第11話      過去の記憶と現実 II

まず記憶に浮かんで来たのは病院のベットの上からの記憶だ

酸素吸入器をつけられ、体中からいろんなチューブが生えているのを感じていた

心電図モニターの規則正しい電子音が耳に入って来ると共に

ぼんやりとした意識の中

何回か僕の名を呼ぶ声が聞こえてその声のする方へ目線を向けると

母親が僕の顔を覗き込んでいた

また何回か僕の名を呼び、僕の手をそっと握り始める

よかったぁ、よかったぁ、とつぶやきながら傍らに置いてある椅子に座り込む

徐々に意識が鮮明になって来るにつれて

お腹に引き攣れたような違和感と若干の痛みを感じ始める

その無理やり寄せて引っ付けている感じと

熱いジンジンとした痛みに思わず顔が歪む

巡回していたナースがそれに気づき

程なくしてもう1人のナースと1人の医師がやってきた

互いにアイコンタクトを取り、医師の指示のもとテキパキと処置がされていく

医師が僕の名前を呼び、手術は成功したから安心してと告げている

母親に何か話した後、僕の様子を確認しナースに再び指示をして

一通りの処置を終えると母親に一声かけてこの場を後にした

母親は何度も医師に頭を下げてそれを見送っていた

痛み止めが入っているであろう点滴をつなぎ終えたナースが

母親に話しかけた後、優しい微笑みを浮かべてこの場を後にする

また頭を下げながらナースを見送る母親

痛みや引き攣れた感じはまだどうにもならなかったが

処置をしてもらえた安心感からか少しだけ気が楽になった

母親も安心したのか落ち着いて椅子に座っている

カーテンが閉められている窓からは、うっすらと青白い光が差し込んで来ている

夜が明け始めているのか、日が暮れているのかどちらか分からない

母親はずっと僕のそばにいたのだろうか

泣いたのか睡眠をとっていないのか分からないが、なんだか目が充血しているようだった

そんな事をうっすらと考えているうちに猛烈な睡魔が襲ってきた

僕はそのまま睡魔に連れ去られ深い眠りの谷へと落ちていった

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