た

なんとも羨ましかった

家でもずっと一緒にいただろうに

外でもなお手をつなごうと思えるなんて

休日

手をつないでいる母親と子供を見た

とても愛おしかった

いつかきっと

その手をはなすときがくるそのときまで

その手を離して欲しくないと

そう願った

ある日

手をつないでいる若い恋人たちを見た

少し胸が痛くなった

初デートの水族館ではぐれないように、と

初めて手をつないだあの人は

今ごろどうしているだろうか

元気でいるのだろうか

いつの日にか

この世界を去るときに

この手は誰と最後につなぐのだろう

そのとき私はなんと言葉を残すのだろう

多くのものをつかんでも　誰も　何も

持っていくことはできはしない

すべて残して

つないだ手のぬくもりだけが

最後に残る

目を閉じて

心の手を伸ばしてみる

いくつもの白い手が私に伸ばされている気がした

本物の手は2本しかないが

心の手はすべての手とつなぐことができる

さぁ、手をつなごう

つないだ手のぬくもりが

言葉では伝えきれない気持ちを

伝えてくれるから

あふれる想いを

届けてくれるから

つないでくれるから