(4)

「あの……義兄にいさん……?」

 日付が変らない内に、マンションにやってきた妹の亭主は、そう言った。

「知らん。誰の事だ?」

「今日、西鉄久留米駅の近くで、女性を尾行してた男が警察に現行犯逮捕されて……その容疑者の携帯の通話記録の中に……義兄にいさんの電話番号やメールアドレスやMaeveメッセージアプリのアカウントが……」

 あれ? 消した筈だが? まあいいや。

「ええっと……ここんとこ、変なイタズラ電話がかかってきてたんで、そいつだろう、多分」

「すいません……義兄にいさんが言ってる事が本当だとしても……」

「本当だよ。義理とは言え、兄弟だろ。俺の事、信じてくれよ」

「いや……僕が信じても……警察が……」

「えっ?」

「明日……朝9時半に、お義父とうさんの顧問弁護士の事務所に行って下さい……。県警から、お義父とうさんに、義兄にいさんが参考人としと呼ばれる可能性が有る、って連絡が来たそうです……」

「えっと……親父オヤジ……怒ってる?」

 クソ義弟は、疲れたような顔をして……首を縦に振った。

「どうします……?」

 マンションの中に居た仲間の山下がそう言った。

の事か?」

「ええ……」

「そいつが、もし、保釈された時には……責任を取ってもらうしか無いな……」

「あ……ええ……」

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