第12話 過去の記憶と現実 III
白いカーテンをすり抜けてまぶしい光が室内全体を明るく白く染め上げている
酸素吸入器はまだつけられていて、口元には変な違和感がつきまとっている
僕の視界に絶え間なくナースや医師の方たちが流れるように行きかうのが見え
その流れの一部が途切れて1人のナースが僕の元へやって来た
「おはよう。色々くっついててなんかイヤだよね。ごめんね」
にっこりと微笑みながら僕の体から発せられるさまざまなデータを収集して
点滴交換などの処置をテキパキとこなしていく
すぐにまた流れの一部から1人の医師が僕の元へやって来て
僕の足元の白く細長いテーブルに乗っかっているパソコンをじっくりと覗き込んだ後
さまざまな作業をしていたナースに話しかけた
ナースは僕の枕元にやってきて酸素吸入器を外し始める
「もう外して大丈夫だって。口元、すっきりするからね」
優しい微笑みをうかべながらスムーズに作業を進める
続けて医師がやってきて
「データも落ち着いてきているし」
「もう1日様子を見て明後日には一般病棟に移れそうだね」
腰をかがめて僕に、にっこりと微笑みながら語り掛ける
僕も医師の目を見て小さくうなずく
心電図モニターの電子音と医療関係者の方たちが行きかう足音
消毒薬と患者さんの体から発せられる臭いが入り混じる白い空間で
それぞれの人々の細胞がそれぞれの目的に向かって懸命に働いている気配を感じていた
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます