(6)

 結局、俺は、市長おやじ派の市議の大物である古川のおっちゃんの別荘に、ほとぼりが冷めるまで隠れる事になった。

 場所は隣の鳥栖市内の結構な山ん中。

 最寄りのコンビニに行くにも車が無いとキツい場所だ。

 その代りキャンプ場には近いが、生憎、キャンプなんて気分じゃない。

 6畳間が3つに風呂・台所・トイレ完備の平屋。ついでに別棟の物置に、そこそこの広さの庭も有る。

「これじゃ……ホントに病気になるわ……」

 台所のテーブルの上にはカップ麺のカップが4つに、缶ビールの空き缶が十以上。

 ここに隠れて1日過ぎない内にコレだ。朝はカップ麺にビール。昼はカップ麺にビール。おやつはカップ麺にビール。多分、晩飯も夜食もカップ麺にビール。

 その時、携帯の着信音。

「どうした?」

 相手は、仲間の野口だった。

「あの……例のミニコミ誌の編集部……警備員を雇いました。当分、編集部には警備員が常駐、編集者が帰宅する時は、最寄りのバス停か駅まで警備員が付き添うそうです」

 そりゃ、編集長が変質者にしか思えないヤツ尾行されて警察沙汰になれば、そうなるだろう。そう言や、何って名前のヤツだったっけ、例の変質者?

 何か、もう、何もやる気がなくなってるので、やる気がない時相応の感想しか頭に浮かばない。

「それで……」

「いや……それが……俺の弟のバイト先でした」

「えっ?」

「隙を見て、あの写真を撮ったヤツについての情報を盗めるかも知れません」

「よし、やれッ‼」

 だが……事は、そうそう巧く運ばなかった。

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