あの星のように

雲ひとつない 青い空

よく自分の心にたとえる

何もない空っぽの空は

何もない自分の心のようで

そしてどこまでも続く

果てし無いブルー


この青空の下のどこかで

みんなともつながっているのか

そう思うこともあるけど

都会の空は少し 霞んで

見えるような気もするけど

故郷の空は もっと

透んでいたようにも思うけど

特にそれが

懐かしいわけでもないけれど


もしかしたら

その空には

昔なにかあったのかもしれない

いや はじめから

なにもなかったのかもしれない

あった気になっていただけかもしれない


今はせいぜい

そんなセンチメンタルを口にすれば

白けた返事を返す月くらいが

たまに白けた顔で見ているくらいか


いやしかし

本当は知っている

本当はもう気づいているのだ

その空にはもうひとつ居るのだと

あるのだと

ただ眩しすぎて

目をそむけているだけなのだと

見ないようにしているだけなのだと


やがて夕方になると

青空は茜色に染まり

なぜかほっとした気持ちになる

優しい気持ちになれる

この黄昏のひととき

誰ぞ彼 と

夕焼けだけが本当の僕に気づいて

聞いてくれるような気がするから


そして夜になると

昼間は隠れていた

たくさんの星々が夜空に瞬く

見えなかっただけで

彼らは確かにそこにあったのだ

いつもそこに居たのだ


心の耳を澄ませば

彼らの唄が聞こえてくる

音はなくても響いてくる

クオリアに届いてくる


地球の人口が70億人なら

星空で輝く星の数は4千個くらいだ

だから星は孤独なのだ

孤独の中で唄う歌だからこそ

彼らの唄は美しいのだ


ときどき

蒼い月の光が眩しすぎて

その星々を隠してしまうけど

その妖しい輝きの魅力に

つい誘惑されてしまいそうになるけれど

毎日が満月なわけではないから

月は遠くで見るから綺麗なのだから


動物の中で

人間だけが夜空を見上げて

そこに神話を作ったという

その星の光は何億年も前から輝き

もしかしたらその光が届いている

いまこの時には

もうその星は失くなっているかもしれないけど


ただそんな星の輝きを見て

自分にとって大切なものを思い出して

地上で輝く魂どもの光が

心には浮かんできて

彼らの奏でる

唄が心に響いて

彼らの紡ぐ

神話に胸が震えて


なぜか自然に

涙が溢れてきて


自分もまた

星になりたいと思う

あの星になりたいと願う


あの星のように


輝きたい


そんなちっぽけな望みを

どこかから持ってきて


でもそれが


自分が

生きてきた証なのだと


自分が生まれてきた

意味なのだと


そうありたいと思う

そうであってほしいと願う


あなたは


なんのために生まれ

生きているのだろうか

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