青春死体! 続くん


 相変わらずの雨の日。


「なんだ梅雨か?」

「おい夏設定どこ行った」

「夏って雨多いイメージ」

「うーあー」


 ゾンビがテレビのリモコンのスイッチを入れる。


『えー、今、現在、台風18号が接近しており……』

 

 アナウンサーがそれを伝える。


「うえー、台風かよー」

「ま、梅雨よりマシね」

「うーあー」

「んじゃいつも通りだらけますか……」


 ゆったりまったりのんびり~。


「皆さん!」

「そんな事ではいけません!」


 ルシフェルと浮遊霊ちゃんが現れる。


「なんだ貴様ら!?」

「ここは一つゲームをしましょう」

「そうとびっきりのゲームを」

「エロゲか」

「おいエロ仙人」

「うーあー」


 チッチッチッと指を振るルシフェル。

 浮遊霊ちゃんが答える。


「その名も『人狼ゲーム』!」

「「「な、なんだってー!」」」

「うーあー」

「うん、知ってるよな」


 ずこーっとコケる浮遊霊ちゃん。


「今回は人狼ゲームをやっていただきます!」

「なにその動かされてる感」

「うーごーかーさーれーてーまーせーんー。こういう仕事なんですー」

「うざっ」


 魔女が顔をしかめた。


「はいはいという訳でルール説明とか省きますよ六人居ますし人狼二人の占い師一人で良いですね?」

「えー騎士は?」

「処理が面倒くさいのでパスです」

「狂人は」

「他職業も同じくパスです」


 という訳で始まる人狼ゲーム。

 ここからは臨場感重視で吸血鬼視点でお送りする。

               

               ☆


 俺は村人だ。人狼じゃない。

 そして占い師でもない。

 この場合、適当に話に乗って襲われないようにするのがベターなはずだ。

 初心者だから分からんけど。


「そういやウチの卓ってウェアウルフとかいなかったわねー」


 魔女が言う。


「卓!? いつから此処はTRPGリプレイになったの!?」

「不老不死老人ホームTRPGお待ちしております」

「誰に言ってんだ尸解仙!」

「うーあー」


 何!? ゾンビが言っている『自分は占い師』だと。

 この情報を簡単に明かすのはマズい。

 これはアドバンテージだ。それにゾンビを守る騎士代わりにもなれる。

 ここは嘘を吐こう。


「吸血鬼、ゾンビはなんて?」

「え? ああ、そもそもウェアウルフって不老不死なのか? って」

「そういやそうねぇ」

「うーあー」


 何ィ!? 魔女が人狼!? 大きな情報じゃないか!

 あれ、占い師の情報ってこの段階で提示されるんだっけ。

 ていうかこれ誰が行動処理するんだ。

 まあいいや魔女を吊ろう。


「俺、魔女が怪しいと思う」

「何よ藪から棒に」

「やっぱりそれ決め台詞に――」

「マジカル☆キャノン!」


 浮かび上がる魔法陣から☆が飛び出る。


「ぎゃあああ!? 物理攻撃は無しだろ!」

「特殊攻撃ですー」

「ぐぬぬ、屁理屈を……」


 はっ、いかんいかん、このままじゃ流される。なんとかして魔女を吊らねば。

 というかそういう作戦か! やるな魔女!


「俺、真面目に魔女が怪しいと思ってる」

「はぁ? なんでよ」

「それは……勘だよ」


 ズッコケる魔女。


「あんたねぇ……真面目にって枕言葉付けといてそれはないでしょ」

「いやでも最初なんてみんなそういうもんだろ?」


 そこでルシフェルが手を挙げる。


「なぜ、魔女さんが人狼だと思うのでしょう、それは逆に自分が人狼であるから、その目を他に差し向けたいという願望からなのでは?」


 ル、ルシフェル……! 間違いない! 二体目の人狼はこいつだ!

 どうする俺、この状況を打破すべき論理は……!


「ダウト、二人共、嘘吐いてるね」


 尸解仙。


「何を根拠に」

「そうですよ」

「私の千里眼は誤魔化せない」


 そういやそんな設定あったー。ていうか千里眼ってそういうスキルでしたっけパート2。

 だが助かった。

 これでこの人狼ゲームも終わりだ。

 投票の時間。

 全員が投票する。

 箱に折りたたんだ紙を入れていく。

 その中に人狼だと思う奴の名前が書いてある訳だ。


「じゃあ発表しますねー」


 とは浮遊霊ちゃんの言葉、いや、お前がGMだったんかい。

 そして総投票数はこちら!


 吸血鬼:5

 魔女:1

 他:0


「っておいいいいいい!!」

「どうした人狼(笑)」

「どうしたじゃねー! 尸解仙の言葉で明らかに魔女吊る流れだったでしょうが! なんで尸解仙まで俺に入れてんだ!」

「面白そうだったから」


 そういやゾンビ……。


「ゾンビ、お前、占い師って、自分で魔女が人狼って……」

「へぇ、そうだったんだ。だとしたら吸血鬼のムーブは中の下って所じゃない?」

「うーあー」

「そんな……」

「ゾンビなんて?」

「……自分が言った事を正確に伝えてくれなくて腹が立ったって」

「自業自得(笑)」


 魔女ォ! 絶対許さん! 絶対にだ!

               ☆

 こうして吸血鬼視点の人狼ゲームは終わる。

 まあ身内でやる人狼ゲームなんてこんなものなのかもしれない。

 ちなみに勝敗はまさかの人狼チームの勝利。

 ルシフェルの巧みな話術が際立った回であった。


「えっ、そこカットするんですか?」


 ええい、お前までメタに入って来るでないわ。

 皆まあまあ楽しかったようです、終わり。

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